戦士達の休息 第二話
「手厚い歓迎だね」
鳳香達が突如学校の校庭に炎と共に出現するというパフォーマンスをし、その存在がすぐさま学校中に知れ渡った。
真希と鳳香の存在は、その学校に通う一部の者達に知られていた。
鳳香達が今日転校してくることも、どういった存在であるかも。
「あんた達、何様のつもりよ?」
下駄箱のところで、真希と鳳香と紗理奈は七人ほどの女生徒に囲まれた。そのうちの一人がそう嫌悪感たっぷりに言った。
「ボク達に何か用?」
真希が鳳香達を守るように、一歩前に出て、全員を目でギロっと威嚇する。
すると、一人以外、その視線に気圧されてか一歩後ずさった。
(こいつがリーダーか?)
真希は最初に声をかけてきた女生徒を睨み付けた。
すると、この少女だけが後ずさりしなかった。胸を張って、真希の事を見下すように見つめていた。
雰囲気として、どこぞのお嬢様といったものがある。
(高慢そうな表情して、何こいつ?)
真希がそう思ってると、
「挨拶よ。あんた達が日本を救ったんですってね」
少女が真希に負けじとにらみ返してくる。
弱々しくて、すぐに負けを認めそうな視線だったが、なかなか視線を外さなかった。
「……」
なんで知っている、と訊きたかったが、その気持ちをぐっとこらえた。
「あら、黙りかしら? 秘密主義ですの?」
「行くよ」
挑発してくるような言動に、真希は釈然としないものを感じながらも、少女達の横を通り過ぎようとした。
「私の名前は黒金夏美よ、覚えておきなさい」
「ヤダね」
「なっ?!」
気色ばんだ夏美を無視するように、真希はその横を素通りしていった。
「文句があるならいつでも来なよ。相手になってあげるから」
「挑発しているつもりですの? その手には乗りませんわ」
負け惜しみに近い言葉だった。
「挑発? ボクは普通の人間をたきつけたりはしないよ。人相手だと虐殺にしかならないからね」
「神に近い存在だかなんだかは知りませんが、何を言ってるんですの?」
真希は振り返って、夏美の事をチラッと横目で見た。
「言いたい事があるなら、面と向かって言えよ。ボクは逃げも隠れもしないよ」
それだけ言って、真希はこの学校の職員室へと向かう事にした。
「それでは私たちも」
慇懃に頭を下げて、鳳香と紗理奈が真希の後を追って歩き出す。
そんな真希達の態度を見て、夏美は急に馬鹿らしくなってほぞをかんだ。
***
真希と鳳香は同じクラスになり、紗理奈は年齢が離れている事もあって、当然別学年のクラスとなった。
『お姉様と一緒になれなくて、残念ですよ~』
と、紗理奈は別れ際まで悲しそうにしていたが、
「そんな顔をしていては駄目ですよ。こんな事で悲しんでいる訳にはいきませんから」
鳳香にそうたしなめられて、渋々といった様子で別れたのだった。
「あ」
教室に入ってすぐ、真希はつい声を出してしまった。
「ふんっ」
同じクラスに夏美がいたからであった。
相手にしなければいい、と思いながら、教室に入っていった。
「不幸ですわ。あなた方と同じクラスになるだなんて」
こうして、真希と鳳香にとって退屈な日々となる学園生活が始まったのであった。




