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目が覚めたら知らない所にいたけど、馴染めるように頑張りたい!

 目が覚めると俺は、どこか既視感を感じさせる……和室のような部屋に横になっていた。


 畳や、掛け軸、その下に、ツボがあった。

 小さいころに、たまに行っていた、おじいちゃんの家を思い出す。

 よく、畳の上で、昼寝をしてたと思う。


 心地いい風が縁側から吹き込む。

 本来なら落ち着くはずが、落ち着かない。

 落ち着くはずがない。


 とりあえず、状況を整理したいと思う。


 俺の名前は、中井(なかい) (しゅう)。……よし、記憶はある。


   まず、ここはどこだろう? たしか教室にいたはずだが……倒れたんだっけ?

   となると、おれが意識を失った後、誰かが俺を運んだのか?


   考えているうちに、どんどん目がさえていく……。


 すると、さっきまで見えていなかったものを認識する。


「……っ!?」


 誰もいない、と思ってた部屋に俺以外に人がいて、思わず飛び上がり、身構えてしまう。


 いや、本当に人なのかさえ分からない。


 なんせ、目を凝らしても、瞬きしても、顔や、体格を()()()()()()()()


 むしろ、瞬きするごとに、人相が変わっている気がする。


 俺の表情が面白かったのか、そいつは、笑う。


 『――――――』


 あたまに音が響く。


 何重にも聞こえて、聞き取りにくいが、頭の中で頑張って感じ取った。


 おそらく『人物を想像しろ』とかそんな感じだと思う。


 どういう事だろう? ……とりあえず、やってみることにする。

 ためしに、おじいちゃんの姿を、頭に浮かべる。


 和室といえば、おじいちゃんが一番似合うからな。

 すると、『そいつ』がうごめきだして、姿を変える。


 案の定、霧が晴れるように、輪郭がはっきりしてきてみると、おじいちゃんにそっくりな姿になった。


「おお! すごいじゃないか。結構時間がかかると思うとったが、まさか一発で成功するとはのぅ! 君、耳がいいんじゃな」


「えっと……どちら様でしょうか?」


 すでに、この世を去った、おじいちゃんに変身した、『そいつ』に話しかける。


 いきなり話しかけられると、戸惑ってしまうのは、コミュ症と言うやつの性だろうか?


 ラノベとかだったら『神』なのだろうが……。


「そんな、かしこまらなくてもいいんじゃよ?」


 と、話しかけて来る。


「じゃあ、どういう風に呼べばいいですか?」


「そうじゃのぉ……じゃ、無難におじいちゃんでいいよ。姿も、君のおじいちゃんだしのぅ。あと敬語も必要ないのじゃよ?」


「えっと、わかりま……じゃなくて、わかったよ、おじいちゃん」


 ――結構、話しやすい。


「おじいちゃん、いよいろ教えてほしい事があるんだけど、いいかな?」


「うん、何がしりたい? 時間はいくらでもあるからの」


 そう言って、どこかから取り出したお茶を片手に目をキラキラさせる。


「じゃ、まず初めに、おじいちゃんって神様なの?」


「む、それは難しい質問じゃのぅ。確かに君からすれば『神』なのじゃろうが、わしからすれば、わしも『人』なんじゃよ。まぁ、上には上がいると思うとったほうがいい」


 つまり、まだ上に、神様のから見ての神様がいて、その上に神様の神様の神様がいてって感じか? ややこしい……。


「わかった。じゃあ、ここは?」


「ここは、わしの家じゃよ、君のいた世界とは違うところにある」


 察するに、俺は、死んでしまった。...そういうことだろう。

 仕方がない、とは割りきれないが、終わった事より先の事、そう死んでしまったじいちゃんも言ってた気がする!


「俺……いや、僕は死んで天国とか、地獄とか、死後の世界に行けばいいの?」


「それも選択肢としては、ある」


 じゃが、とおじいちゃんこと、神様は言う。


「おすすめはできん。君は特に悪事を働いていないようじゃから、天国には行ける。しかし、一方通行なのじゃよ。 行ったらそれきり、天国からは出れない。不自由ではないが、自由とは言えない……。ここで、提案じゃ! おすすめの選択肢なのだが、2つある。1つ、わしのところに住むということ。話し相手になってくれたり、お茶をいれてくれたりのぉ。話し相手になってくれる者がいなくての、たまにさびしいんじゃよ...それにここにいれば、死なないからのぅ」


 おじいちゃんは、さびしそうに笑う。なんか、最後にさらっとすごいことを言った気がするが……。


「二つ目は?」


「ふたつめは輪廻に従い、生まれ変わることじゃ。とはいっても、同じ世界には生まれることは、できんがの。わしにできることは、定められたルールの中で、手助けをするぐらいしかできんのじゃ」


 言われて、俺は考える。このおじいちゃんは、結構優しいし、死なない生活もいいかもしれない。けど……。


「おじいちゃん、僕は、転生するよ!」


 やっぱり、別の世界……異世界に行ける選択肢、捨てがたいからな!


「そうか……残念じゃが、仕方ないの……」


「ごめん……せっかく誘ってくれたのに」


「いいんじゃよ、それが君の選択なのじゃからな。ああ! これを渡しておくべきじゃな」


 そういって、また、どこからか、辞書のようなものを取り出してきた。


「これは?」


「君の疑問じゃよ。この中には君が知りたいこと、君が欲する物。すべてが入っているんじゃよ。君にこれを手土産として贈る。まぁ、多少は制限されているがの」


 それは、俺の手に触れると、途端に、冊子のように薄くなる。


「その本はのぅ、生きているんじゃよ。これから、君とともに過ごし君とともに成長する。......知識を貪欲に、時に強欲に求む者が手にする本。『強欲の書(マモン・ブック)』……これは、これから君が転生するであろう世界のガイドブックとなるじゃろう。気になることがあれば、調べてみるといい。……わしは、用事があって何日か出かけるのじゃ。帰ってきたら、きみを転生させる。それまで、転生したい世界を決めて、その世界について調べることじゃな――」


 にっこりした笑顔と温かみのある声を残して、おじいちゃんは、どこかへと消えていった。……先ほど、どこからともかくお茶や、本を取り出したのも、神の力的なやつなのだろうか?


「さあ、楽しくなってきたぞ!!」


 俺は、胸に好奇心を抱いて勉強とは名ばかりの異世界選びを始めるのだった……。



 大きな勘違いをしているのにも気づかずに……。

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