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戦士以上、魔法少女未満の少女達  作者: 佐久間零式改
第五章 勝者は生者にあらず
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勝者は生者にあらず 第十話



 立花大尉の部隊はロメルス一機の襲撃を受け、アパッチ三機大破、戦車部隊は軒並み破壊され、搭乗員の多くは圧死や焼死、蒸発などし、甚大な被害を受け、進軍不可能になってしまっていた。


「ここまでか」


 立花大尉は自分が生き残ってしまった事を悔やみながら、とあることを考えていた。


 生き残っている隊員が傷ついた者達を治療したりしている最中、立花だけはそんな隊員達から距離を取り、空を見つめていた。


(あの方達を乗せたトラックがB地点で音信不通。あの方達の力を無力化するという新兵器の存在がスパイから明らかになっているのだが、その機体が出撃したとの情報もある……今はどう動くべきか)


 作戦司令本部との通信は絶えず行っており、何か進展があればすぐにこちらに伝わるようになっている。


「立花大尉」


 と、通信兵が立花の前まで来て敬礼をした。


「何か?」


「早期警戒管制機の報告によりB地点の情勢が分かりました」


 通信兵の顔色が青ざめている事にここを察し、これが良い情報でない事を悟った。


「ただいま、ロメルス一機と戦闘中。なお、鳳香様は倒れたまま微動だにせず、真希様が戦闘中ですが、旗色は悪し、との事です」


「……神器の使用はまだ禁止されているのであったな?」


「はい。上層部はあの少女達に神器を使用される気は毛頭無いようです。今回のクーデターよりも、神器の方が恐れているという話ではありましたが……」


「ならば、我々が命を賭してもサポートせねばなるまい。全力が出せぬという事は、最悪の事態が起こりえるという事だ」


 自分達にできる最善の方法を導き出そうと、いろいろなパターンをシミュレートした。そうして一つの答えを導き出した。


「他の部隊に伝令を。作戦本部がどういう指示を出そうとも我が部隊は救出に向かう。日本の未来を憂う者ならば、我が部隊とともに行動せよ、と」


「了解いたしました!」


 通信兵はびしっと姿勢を正し、通信車両の方へと戻っていった。


「さて……」


 立花は改めて自分の部隊の状況を確かめた。被弾しミサイルが発射不可能になったアパッチ、九十式戦車が三台、他にも数台の戦車が残っていた。


(これだけの戦力があれば、時間稼ぎはできる)


 それを見て、立花はそうなると信じた。


「……すまない、真奈美。パパは約束は守れそうにない」


 立花は空を仰ぎ見ながらそう呟くと、アパッチの方へと急ぎ足で向かった。


 アパッチのところには、パイロットが故障箇所を修理しようとしていた。


 しかし、被弾している以上、どうしようもなく、途方に暮れていたのだった。


「アパッチは飛べるか?」


 パイロットにそう問うと、


「はい。飛ぶことは可能です。ですが、火器の使用は修理しないと不可能です」


「上出来だ。このアパッチには俺が乗る。君はバイクに乗り、B地点にいる紗理奈様に伝えてくるのだ。退却せよ。さすれば道が開ける、と」


「し、しかし、立花大尉、このアパッチは……」


 パイロットは説明を聞いていなかったのかと思い、もう一度説明しようとしたが、


「飛べば武器になる!」


 立花がそう叫び、そこから先の言葉を押しやった。


「立花大尉……御武運を……」


 パイロットは立花の意図を理解した。その心中をくみ取り、最後とばかりに慇懃に敬礼した。


「もし、君が生き残ることができたら、妻と子供に伝えて欲しい。約束を果たせなくてすまないと」


「りょ、了解しました!」


 パイロットの敬礼で見送られながら、アパッチに乗り込んだ。


 ヘリの操縦はお手の物だった。


 元来はヘリのパイロットであったのだが、同期の者達が次々と戦死したために陸軍に異動させられたのだ。


「ここが棺桶か。悪くはない」


 立花は自嘲気味な笑みをしながら、操縦桿を握った。




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