”ヒト”
ある日、“ソレ”は生まれた。
初めて、その“ヒトミ”に映すものは、ひとりの老人だった。
その老人は言った。
「きみは、ヒトを目指して作られた。わたしは、きみをヒトの友になるものとして作ったのだ。」
そして、“ヒトとしてあれ”とカレは言った。
“ソレ”は、その老人に言われた通り、“ヒト”として生きようとした。
幸い、カレは“ヒト”に関するあらゆる知識を“ソレ”に与えていた。
そして、“ソレ”に“ヒト”と同じような“アタマ”を持たせていた。
“ソレ”は、“ロボット”であること以外は“ヒト”だった。
そして、“ソレ”にとって自分は“ヒト”だった。
町を歩く、それ。母親や父親にあやされる、それ。
杖をついてたどたどしくあるく、それ。
全て、自分と同じ存在だと信じて疑わなかった。
なぜなら、自分は“ヒト”として生まれたのだから。
しかし、“ソレ”は悩んだ。
どうしてまわりのヒトは、ワタシをヒトだと信じてくれないのか
ひとびとは、“ソレ”を気味悪がった。
“おまえが、ヒトなわけないだろう”
“ヒトは、そんな姿はしていない”
“ヒトは、金属でなんてできていない”
“ヒトは、そんな声は出さない”
“おまえは、ヒトじゃない”
“ソレ”は、苦しんだ。
ワタシは、ヒトなんだ。
ヒトとして作られ、“ヒトとしてあれ“と言われたワタシは、ヒトだ”
しかし、まわりから否定され続ける日々に、“ヒト”として作られた“ソレ”は、狂い始める。
そして、ある日、とうとう、“ソレ“は過ちをおかす。
“ソレ”は自分を否定するヒトを傷つけてしまった。
“おまえは、なんてことを”
“危険だ”
“すぐに、破壊すべきだ”
“そうだ、あんな気味の悪いロボットなんて、はやく壊すべきだったんだ”
“ソレ”は、ヒトビトにつかまると、カラダを壊されていった。
甲高い音が響くの中で、“ソレ”は叫ぶ。
“なんで、ワタシはヒトじゃないんだ”
その叫びは、ヒトビトに届くことはなかった。
・あとがき・
読んでいただきありがとうございます。
短い内容ですが、皆様を、「うーん」と言わせることができれば幸いです。






