調査結果
「と、いうことなんですよ」
ギルドに戻った式人はイーリスにウルス大森林でのことを報告した。ちなみにグレートモンキー達の死骸を回収することを忘れてたので、もう一度ウルス大森林に行って回収してきた。
「やはりウルス大森林には異変が起きているのですか。もし魔物の大侵攻が始まったら一番最初に来るのはこの街でしょうか」
「十中八九そうでしょう。そしてこの街全ての冒険者を集めたとしても、この街は大侵攻から守りきることは不可能かと」
「・・・そう、ですよね」
イーリスは若干青い顔をしているが受付嬢の矜恃からか、平静を装っているようだが式人には気づかれている。
魔物の大侵攻とは変異種、或いはスタンピードが起きた際に追い出された魔物や、変異種に率いられた魔物、スタンピードで発生した魔物が街に攻め込んでくることである。何故街を襲うのかは分かっていないが恐らく本能で人間の街を襲うのではないか、とされている。
そして街が襲われた際には冒険者が招集され防衛するのだが、生き残るのはほんの一握りで街はほぼ確実に滅ぶとされているため、大侵攻が起きたら死んだと思えと冒険者の間では伝わっている。そのため大侵攻が起きると分かったら街の人は避難することが、国から推奨されている。
「・・・いつ頃大侵攻が始まるとかは、シキトさんにはわかりますか?」
「確定ではありませんが、恐らくはあと一週間程ではないかと」
「・・・そうですか」
イーリスは顔を真っ青にしながらも気丈に振る舞おうとしているのか、唇を噛み締めている。式人はそんなイーリスを見て強い人だ、と内心感じていた。
「報告ありがとうございます。私は受付嬢の義務として街の方々には避難勧告を、冒険者の方々は任意で街の防衛に加わって貰おうと思います」
「一応俺の方からも避難勧告はしておきます。一週間しかないので、あまり余裕はありませんがそれでもほとんどの人は避難出来るでしょう」
「そうしてくれると助かります。ギルドだけでは街の人全員に行き渡るか心配でしたから」
イーリスは式人に防衛を手伝ってくれるかどうかは聞かない。街の防衛は基本的に任意だが、C、B、Aランクの冒険者は義務である。全ての冒険者を任意にすると誰も防衛せず街が蹂躙され次の街へ魔物が侵攻し、また街が蹂躙され次の街へ、ということが続いていくのだ。
だが、Sランク冒険者は別だ。彼らはそもそも人数が少なく、そして全員がどこにいるのか分かっていない。式人も今はこの街にいるが本来の彼は失踪扱いになっている。そんなSランク冒険者に街を防衛して死んでくれとは、イーリスには言えなかった。
「避難勧告が済んだら一刻も早くイーリスさんも避難することをおすすめしますよ」
「・・・え?」
「イーリスさんは変異種、もしくはスタンピードの規模というものがはかれることをご存知ですか?」
「いいえ・・・」
「それは発生した場所のおよそ半分から同等の規模があると言われています」
「そんな!! それではもうこの街は・・・」
「ええ、誰が防衛しても保たないでしょう」
イーリスの顔はもはや蒼白だ。だが、それも仕方がないだろう。今回発生したと予想(ほぼ確実だが)されている場所はウルス大森林だ。未だに全容が把握出来ていないウルス大森林だ。それはもはや小さな街一つで対応出来るレベルではない。国が取り掛かるべき規模の災害だ。だが、今から国に報告、援軍を要請したとしても、最低でも十日程かかる。それでは遅いのだ。援軍が来たとしてもこのエリエスの街は魔物によって蹂躙され尽くされた後なのだ。これでこの街は滅びが確定してしまったようなものだ。
「・・・分かりました。街の人が全て避難したら私も避難することにします」
「その方がよろしいかと。では、俺はこの辺で」
そう言って式人は宿屋に戻ることにした。イーリスに背を向けた瞬間何かを決意したような眼をしながら。




