第三章 対等なる者 第七話
「鳳香の奴、苦戦してるね」
ビルの屋上で、真希と紗理奈が二人の戦いをじっと見守っていた。
家々を壊したときに上がった砂埃が風に乗って舞っていても、そんな事を嫌がる二人ではなかった。
「お姉様、大丈夫なのかなっ?」
紗理奈は不安げな顔をし、祈るように両手を合わせている。
とはいえ、鳳香の一挙一動をその目に焼き付けておきたくて、目を見開き瞬きさえできなかった。
「鳳香とは相性が悪いね。ボク向きの相手だよ、あいつは。パワーで押してくるなら、パワーで押しつぶさないと」
言葉ではそう言うが、真希は安心しきっているのか動こうともしていない。
鳳香に譲ってしまった事を少なからず後悔してはいた。
雑魚ではないのがその動きから読み取れ、手合わせしたいとさえ思っており、身体が疼いて仕方がなかった。
「……でも、そろそろ本気を出してもいいんじゃないの、鳳香は。ボクはそう思うけど」
「ですよねっ。あんなのに負けるお姉様ではないですよねっ」
「性能が前に戦った雑魚とは違うのが気になるかな? 何か……嫌な予感がする」
「大丈夫ですよっ。お姉様ならきっと……」
紗理奈は期待を一心に込めた目で、戦いの行方を見守っている。鳳香の実力を分かっているからこそ、そういう態度でいられたのだった。
「さて、鳳香はどう出るのかな? ボクとしてそれが興味深いね」
真希は自分が出れば良かった、とまた思った。強い敵を見ると戦いたくなる、武闘家として育てられた性だと知りながらも。




