学校に戻ったが、パラシュートは欲しかった!
俺は微睡みから目覚める。
縄に仕込まれた魔法のお陰で特に問題は無いわけだが、目覚めれば足が地に着いて居らず、雲の上を高速で移動……それも落下中となれば状況を理解する前に息を飲むのは当然の事であろう。
数秒後、まだ少し腰が退ける速さで少しずつ雲に沈み、体から三十センチ程で留まり、結界に弾かれる水滴を横目に、雲を抜けた。この結界があるからこそ、隕石のような速さで落ちても燃えはしないのだろう。
雲を抜ければ当然地上が見える訳だが、街並みは高度的な問題で良く見えない。
街並みと言えば学園に来る時は二時間程王様と話した中で学院を含む街――国立だが首都ではなく『魔法学園都市ヘヴィール』として一つの街として成り立っている。また、対の『剣術学園都市ヘヴァーネ』も同じく都市として遜色ない――等の説明を受けたが、来る時は魔方陣でササッと移動したので実際に見るのは初めてとなる。
ここで一つ、注釈を。『街並み』は見えないが『地形』は既にはっきりと見える。山の連なりや海面に沿う砂浜等だ。しかし、それも遠い為、少しばかり目を凝らさなければ見えにくい。
そして、視点を戻し、真下を見る。そこはただただ広がる平らな地面。それを避けるように囲んで街は出来ている。
……通称、運動場。広大とも言える広さの魔法学園ヘヴィール、その土地の一部である。
「おぉ……こうして見るとなんと言うか壮大? 感嘆? そんな感じだな……」
そうして上空からの観光に浸っていられたのも僅か十数秒。傾きつつある太陽を背に、俺は着陸態勢を整える事にした。
「『エア・バリア……ウォーター・バリア』」
俺達から一メートル程に水の膜、さらに外側に空気の膜を作り出す。そこに魔力を更に加えて厚くする。
何故このような事をするのか、それは俺達三人を縛る縄の効力に問題があるからだ。行きはランダムに目的地が設定されていたが、要するに適当にぶっ飛んで力尽きたらそこで効力が切れ、フラフラと高度を落として、着陸するという設定。
帰りはしっかりと目的地が定まっているため、しっかりと距離分の魔力を補充し、ぶっ飛ぶ。
……一見、特に違和感は無いだろう。俺も縄に仕込まれている魔法の解析を始めた時はそう思ったが、よく調べて見れば、欠陥だらけ。
距離分の魔力を注いでも移動に使われるのは全て。過剰に余った魔力は余計なブーストを掛けて、高速飛行でそのまま目的地へと衝突。
その際、衝突する直前に魔力を使いきり、結界も同時に消え、直接衝突。
エトセトラエトセトラ……。
それを踏まえて、俺は結界を張り、現在。見事に作動したわけだ。
地面に近づいたタイミングで魔力操作、風を前方に集めてバースト。慣性や爆風による被害は水のクッションである程度は防げる。
無事、見事に帰還した訳だ。
「はぁ……あれ、だよな……」
俺は立ち上がり、なんとなく場所を記憶している俺のクラス棟、一のSに向かって歩き出す。
もちろん、パワーで強化して寝ている二人を担いで、だ。
エア・バリア 風で自分を包むように球体を作る。厚さ、大きさは使用する魔力に比例する。
ウォーター・バリア 水で自分を包むように球体を作る。厚さ、大きさは使用する魔力に比例する。




