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誤解

それから数日間は佳祐と和子さんのことで頭がいっぱいだった。

佳祐に言うべきか、言わざるべきか。


俺、他人の色恋で悩んでる暇ないって言うのに。

新月の夜が近づいてきているからなんとかククさんを祓う方法を見つけたいのに。


お祓いの本読んだり、不思議現象を扱ったりするサイト見たりしてるんだけど、文字が頭に入って来ない。

いつの間にか佳祐と和子さんのことを考えてしまっている。




和子さんに未練っぽいものをあの時少し感じた。

本人は否定したけど、もしかしたらよりを戻したいのかもしれない。


けれど、和子さんが嘘をついて佳祐と付き合うのをやめた理由を聞けば、きっと傷つく、やつだって。

とんじゃかないように見えて割と繊細なところがあるからな。


黙っていたほうがいいのか…?


けど脳裏に浮かぶのは、和子さんとの会話アプリでのやり取りを見せに来ていた時の佳祐の嬉しそうな顔。

これから先やつがあんな顔をすることはあるのかな…

佳祐、和子さんのことほんとに諦めたのかな。




悩んだ末、結局俺は言わないことにした。


もし和子さんが本当に自分のしたことを後悔して、よりを戻したい気持ちがあるのなら、自分で言えばいい。

佳祐に。


という結論が出たところで俺はここ二、三日は佳祐からなんの連絡もないことに気がついた。

こんなことは珍しい。


もともと登校時間も違うし、帰りもやつは帰宅部だから一緒に帰ることもない。


ただ今までは昼休みにやつが遊びに来たり休日誘われてあいつの家に遊びに行ったりしていた。


会話アプリでの連絡はほぼ毎日来てた。

で、くだらないやり取りをしてた。


少し気になったけど、まあこういうこともあるかと、やり過ごしていた。


けどやり過ごせないことが起きていることをオレは知る。


部活でドリブルの練習で使ったコーンを片付けているときだった。


「ねえ、お前が佳祐の彼女取ってその後速攻捨てたっていう噂があるんだけどホント?」って大田に聞かれたのだ。


…なんだ、それは?




部活が終わっての帰り道俺は太田にその噂について詳しく聞いた。


「いや、クラスの女子がB組の林は親友の彼女取ってすぐ別れたらしいよ。

すぐ別れるなら取んなきゃいいじゃんね?

佳祐に出来た奇跡の彼女だったのにって言ってたからさぁ。

秀人がそんなことするかな?と思って」


「…誤解だ!

超メガトン級の誤解だっ!!」


俺は頭の芯がクラクラしてきた。




印刷室…

印刷室に入ってきた女子だ、きっと発信源は。

あれは佳祐のクラスの女子だった!


あの子はあの時泣いていて和子さんを見て、俺達が何か深刻な話をしていたと思ったに違いない。

多分別れ話か何か。


さらに和子さんと佳祐が別れたわけは、俺が2人の仲に横槍をいれたからじゃないかと勝手に推測したんじゃないか?

女子特有のたくましい想像力で。


おいっ堪忍してくれよ!

女子という生き物!


あ…それで佳祐…

佳祐の耳にもこの噂はいっていたんだ。

だから…


大田と別れ俺はそのまま佳祐の家に向かった。

猛スピードで自転車漕いで。




平屋の佳祐の家に着いた俺はまるで自分の家に帰ってきたように玄関を開け靴を脱いで佳祐の部屋に向かう。


ドアを開け「おいっ」と声をかけた俺を見てベットに寝転んでいた佳祐は「うわっ、びっくりした」と言った。


「な、なに秀人、びっくりするじゃん」


「びっくりするのはこっちだよ。

なんか俺と和子さんの噂があるらしい。

お前…知ってただろ」


「…」


「てんてんてんじゃねーよ。

なんか最近連絡来ないから変だと思ってた。

噂信じたの?ひどくない?」


「いや、信じたわけじゃないけどなんとなく…ね?

ほら、お前なにかと和子さんのこと悪く言ってたけど、あれってお前も和子さんを好きだったから俺と別れさせようとしてのことだったのかなあと、思っちゃって」


佳祐はベットの上に座り直してそう言った。


はあ〜

何がなんとなくだよ。

何が思っちゃってだよ。


はっきり言う。

俺は面食いなんだよっ!!

…なんてことは言えない。

事実だけど。


俺はあの日印刷室で偶然和子さんに会ったことや言われたことを佳祐に話した。

多分のその時印刷に入ってきた女子が和子さんの泣き顔見て、勘違いして噂を流したんじゃないかという推理と共に。


速攻で佳祐に話せばよかった。

そしたら変な誤解されずにすんだ。




「はあ、そういうことだったんだ。わかったわかった」

と少し呆けた顔で佳祐が言った。


「…、ごめん本当は黙ってようと思ったんだけど。

結局黙っているとができない状況になった。

佳祐、怒る?黙ってようと思った俺の判断」


「怒んない怒んない。

ハハハ、秀人、わりぃ。

悩ましかっただろう。


はあ、しかしそういうわけだったか。

和子さんも正直に言ってくれればよかったのに…って。

言えないか、俺と付き合うの恥ずかしくなったって」


佳祐は、もう一度ハハハと笑ったあと「それにして和子さん、うちの学年のヒロインになってるな」と言った。


「佳祐、どうする?和子さんのこと」


「え、どうするも何ももう終わったことだし。

俺にはきゃおりんがいるし。

あ、せっかく来たんだからきゃおりんのDVD見てく?

今日新しいの届いたの」


と佳祐はのんきにパソコンを立ち上げ始めた


「はあ〜誤解が解けたなら俺は帰る」


そう言って俺は佳祐の部屋を出た。


佳祐の両親はこの先の雑居ビルで中華料理屋を営んでいるので、この時間親がいないの知っているけど、お邪魔しましたと、声を出し靴を履く。


きゃおりんのDVDなんか見ている暇はない。

貧乏神を説得する方法を考えなきゃいけないし…


明後日の新月の夜までに。

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