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『試し斬り』

お久しぶりです。少し短いと思いますが、読んでいただけると幸いです。

 式人が初めて魔法を行使してからおよそ一月が経った。その間に式人は魔力を上手く扱うための訓練と剣を振り続けて基本的な動きを身につける訓練に従事し、ユキカは式人に魔法で創らせた刀の部品を金属で造ろうと試行錯誤していた。そしてついに――


「できた! できたよシキト! シキトの言ってた刀がついに完成したよ!」


「おお。ついにできたのか。早かったな」


「見本が細部まで綺麗に再現されていたからね。これがこんなにはっきり見えなかったらもっと遅かったよ」


 ずっと部屋にこもりきりだったユキカは庭で訓練していた式人のところへ叫びながらやってくる。ユキカは何故か手に持っていた式人が魔力を固めて創った刀の部品を、たった今作り出した机の上に並べていく。予定より早く完成した理由が式人のお陰だと聞いて少しだけ嬉しくなった式人は心の中でこっそりと喜ぶ。決して顔には出さないようにしながら。


「それでできたものっていうのがその手に持っているものか?」


 叫びながらやってきたときから手に持っていたものについて式人は尋ねる。


「そう。これが完成した世界に二振りしかない刀だよ」


 ユキカはそう言って二振りの刀を机に置く。


 ――それは美しい刀だった。二振りともに見た目は同じ。完全に日本刀だ。差異があるのはその刀身の色と持ち手の柄の部分だけだ。その刀身は鋼と呼ぶには綺麗に透き通り過ぎており、敢えて色を表現するのであれば白銀に水晶の色を混ぜたような、といえばいいだろうか。柄は片方の刀が白でもう片方の刀が黒で統一されている。これは見分けがつくように柄の色が変えられているだろうが、それが目に入らない程式人の目の前に置かれている刀は綺麗だった。


「綺麗だな……」


「まあ素材の関係でこんな色になっちゃったけど、特殊な金属でできてるから頑丈だよ」


「特殊な金属?」


「うん。シキトも聞いたことないかな。ミスリルっていうんだけど」


 流石に式人も聞いたことはあった。それは地球での話であったが。


「本当にミスリルなんてあるんだな……」


 ぽつりと呟く。地球での空想の産物だと思っていたのだ。この世界に存在していることに式人は驚いた。いや、もしかしたら空想の産物ではないのだろうか。誰かが偶然にもミスリルを知ったことで地球で広まったのか。


「どっちでもいいか」


 考えても仕方ないと式人はその妄想とも呼べる考えを頭から振り払い刀をもう一度しっかり見る。何度見ても綺麗に透き通る刀は不思議な力を秘めているように見える。そこでふと気になったことを尋ねることにした。


「この刀って名前とかあるのか?」


「名前? ないよ? シキトに決めてもらおうと思ってたから」


「はい?」


「当然でしょ? これの発案者はシキトになるんだから。シキトに名付けの権利があるのはむしろ当たり前だよ。あとは名付け方なんて分かんないということもあるけど。私が付けてもいいんだけど正直期待しない方がいいよ?」


 流石に不安になる一言だったがとにかく名前は式人がつけなければならないらしい。これは困ったなと思いながら刀を見る。この刀は次第によっては一生使い続けていくものだ。いわば己の命を預ける相棒とも言えよう。ならば変な名前など付けられるはずもない。式人は真剣に二振りの刀を見遣る。


 二振りの刀にほとんど違いはなく、あるのは柄の色の違いだけ。名付けるならこの色に因んだ名がいいだろうか。


「白……黒……」


 なんとなく色を口に出してみてもそんなすぐには思いつかない。


「……うん。いいかは分からないけどとりあえず思いついた」


「早いね。一体どんなのにしたの?」


「こっちの柄が白い刀が『白露(しらつゆ)』。柄が黒い刀が『宵闇(よいやみ)』だ。少し安直かもしれないけどどうかな?」


「うん! 全然いいよ! それくらいの方がむしろ分かりやすいしね。愛着もわくってもんよ」


「あとは斬れるかが問題だけど……」


「そうだね。じゃあ早速創ろうか」


「……はい?」


「前に言わなかったっけ? 型を二人で創ろうって」


「言ったけど……え、今?」


「そうだよ? まあ正確に言えば型というより剣術かな。必殺技みたいな感じ」


 その言葉に式人の意識は飛びそうになる。それはそうだろう。斬れ味も感触もほとんど確認しないまま型を創ろうとユキカは言っているのだ。別に型を創るのは構わない。今までになかった剣術と魔法の組み合わせがどれほどの威力を発揮するのか知りたかったから。でもまだ早い。早すぎる。


「待つんだユキカ。この刀はできたばかりだろ? まだ俺達の手に馴染んでいない。だから少し振ってから考えるべきだ」


「試し斬りしろってこと?」


「そう」


「でも斬るものなんて近くにないし……」


「それこそ魔法で作ろうよ……とにかく従来の動きというか

実際にどれくらいの斬れ味かをこの刀で一通り試すべきだ」


「言われてみればそうだね。ごめん。少しはしゃいでたよ」


 と言ってユキカは無詠唱で地面から長さが全く同じ棒を五本生やした。


「これはそれぞれ硬さを調整した棒だよ。柔らかいものから順番に斬っていって、全部斬れれば試し斬りになるよね?」


「・・・まあ、うん。まずは斬り方からだと思うけど、まあいいや」


「まあ見てなって! これでも私は冒険者だよ。見た目と構造から力の入れ方は何となく分かるんだよ」


 まさかの言葉である。そしてユキカは一本の棒の前に立ち――


「こんな感じかな・・・。てい!」


 スパン!


