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ハニーランド

結局俺は佳祐たちの初デートについて行くことになった。


和子さんをブス呼ばわりした罰で冴えないカップルのデートに付き添うの刑。


本人たちに言わせるとデートじゃないらしい。

付き合うふりをしてるだけだから。


はあ、あほらし。

思うにあの二人、二人っきりになるのが気恥ずかしいんじゃないかな。

どのタイミングで手をつなぐかとか一回目のデートでチュウとかしていいのかとかぐるぐる考えすぎちゃって。

だからといって俺を巻き添えにするなよ。


俺は考えたいことがあるのに…


和子さんが俺の分の弁当も作ってきてくれるといったけど断った。

他人の作った弁当なんか気持ち悪くて食えない。

断った手前、コンビニで買って行ったりすると角が立つから仕方なく母さんに弁当作ってもらった。


母さんは張り切って三種類のサンドイッチを作ってくれた。

…なんか恥ずかしい、この年になって遊びに行くのに母さんの弁当って。


高1男子、友達の彼女をブス呼ばわりした罰で母親の手作り弁当持って遊園地に行くの刑…




家を出て自転車で三十分ほど走って、待ちあわせ場所のハニーランドのゲートに行くと佳祐はまだ来てなくて、和子さんだけが来ていた。


初めて見る和子さんの私服。


へえー

意外、見れるじゃん。


比較的ピタッとした白い長めのカットソーにスキニーを履いていてその上に薄手のマウンテンパーカーをはおってる。

顔は地味だけどスタイルはいいんだ。

これは案外大人になって化粧とかしたら化けるかもしれないな。


先物買い…なんて考えてるところに佳祐が来た。


「ごめん待たせた?

な、秀人。今和子さんをいやらしい目で見てなかった?」


見てない見てない。

俺は言葉は発せずため息で答えた。


その様子を見て和子さんはほんと二人は仲いいねと笑った。




付き添いの俺は佳祐と和子さんがミニ動物園でモルモットを手に載せたり、リスに餌やったりしている姿をやつらのスマホでとってやる。


今日の俺の役目は自撮り棒で事足りるんじゃないの?


二人がはしゃいで長い滑り台滑ってるのを後ろからしらけて眺める。


それにしてもハニーランド久しぶりだな。

小学校の時に来たきりだ。

あの時からさびれていたけどますますさびれてるな、ここ。




「腹へった、お昼食べてから遊園地の方にいく?」と佳祐が言ったので俺たちはところどころ点在しているベンチに座って弁当を広げた。

和子さんが持ってきた弁当はおにぎりとウインナーの焼いたのと玉子焼きだった。


うーん作りなれてない感じ。

あらゆるものが限りなく不揃い。


おにぎり。おにぎりかぁ…


「和子さん、おにぎりの中身なに?」


「シャケと梅だけど?林くん食べる?」


俺は食べたくないけど…

ククさんに食べさせてやりたいな。

シャケのおにぎり。


「あー、じゃあシャケのおにぎりとこれと交換して」とサンドイッチの入った箱を差し出す。


「わ、すごくきれい。

売ってるのみたい。

林くんお母さんに愛されてるねえ〜

私、このカツサンドをもらっていいかな?」


「どうぞ」


交換が成立して結局俺は他人の作ったおにぎりを食べるはめになった。


他人が作ったおにぎり…ハードル高い。

でも俺が食べなきゃククさんも口にできないだろうから…


お、形は悪いけど気前よく大きなシャケが入ってる。


モグモグ


うん、食べ応えある。

ふふ、きっとククさんが喜んでいるだろう。


あーあ、俺自分に憑いてる貧乏神に気を使っちゃってるよ。

こんなメンタルで本当に彼女を祓うことなんかできるのかな…


「最初から和子さんの好意に甘えればよかったのに〜」


口いっぱいにおにぎりをほうばった佳祐が言う。


ほんと、幸せそうだな、お前。


俺は雨男だけど佳祐はウルトラ晴れ男だから今日は雨は降らないだろう。

俺は佳祐と出かけるときのみ折りたたみの傘を持たない。




昼飯を食い終わって遊園地のエリアに向かい、ゴーカートの順番待ちをしている時に俺はいきなり雷に撃たれた。

晴天の空の下で。

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