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戦士以上、魔法少女未満の少女達  作者: 佐久間零式改
第二章 二人の魔法少女
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二人の魔法少女 第六話



 空中浮遊要塞『長門』のブリッジに新高山博士を始め、三好秀吉、岡田三郎、春日井さくら他数名が集まっていた。


 皆真剣な表情をして席に座り、新高山博士の発言を待っていた。


「どうしたものか、どうしたものか、どうしたものか……」


 新高山博士はキョロキョロと天井を見回し、落ち着きのなさを露呈していた。


「落ち着け、ロリコン。冷静になれ、変態博士。むぅ……ならば、焦るな、ロリコン変態マッドサイエンティスト」


 さくらがその姿を見かねて、キツイ一言を投げかけるが、その声は届いてはいないようだった。


「量産型がたかが五機だろ? そんなに慌てる事はないんじゃない?」


 三郎が考えなくそう言うが、


「量産型でも使われてる装甲は他のタイプや長門と同じです。他のを出しても同じように倒されちゃいます」


 さくらがすぐに問題の核心を述べた。


「ロメルス五機が五分と持たなかった……その事実だけは揺るぎませんよ」


 秀吉は腕を組んで、にこやかにそう言った。


「……新高山博士。覚えてはいませんか? 例の書物に書かれていた事を」


 これまで黙って、場の流れを見守っていた技術開発主任が口を開いた。


「どうしたものか?」


 よく分からない返事をしながら、新高山博士が主任の事を見た。


「メトロニュウムの制作のヒントとなった古書に、魔力とやらを中和することができるコーティングの制作方法が載っていた事を覚えてはいませんか?」


「ど、どうしたものか!」


 新高山博士はハッと目を見開き、ポンと手を打った。


 メトロニュウムは新高山博士が開発し、実用化したのは事実である。


 だが、その制作方法を一から生み出したのは博士ではなかった。


 古代の書物に書かれていたものを再現しただけであった。


 それはとある古墳より発見されたという代物であった。


 盗掘師たちがその古墳を荒らし、そこにあった品物をすべて裏の業者に流した。


 ある日、その書物を新高山博士を敬愛しているという紳士が現れ、贈呈したのであった。


 その古書にはこれまでの金属を否定するかのような金属の作成方法が書いてあり、新高山博士はそれを元に開発したのだった。


「早速研究だぁ!」


 そう叫びながら、新高山博士はブリッジから何者かに追い立てられるかのように出て行った。


 それを追いかけるように技術開発主任が出て行った。


「相変わらずの自分ワールドっぷりです」


 新高山博士の出て行った方をさくらが疲れ切った目で見ていた。


「ま、いいんじゃね? 俺には関係ないし」


 関係あるだろう、と、そこにいた一同が三郎をしらけた目で見つめる。


 元々大阪ジャガースの選手であった三郎は自分以外には無関心すぎるきらいがあり、他人の事を深く考えない。


 高校野球では甲子園で優勝したチームの投手をし、その後、大阪ジャガースに入団した。


 将来有望なエースと騒がれたが、入団一年目にして肩を壊してしまい、ひっそりと退団した。


 その退団から内向的な性格になってしまい、今に至るようだった。


「我々は博士のがんばりに期待する事以外何もできませんね」


 達観してるかのように言う秀吉。


 その言葉にさくらが頷いた。


 秀吉は自称ではあるが、豊臣秀次の血を継ぐ者という事である。


 大阪を首都にするという提案したのは秀吉であり、豊臣秀吉の意志を継いで、と言ってはいるが、本人はそれほど本気ではないようだった。


 何か別の考えがあるのかもしれないが、本人にそれを語る気は全くない。


 それと、さくらと昔から面識があり、このクーデターにさくらを誘った人物であった。


「現状、魔法少女……彼女達が出てくると厄介です。ここは一つ、停戦協定でも持ちかけてみましょう。そうすれば、彼女たちの動きを制御できるかも知れません」


「では、その作戦で」


 さくらの提案に秀吉が賛同の意を示した。


 新高山博士はリーダーのような存在ではあるが、研究の事にしか頭が回らないので、具体的な戦略などは秀吉とさくらのコンビが行っている。


 さくらは十歳でアメリカの大学に入学したほどの秀才で、こういう事にかけては秀吉の上を行く。


「では、早速手配しておきます」


 さくらは立ち上がり、自分の席へと戻っていく。


「……魔法少女ですか。計算外ですが、綺麗……だった。あの人たちにならば殺されてもいい。私が動かせるのはこれしかないけど……」


 うっとりとした恋をしている少女のような目をしながら、さくらは自分の席に腰掛けた。




 その二時間後にさくら主導の元、日本政府と一時的な休戦が結ばれた。



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