感電しない男 【500文字】
ある所に静電気で感電したことのない男がいたそうな。
初めは気付いていなかった。自身が感電しにくいということを。
幼い頃の冬場、男の両親はドアに触れたがらず、相手に扉を開けさせようとしていました。
男の体質は遺伝ではなさそうです。
また自動車から降りるとき、誰かが「あイタ」とか叫んでいる声を耳にしていました。
座席と服の間で静電気が発生したのでしょう。
男には手でも挟んだのかと見当違いな考えを持っていたため、意味が分かっていなかったようですけど。
仕事で電化製品を扱っていた所。
部品のフィルムを剥がしたりすると感電したりする。
静電気は摩擦で発生するからです。
男は知識としては知っていた。しかし実感はしていなかった。
目の前で何故か「痛い」と叫ぶ声を聞き、どうしたのか訊いて初めて知ったぐらいだった。
男は興味本位で代わりにフィルムを剥がしたりすることにした。
目の前の担当者は喜んで代わってくれた。
しかし何も変化はなかった。感電しなかったのだ。
男を感電させるためには電圧が足りなかったのかも知れない。
ある時男が叫んだ。
「あイタ!」
感電したのだ。通電した家電に手を入れていた。
流石に電気が流れていれば、男も感電するのだ。