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魔物

 ギルドでウルス大森林の噂を聞いた翌日、式人はウルス大森林に来ていた。式人は自分で見ていないのでどの程度魔物の凶暴性が増しているのか分からなかったので、自分の目で見に来たのだ。


「どうやら噂は本当かもしれないな」


 キン、と刀を鞘に収めながら独りごちた。今の式人の周りにあるのは、大量のグレートモンキーとホワイトウルフ、ブラッドベアー、ウルスガウルの死骸だ。

 ホワイトウルフは白い体毛に覆われた1.4メートル程もある狼で、ブラッドベアーは真っ赤な血の色のような2メートル程の巨大な熊だ。ウルスガウルは2.5メートル程の黒い牛に似た魔物である。ちなみにグレートモンキーは1.6メートル程と大体人間と同じ大きさの猿だ。


 これだけ大量の、しかも別種の魔物が同時に襲ってくる事はほぼ無い。何故なら魔物は決められた縄張りを持つとされているからだ。基本的に魔物は自分達の縄張りに入ってきた獲物を狩るとされ、他の魔物の縄張りには決して入らないと言われている。しかし、どうやって彼らが縄張りを判断しているのかは未だに分かっていない。

 そのため今回のような同時に、或いは徒党を組んで襲い掛かって来ることなど本来ありえないはずなのだ。それに加えてウルスガウルは見た目とは裏腹に臆病で神経質な珍しい魔物であるため、一層異常さが際立っている。


 このような事が起こる時は大抵2パターンとされている。

 一つは魔物の縄張りに圧倒的な強者が現れた時。この時の強者は『変異種』と呼ばれ、自分の縄張りとして前までいた魔物を追い出し、また他の魔物の縄張りにも手を出すため追い出された魔物は他の縄張りに行く訳にもいかず、別種の魔物の混同した群れが出来上がるのだ。同種の魔物の縄張りでも不思議なことに別の魔物の縄張りとして扱われ、もし入ってしまったら袋叩きにされ縄張りを追い出されてしまうというのだ。


 もう一つは魔物の異常発生だ。スタンピード、と呼ばれる現象で突然魔物が大量発生するのだ。大量発生した魔物は他の縄張りを襲う。魔物を追い出すのでは無くただ、殺すためだけに縄張りを荒らすのだ。そこから逃げてきた魔物が殺されないために他の魔物と結託したり、いつでも逃げれるように普段より警戒するため、凶暴性が増したりする。そしてスタンピードで発生した魔物は自然に存在している魔物と同じ姿形をしている為、同種の仲間かスタンピードなのか分からないのだ。

 実は魔物の増殖方法というのははっきりしていない。何十年も前から研究はされているが、成果はあまり芳しくない。分かっていることは二つだけで、どうやら魔物同士では生殖行為をしないことと、片方の性別しか存在しない魔物は人間に手を出すこと。後者については人間に限らず、獣人、エルフ、魔族など様々な種族の男或いは女を攫い生殖行為をするのだ。

 問題は前者で、どうやら動物が空気中の魔力の元、『魔素』を過剰に吸収した場合魔物に変じるのではないかと言われているが、定かではない。


 だが、スタンピードだけは別だ。これは原因がはっきりと分かっている。通常の増殖方法は不明だが、スタンピードの場合『核』となる長がいるのだ。長ともなると魔物は瘴気と呼ばれる黒い靄のようなものを常に体から撒き散らしている。この瘴気から魔物は発生する。スタンピードで発生した魔物は倒すと消え、代わりに宝石の様な石を落とす。『魔石』と呼ばれるもので、主に魔法具に使われたりする。

 何故魔石を落とすのかは分かっていないが恐らく、元は黒い靄から生まれた魔物のため心臓や核と呼べるものが存在しないため、空気中の魔力や魔素を取り込み固めて核とするのではないかと言われている。


「変異種かスタンピードか分からないな。どうするかね・・・『探索(サーチ)』じゃ探しようがないしな」


 無属性魔法『探索(サーチ)』は確かに利便性が高く、良く使われるのだが実は見たことの無い魔物は探すことが出来ないという欠点がある。この欠点、普段は大抵気にならないものだが、変異種かスタンピードは毎回姿や魔物の種類が違うため、この欠点が如実に出てしまうのだ。そのため、どちらの現象かは実際に魔物をことが起きてから魔物を倒すまで分からず、事前に倒すことは出来ないのだ。


「・・・一旦戻るか」


 式人は考えても仕方がないと言って踵を返し、冒険者ギルドに戻ることにした。

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