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戦士以上、魔法少女未満の少女達  作者: 佐久間零式改
第四章 戦士達の休息
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戦士達の休息 第四話



「弾道ミサイルは米帝軍の物をカスタマイズしています。命中精度をさらに上げて、九十パーセントまでなっていますので確実に目的地に必ずたどり着けます」


「分かった」


 技術開発部の人間の話を適当に聞き流しながら、三郎はただ頷くばかりだった。


 三郎はロメルス搭乗用のスーツに身を包んでいた。いつでも出撃できるという意気込みがある。


 こうなることを最初から想定していたのか、さくらが一発だけ弾道ミサイルが用意させていた。


 東京を直接攻撃する気は新高山博士には最初からなく、弾道ミサイルなどは用意してはいなかった。


 ロメルスによる直接占拠しか考えていなかった、というのが正解だろう。


「ロメルスの足を引っかける場所を設置しておきましたので、ミサイルに乗ったらそこに足を乗せてください。そうすれば、途中で吹っ飛ばされないはずです」


「分かった」


 三郎はまた生返事で頷く。


「配備されているミサイル防衛システムで撃ち落とされる可能性がありますが、その際にはナビゲートシステムを使用してください。自動的に目的地へと導いてくれます」


「迎撃されそうなら、そのミサイルを撃ち落とせばいいんだろ?」


「……それができれば問題ありません」


「エースの俺ならやれる」


 一秒でも早く出撃したいから、三郎はソワソワしていた。


 血がたぎるという表現が一番なのかもしれないが、そこまで興奮してきていた。


「武器は? 甲子園の他に何がある?」


「ネオ・メトロニュウム製のジャッジメントナイフ、それとビームライフルです」


「甲子園以外は量産タイプと同じか」


「はい。それくらいしか用意できませんでした」


「それだけでいい。余計なもんは必要ないぜ」


「言い忘れていましたが、ミサイルはいつでも発射可能ですよ」


「ならば、今すぐ出る! 一分一秒が惜しいぜ」


 三郎はコックピットの位置まで行ける小型エレベータに乗り込んだ。


 量産タイプ同様、コックピットは首の下辺りにある。


「データ収集、頼みますよ!」


 上へと向かう三郎を見上げながら、聞こえるよう大声で言った。


「マウンドはエースに任せろ」


 白い歯がキラッと輝いて見えるほどの笑顔を見せてから、コックピットに乗り込んだ。


「三郎さんなら、やってくれるか」


 主任は安堵の笑みを浮かべ、弾道ミサイル発射の準備をするためにその機体の前から離れていった。


「量産タイプと内部は変わらずか」


 真っ暗なコックピットの中に入り、シートに腰掛けるや否や、シートベルトを締めた。


 システムを起動させると、三百六十度モニターの作動し始め、視界が開けた。


 外部通信システムをオンにし、


「岡田三郎、出る」


 と、しっかりとした声で宣言した。


「了解です。ミサイル発射まで後十分です。打ち上げられた直後にミサイルに張り付き、所定の場所に足をかけてください。そうすれば問題なく東京まで行けるはずです」


「了解、了解」


 機体に搭乗する前に、さくらから作戦の概要を伝えられていたので、それに従うべく、機体を動かし始めた。


『弾道ミサイルですが、大気園外を弾道飛行しますので、ロメルスだと多少問題が起こるかもしれません。ですが、三郎さんなら、なんとかできるはずです。いったん大気圏辺りまで行き、そこから一気に東京へと落下していきます。百パーセント魔法少女か、迎撃システムがミサイルを撃ち落とそうとするはずなので、三郎さんは撃ち落とされちゃってください。そうして……こほん、こほんっ……』


 さくらが咳をしたと思ったら、唇の隙間から血が流れ始めた。そんな状況であっても、さくらは話を続ける。


『御鏡学院に降り立てばいいんです。で、魔法少女を引きずり出すために、御鏡学院の生徒を人質にしちゃってください』


『人質だと? スポーツマンシップに反する』


『いえ、時間稼ぎですよ。周囲の住民などが避難できるだけの時間を稼ぐんです。そうすれば、辺りは無人になると思うので、思いっきり暴れられますよ。大量虐殺がしたいようでしたら、そのまま暴れても構いませんけど』


 口から血がポタポタと流れ出ていたが、それに構うことなく、さくらは説明した。


『その作戦で行けばいいんだな?』


『はい』


 そう言って満面の笑みを浮かべると、さくらは意識を失ったようで倒れた。


『お、おい!』


 さくらに慌てて駆け寄ろうとするが、それを秀吉に制された。


『三郎は作戦を遂行させればいいのです』


 そう言い切られ、三郎はさくらと秀吉の思いを知り、作戦行動に即座に移ったのだった。


「ミサイル発射まで二十秒前」


 スピーカーからオペレータの声が流れてきた。さくらはまだ復帰してないようで、別人の声だった。


「……」


 三郎は頭の中でカウントしていく。


(残り十秒……)


 目を閉じて、発射されて安定したところで飛び乗るところを想像し、模擬訓練を何度も繰り返した。失敗をする姿を想像できなかった。


「成功するぜ」


 そう小声で呟いたとき、スピーカーから、


「発射まで後五秒……」


 という声が流れてきた。


「エース、出るぜ!」


 カッと目を見開いて、ロメルスを動かした。


 打ち上げられて安定したところでミサイルに張り付き、そして、足を固定させた。そのまま大気園外へと上がっていく。


「スノーボードみたいだな」


 なるべくミサイルを揺らさないようにしながら、流れに身を任せる事にした。




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