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とりあえずこれで今ある分は丁度半分。続きは俺がゲームにはまるかどうか。
「ふふっそれではわたくし自慢の召喚獣を見せてあげますわ!来なさいフェンリル!」
右手に持った召喚石を掲げて叫ぶとそれはビームのように光を放ち始め地面に向かう。それはだんだん獣の形に構成されていき、最終的に一体の魔物が生まれた。
これが召喚石から召喚をするということなんだろうな、初めて見るがどうなっているのかがさっぱりだ。
「ガウゥゥゥッ!」
それはまさに狼、大きさも含めると大狼だろうか。姿が完全となると同時に咆哮を上げる、それのせいで風が起こり髪がぐしゃぐしゃになってしまった。なおしなおし。
「ふん、あんたも私の召喚獣としての力を見せてあげなさい!」
「おし!勝ったら約束どおり『最強剣士が幼馴染と敵対したら』読ませてもらうからな!」
「ええ、でももし負けたら私に恥をかかせたのも含めて今後一切漫画は貸さないから」
ちょっ!それはやばいせっかくあの注目の展開の続きが見られるチャンスがやってきたというのにみすみすそのチャンスを逃すわけにはいかない。それに他にもあるであろう漫画が読めないのも痛い、万一にも負ける気はないが負けられない理由ができた。
「んじゃ、俺もやるか……」
既にフェンリルがいる中央辺りにのんびりと歩いて近づく、こいつ近くで見ると結構いかつい顔してんのね。
「お互い準備は出来ましたね?……それでは始め!」
「ふふふっ、その力を見せつけてあげなさい!フェンリル!」
「ガアアァァァァッ!」
先生の合図とともにドリルが指示を出しフェンリルがその大きな口を開いて突進をかましてくる。
「よっと」
まあかなり直線的なんで避けるんですが。
「あんた!人型なんだからあんな獣なんかに負けるんじゃないわよ!」
「わかってるっての」
何で余裕をもって躱したのにこんな風に怒鳴られるのか。
「そうだピーチ!これって殺しても問題ないんだっけか?」
いまだに俺の周りを縦横無尽に飛び回りながら攻撃を仕掛けてきているフェンリルをいなしながら問う。
「一度召喚石に入れたならたとえ殺してしまっても石の中に回収されるから平気よ!存分にやりなさい!」
「あいよっ!」
一応懸念していた所が解決したのでもうとっとと終わらせるか、流石にドリルには攻撃しないが。
収納を使い俺の真横に穴を作って手を突っ込む、えーなんか武器来い!
なにかをつかむ感覚と同時に穴から手を引き抜く、俺の右手には淡い金色の光を浮かべる一振りの片手剣が握られていた。
こいつは……確か昔どっかの世界で貰った勇者の剣とかいうやつだったか?名前までは覚えてないけど切れ味は確かだし握っている手も馴染む、問題ないだろう。
「ちょっ!何よそれ!」
後ろからピーチの声が聞こえる、正面を向くとどうやらドリルも驚愕の表情を浮かべているようだ。
「ガアウゥゥゥゥゥ」
意識を戦闘に戻すと丁度正面からフェンリルが突っ込んでくるところだった。
「おらぁっ!」
右手でフェンリルめがけて剣を振るう。
ガキィンッ!
甲高い音を上げながら受け止められる、俺の剣を巨大な八重歯で挟む感じ。案外力強くてビビるわ。
顔を足で思い切り踏むように蹴り反動で掴まれていた剣をとり距離をとる。
「ふぅ、まっ行けるか」
「何してんの早く決めなさい!」
「フェンリル!いくら人型といってもあなたの敵ではなくってよ!」
「ガウウウウゥゥッ!」
俺はピーチの声援?をフェンリルもドリルの応援を受けて再び走り出す。
「んじゃ乱切りにしてやるよっ!」
フェンリルとのすれ違いざま剣を振るいまくる、技も何もあったものじゃないが速さと剣自身の力でごり押しする。
フェンリルと俺がすれ違って止まった瞬間ゆっくりとフェンリルの身体がバラバラになり粒子となってドリルの召喚石に戻っていった。
「そこまで!勝者ピーチさん!」
ひとまずこの実習は俺たちの勝利という形で幕を閉じた。
友達がゲームに付き合ってくれない(ノ´Д`)ノ




