戦士達の休息 第六話
大阪ジャガースのチームカラーで塗装されたロメルスは、魔法少女が出てくるのを今か今かと校庭で待ち続けていた。
この学院にいる生徒達を皆殺しにしてもいいのだろうが、岡田三郎にその意志はこれっぽっちもなかった。
戦意を見せていない奴を相手にするのは、スポーツマンシップに反する。
そう思っているところがあるからだ。
「なんだ?」
校舎内の人間が退避しているのを確認していたが、攻撃する気など起きなかった。逃げたければ逃げればいい、と思っていた。
だが、今逃げようとしている者達とは違う行動を見せている影がいくつかある事に気づいた。
「やる気か、面白い」
校舎から制服姿の夏美が出てきて、三郎の方へとゆっくりと歩いてくる。
「なんだ、小娘」
外部スピーカーでそう訊ねると、
「魔法少女さん達は忙しく、あなたの相手などしていられないって言っていますわ」
夏美は距離を取るように立ち止まり、そう答えた。
「ほう。で、お前達が相手をするっていうのか?」
「ええ、そのつもりですわ」
「ガキだからとか、女だからとか、そんな理由で手加減はしねぇぜ」
三郎は残虐な笑みを口元に刻み、ジャッジメントナイフを抜いた。
それに合わせるように、四方から煙幕弾が飛んできて、校庭一面が煙に包まれる。
「やってくれる!」
とっさにナイフを元に戻し、背負っていた甲子園を抜き放つ。
ホームランを打つ事を思い描きながら、渾身の一振りをしてみせた。
突風が巻き起こり、煙が空へと舞い上がると同時に、学院の校舎の窓ガラスが割れていく。しかも、風によって吹き飛ばされたのは煙だけではなかった。
「くあっ?!」
「きゃぁぁっ!!」
煙幕弾を撃ち込んだ四人と夏美もその風に飲み込まれ、ある者は校舎に打ち付けられ、またある者は校舎の中へと放り込まれ、またある者は校庭の地面に強く叩きつけられた。
「くぅ……」
夏美は地面に叩きつけられ、足の骨が折れたらしく立ち上がることができなかった。
「お前達の勇気には経緯を払うぜ。しかしな、勇気と蛮勇は別物だということを知っておいた方がよかったな」
三郎はバットを手にしたまま、一番近くにいる夏美を狙いを定めた。バットをゴルフクラブのように持ち、
「このバットで人間を打ったら、ミンチになっちまうんだろうな。悪く思うなよ。俺はガキだとうが女だろうが、本気でかかってきた相手に対してもフェアであるからな!」
バットを大きく振りかぶり、しばらくためてから振り下ろした。




