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俺はどこでもモブ扱い  作者: 海ネズミ
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第4話 夢見た異世界生活はこんなのじゃない

「おい、見ねえ顔だな。誰だ貴様は。」

「俺か?俺はみちる。佐倉みちるだ。」

「違うぞリーネ。お前はカヌトリーネのリーネだぞ。」

「ち、違うわい。」

「違くないぞ。お前はリーネェ〜〜いてゃあいいたてゃあい。」


俺たちはギルドに来ていた。

登録なども済ませたいがなんせ情報が少ない。俺はこういう所はイカちいおっちゃんに話したくなる。異世界に来たならそういう冒険者的なものに憧れるからだ。

それなのに・・・

「いいかカミュー、俺はみちるを名乗る。ってか俺は今までもこれからもみちるだ!」

「ちがうのだ!リーネはリーネなのだ!!」

「おい…兄妹喧嘩なら他でやれよ」

『兄妹じゃない(のだ!)!』

俺とカミューは息ぴったりにこんなことを言ってしまった。そんな様子を見ていたおっちゃんが、

「いや、兄妹にしか見えんぞ…」

俺たちは登録する前に話し合う必要があると思った。


「なんでお前が兄なのじゃ!」

「はぁ〜っ?逆になんでお前の兄になんかならなくちゃいけないんだよ。」

「そうなのだ!私の方がお姉ちゃんなのだ。」

「そもそも俺とおま・・・今なんて?」

「何度でも言うのだ。私の方がお姉ちゃんなのだ!」

「いやいやいや無理があるだろ。」

「私の方が大人だからお姉ちゃんなのだ。」

そうか。こいつは兄妹じゃなくて妹ってところにキレていたのか。


メンドクセ〜…


「わかったよ。お前がお姉ちゃんな。」

「わかってくれて嬉しいのだ。」

こいつの扱い方がわかってきた気がする。

「なぁ。」

「なんだよ?」

「お前ではなくカミュー様と読んで欲しいのだ。」

「じゃあな。」

「わかったカミューでいいから置いていかないでー!」

涙目になりながら俺を追っかけてきた。

お姉ちゃんね〜…

「・・・フッ」

「なんなのだ!」

「なんでもないなんでもない」

またもめるのも面倒くさい。俺は適当に流すことにした。

「なぁカミュー。今からギルドに登録して冒険者としての一歩を歩むわけだが…っておい、何食ってんだよ。」

「んぐんぐ…ぷはぁ〜んまい!」

「んまい!じゃねえよ。お姉ちゃんになりたいんだろ。ならもっと…」

「なりたいじゃないぞリーネ。もうなっているじゃないか。」

こいつ…

「とりあえずギルドに加入しにいくぞ。」

「うん。」

俺はギルドの受付で1番美人の人の所に行った。


「カヌトリーネさんですね?登録完了しました。今後の活躍に期待していますね。」

「はい!」

最後の一言はおそらくマニュアルなのだろう。そうと分かっていても、美人なお姉さんに言われるととても嬉しい。

「お次の方ー!・・・妹さんですか?」

「何を言う!!お姉ちゃんなのだ。」

「あ、はいわかりました。」

お姉さんは俺の顔を一度見て何かを察したのだろう。

「カミューさんでよろしいですか?」

「カミュー様なのングググッ・・・」

「はいそうです。」

面倒なことにはしたくなかった俺はカミューの口を急いで塞いだ。何か言いたそうだったが、あとで飯を奢ると言う言葉で機嫌を直してくれた。

「登録完了しました。これから2人の活躍を期待します。そして、登録手数なんですが、金貨4枚です。」

「頑張ります!」

俺は金を出した。

「これからもお願いします!」

俺はとりあえず明日からのクエストに備えて、寝床を確保するためにギルドを後にしようと思っていた。が…

「あのすいません…手数料が1人分足りないのですが」

「はい?」

「妹さんの分がまだ…」

(妹じゃないのだ!お姉ちゃんなのだ!)

カミューはまたギャーギャー言い始めたがそれどころではない。

「おいカミュー、お前金はあるんだろ?ちゃんと払わなきゃダメじゃないか…」

「何を言ってるのだ?金なら全てリーネに渡したぞ?」

やっぱりか・・・

「あの〜…」

ギルドのお姉さんが気まずそうに行ってきた。

「あとで返しにきてくれるのであれば私が立て替えておきますよ?」

かっこ悪い。非常にかっこ悪い。

「じゃそう言うことにしてくれ。」

カミューは勝手にそんなことを言い出した。

「すみませんすみません。」

俺は何度も頭を下げた。

さすがにギルドのお姉さんも、苦笑いだった。

「必ず返しますから。」

「待ってますね。」

お姉さんは優しく微笑んでくれた。この世界にきて初めての癒しだ。

明日から頑張るぞと思いギルドを出ようとした時、ギルドに連接している食堂の人に呼び止められた。

「おい兄ちゃん、そこの妹さんが食った飯代がまだ払ってもらっていないのだが?」

「え?」

カミューは相変わらずギャーギャー言っている。

「金貨22枚なんだが、払えないのか?」

額を聞いた途端にカミューは静かになった。こいつ何食ったらそんな額になるんだよ。

「すみません。必ず返しますから、借金ということで出来ませんかね?」

俺は内心であとでカミューに喝を入れることを決意した。

「んーそうだなぁ、金貨30枚にしてもいいならだな。」

はっきり言って利子が高いと思う。けど選択肢は俺にはない。

「わかった。ありがとう。」

「よし。」


早速借金ができた。金貨32枚。正確にいうと30枚はカミューなのだ。なのにあいつときたら…

「お兄ちゃん・・・カミューのせいで借金しちゃったの?ごめんなさい。」

急に妹を演じやがった。


夢見た異世界生活は、どう見ても10才未満の自称神のロリ っ子が姉と言い張り都合が悪くなると妹になるアンハッピーセットに未だ理解できない「絶対音感」という能力に、借金金貨32枚という夢のない形で始まったのだった。


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