 何となく気が抜ける掛け声と同時に刀を斜めに振り下ろし、何かが斬れる音が響いた。そして斬られたと思しき棒はやがて斜めにずり落ちていった。ユキカが持っている刀、『白露』は一切の刃こぼれがなく綺麗な形を保っている。


「なるほど・・・これが刀の使い方か」


 これが長年冒険者として活動してきた人間の実力か。


 式人はユキカを観察しながら己の手に握られる『宵闇』を見つめる。自分にもできるだろうか。あらゆるものから見捨てられ逃げ出した自分に。


「次はシキトだよ。やってみて」


 ユキカは振り返り式人に声をかける。その目に一切の曇りはなく、式人のことを信じているようだった。


「・・・俺は――「大丈夫だよ」――え?」


「大丈夫。シキトなら斬れるよ」


「なんで、なんでそんなことが言えるんだよ」


「だって見てきたからね。だから大丈夫。冒険者である私がずっと見てきて斬れるって言ってるんだよ。だから大丈夫だよ。シキトにはできる。」


「・・・・・・そっか。分かった。そこまで言われたらやるしかないね」


「うん。頑張って」


 式人は作り直された新しい棒の前に立ち、ゆっくりと刀を振り上げる。刀は力を均一に込めなければ直ぐに折れてしまう。真っ直ぐだ。ただ真っ直ぐ力を伝えるだけでいい。


「ふっ!」


 しっかりと刀を握り、そして振り下ろした。


「・・・・・・うん! やっぱりできるじゃん」


 後ろからかけられた声でようやく目の前にある光景が認識できるようになってきた。そこには斜めに斬られ地面に落ちている棒だけがあった。式人が握る『宵闇』に刃こぼれはない。


「はぁ・・・はぁ・・・な、なんでだ?」


「今まで素振りしてきたでしょ? あれで真っ直ぐ振り下ろすための姿勢を体が無意識に覚えてたんだよ。斜めに振り下ろすときも同じ。刀と剣で体の使い方が違っても力の入れ方が大きく変わるわけじゃないからね。式人の努力の賜物だよ」


「・・・・・・」


「おめでとう。シキトの努力が実ったんだよ」


「・・・・・・ああ。ありがとう」


 刀を見つめて礼を言った式人の視界が不意にじわりと滲む。なんだこれは、と抑えるよりも早くそれは零れ落ちる。


「うん。よく、頑張ったね」


 ――限界だった。優しく丁寧にユキカが告げた言葉が残酷にも式人の心に突き刺さる。せめてこれ以上零れ落ちないように式人は空を見上げる。


「きっとシキトは誰からも認められたことがなかったんだね。でも大丈夫。私が認めるから。あなたのことを私が認めましょう。()()()()()()であるユキカ・ティンクレアがあなたの存在を、力を、尊厳を。そして、生きる意味を。あなたが生きる理由をあなたに与えましょう」


「・・・・・・ああ。ありがとう」


 このときにようやく式人は生まれて初めて心のそこから礼を言えた気がした。


「ユキカ。話があるんだ」


「ん?」


「・・・俺のことについて」


「・・・そっか。話してくれるんだね。でもちょっと待ってね。今これ全部斬っちゃうから」


 と言ってある程度刀の力量を確かめたのかユキカは横に思い切り振るい、全ての棒を真横から斬り裂いた。刀が当たってないはずの棒も斬られているのだからユキカの実力は相当に高いのだろう。


「じゃあここで話すのもなんだから一度中に戻ろうか。刀を入れるための鞘? も創らないといけないし。それに私のことも話さなきゃいけないと思うからね」


「そうだね」


「ついでに紅茶も用意してくれると嬉しいかな」


「・・・・・・そうだね」


 早速出鼻をくじかれそうになりながらも二人は家の中へと戻っていった。


 どうか嫌わないでくれ、と互いに祈りながら。

前書きでも言った通り大変お久しぶりです。

かなり長い間更新せず、本当に申し訳ございませんでした。

Twitterの方でも言ったのですが、大半の方が認知していないと思われますのでここでも言いたいと思います。

と言っても大した話ではなく、ただの病気です。軽い鬱状態でした(鬱に軽いも重いもあるのか知りませんが)。少なくとも医者からはストレスだろうと言われてしまいまして…。中々書けずにいました。

一応別の作品も投稿はしていたのですが、こちらも中々の期間が空いてしまいまして。つい先日ようやく更新しました。

まあ私の話なんてどうでもいいのですが、長い間更新したというしていなかった理由は話さなければいけないだろうと思い、今回書かせてもらったという訳です(そもそもこんな作品を読んでくださってる人がいるのかは知りませんが)。

これからは更新頻度を上げるために文字数を少なくして更新していきたいと思います。恐らく2000から3000字程度になってしまうと思いますが何卒御容赦ください。少なくとも今月中には上げたいですね。


こんなところでしょうか。もし本文(後書きではなく)を読んで、ここがおかしいとか、誤字脱字等ございましたら報告いただけると助かります。自分で探せやと思っていますが中々見つけられないものなんですよね。一応誤字脱字には気をつけているのですがね。


それでは長々と失礼しました。また次回お会いできたら幸いです(読んでる人が(ry)。

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