二人の魔法少女 第二話
第二次世界大戦中、撃沈しそうになっていた空母を改造し、居住スペースを作り、人が住めるようにしたのが空母『天之群雲』であった。
そこに虚ろの民の一部が住んで生活していた。
外部からレーダーなどで感知されないよう常に結界を張っており、普通の人は見れないようになっていた。
燃料は最小限の量しか積んでいないが、動力となる燃料を霊力で作り出す術者が常におり、その心配はいらない。
天之群雲の甲板の上に、二人の少女が立っていた。風が強く、少女達の髪や衣服が強く揺さぶられていた。
一人は巫女服でその身を包み、もう一人の少女はタンクトップに短パンという出で立ちであった。
「とうとう来たか……」
タンクトップの少女は不敵な笑みを浮かべた。
耳の上で結んでいる髪が風でなびいている。
女の子なのだろうが、引き締まった身体をしていて、身体に凹凸が余りない。
その上、タンクトップの下に着ているスポーツ系の下着を見えてしまっていても気にしてはいなかった。
それに引き替え、髪型にはこだわりがあるようで、耳の上で髪をリボンで結んでいたりする。
それが彼女なりの身だしなみなのかもしれない。
「どの国も持ち得ない技術の結晶体……相手にとって不足はありません」
巫女服の少女も微笑みながら呟くように言った。
腰の辺りまである綺麗に整えられた黒髪が風でサラサラとなびいている。穏和さが雰囲気からひしひしと漂っていて、側にいるだけでほのぼのとした気分になりそうであった。
「ボク達が出る事になるなんて、よっぽどの相手って事だよね?」
タンクトップの少女は、数分前に甲板に着陸した日本自衛軍のヘリを見やりながら言った。
レーダーに感知されにくい特殊塗料で着色され、隠密性に優れている。
要人が乗るために特注された物であり、通常のスペックとは異なるパーツ構成で製造されたものでもあった。
その少女達の後ろの空間に黒い小さな点がぽつんと開き、次第に大きくなっていく。
「……二人とも」
空間が切り取られたように穴が開いたところで、サングラスをかけた長身の男がそこからひょいと顔を出した。
「長がお呼びだ」
その言葉に反応して、二人の少女がその男を顧みた。
「分かった」
「分かりましたわ」
男の言葉の意味を即座に理解し、神妙な顔で頷いた。
「この穴は長の部屋へと通じている。使え」
男はそう言って顔を引っ込めた。
男の能力は時空突貫で、どんなに離れた場所であっても空間と空間をつなぐトンネルを掘る事ができるのであった。
二人は何も言わずにその穴の中へと入っていく。全員が入ったところで、穴が縮小していき、すっかり消えてしまった。