勝者は生者にあらず 第二話
「……」
真希と鳳香はさくらが敵意を露わにしていないのを取り、警戒心を全く出さずに礼儀正しく一礼した。
「お、お姉様! て、敵ですよ!」
紗理奈だけは、こういった場面に慣れてはいないのか取り乱していたが、
「今戦う気はないようですよ。警戒する必要はありません」
と、鳳香にたしなめられ、すぐにいつもの紗理奈に戻った。
「で、なぜクーデター軍の参謀さんがここに?」
真希が何の気なしに言うと、さくらと夏美が同じタイミングで苦笑した。
「元々ここの中等部の生徒でしたから」
「補足すると、私の従姉妹ですわ。できの悪い人ですけど」
真希達はなんとコメントしていいのか迷い、口ごもった。
「先ほどの話ですが、私が補足させていただくと、量産型ロメルスが撃破された事で私達の勝利はなくなりました。ですが、戦い続けます。戦場には私たちの死地がありますから」
さくらは屈託のない笑みを浮かべ、あっさりと言ってのけた。
「死ぬことを厭わないのですか?」
と、鳳香がしっくりとしない顔をして訊ねた。
「私の身体は病気でボロボロです。余命一ヶ月あるかないか程度です。ですから、死に対する恐怖はありません」
「……本当ですか?」
「どうでしょう?」
曖昧な返答に鳳香はさらに疑問の念を抱いた。
「病院で死を迎えるほど、私は人生を諦めていません。それが答えです」
その答えを聞いて、鳳香はさくらが心正しき者だということを理解し、これ以上何も問う気が起きなくなった。
「あ、そうですわ」
夏美がポンと手を打って、何かをひらめいたようだった。
「今日、休校になったことが伝えられていなかったそうで、お昼ご飯が納品されたそうですの。それを皆さんで食べませんか? もしよろしかったら、業者の方々にここまで運んでいただきますわ」
その提案に対して、誰も反対はしなかった。




