決着
試合開始の合図とともに両者は動き出した。クーリアは舞台中央から下がりながら無詠唱で発動した『氷原』で足元から凍らせて、式人を串刺しにせんと棘状の氷原に舞台全域を染めていき、式人は舞台中央から端まで下がることで距離をとり刀を振るって迫る棘の氷を斬っていく。
だがそれで仕留められるとクーリアは思っていない。これは言わば牽制。魔法使いは距離を詰められた時点で負ける。これは常識だ。詠唱するよりも武器を振るう方が早いからだ。
だが、ものには必ず例外というものが存在する。魔法名を詠唱するよりも魔力を消費するが、最速で魔法を発動できる方法。それが無詠唱だ。武器を振るうよりも早く発動できるならば、クーリアは距離を詰められたとしても式人に引けを取らない。
クーリアは式人が刀を振るう前に早く発動できる無詠唱で自分の身を守りつつ、牽制にもなる魔法として『氷原』を選んだ。式人相手に距離をとることはかなりの危険行為だが、それでもクーリアは式人から距離をとることを選んだ。
式人が今までの試合で圧倒的に優勢だった理由は式人が遠距離からでも斬ることができるからだ。遠距離からでも攻撃を正確に当てることができる戦法は、それだけでも十分脅威だ。
だがもし式人よりも早く魔法を発動でき、尚且つ遠距離から当てられるならば、それは式人のアドバンテージを潰すことになる。式人の剣術は殆どが納刀した状態から発動するタイプ故に隙が大きい。だから、この試合は遠距離戦においてクーリアに多段に有利になるのだ。
「手加減なんてしてる余裕もないわね。『槍の雨』!」
一回戦でクーリアがドラン相手に使った魔法を無詠唱ではなく詠唱破棄で式人に発動する。それは一回戦と同じだが、今回は規模が違った。ドランに使ったときも多かったが、今回はそれ以上の数の魔法陣が投影されている。その数およそ50。それらの魔法陣から全属性の魔力で形作られた十字槍が、まるで雨のように式人に向けて降り注ぐ。
――筈だった。
「遅い」
直後に斬り裂かれる魔法陣。
「言った筈です。『槍の雨』は魔法陣を投影と同時に射出しろと」
確かに『槍の雨』は発動したとき、魔法陣を展開してから十字槍を射出する魔法だ。しかし、魔法陣を展開してから魔法を射出するまでの時間はおよそゼロコンマ七秒。その間に魔法陣を斬れば確かに魔法は発動しない。普通ならそんなことは到底できることではない。しかし式人はやってのけた。寸分の狂いもなく全ての魔法陣の中心を斬ってみせた。
その一言が、繰り出された技が、見せられた技術がクーリアにある事実を確信させる。織田式人こそがリーダーなのだと。別にエルレアの言葉を信用していなかった訳ではなく、自分で実際に確かめるまで信じたくなかっただけだった。だからこそ聞かなければならない。あの日のことを、これまでのことを。何の為にドラゴンを討伐したのかを。全て聞かなければならない。そうでなければ納得がいかない。
――そうでなければ、彼を探してきた意味がない。
「そうね。確かに言われてきたわ。だからやったのよ」
式人の足元に展開された魔法陣。斬ろうとしたが、既に遅かった。『槍の雨』と同時に展開されていた魔法は式人の足元から冷気を吹き出し徐々に凍らせていく。
「『氷の棺桶』!」
そして完全に式人の体は氷に包まれた。式人を包むそれは魔法名の通り、まるで巨大な棺桶のような形をしている。
クーリアは油断せず、ずっと『氷の棺桶』に包まれた式人を見つめる。これで勝ったとは一切思っていないからだ。恐らくすぐに脱出するだろうと確信している。
周りの観客や解説もざわついているのを聞くに、既に勝負が決まったと思っているのだろうが、こんな簡単にやられるような人間が、Sランクのトップに位置している筈がないだろうとクーリアは独りごちる。
そしてそれは正解だった。
ピシリ、と音がして氷にヒビが入る。ヒビは徐々に全体に広がっていき、大きな音をたてて氷は砕け散った。
クーリアは驚かなかったが周りはそうもいかなかったようで、先程よりもさらにざわついている。強いて言うのであれば、クーリアは脱出速度に驚いているぐらいか。てっきり燃やすと思い込んでいたが、砕いたのであれば使用した魔法は、無属性魔法『魔力振動』だろう。だがそれにしても早すぎる。
「何故攻撃しなかったのですか」
「あら、そんな訳ないでしょ。出てくるのが早すぎなのよ」
出てくると確信していたクーリアは既に次の魔法の準備を終わらせている。ただ式人が出てくるのが予想よりも早かったせいで、凍っている間に攻撃できなかっただけだ。本来なら普通の攻撃魔法を使っていればそんなことを気にせずに済んだのだが、クーリアをもってしてもこの魔法は溜めが必要だったのだ。
「くらいなさい。『永久凍土の吐息』」
その魔法はクーリアの体から放たれた。魔法、というよりかは正確に言うなら放たれたのは魔力だ。目に見えるレベルにまで低温の魔力が舞台を凍らせる。それはまるで全てを凍てつかせる絶対零度のようで、事実その域にまで達した魔力が式人に近づいていた。
「確かにこんなのを凍ってる間にくらってたら死んでましたね。早めに抜けて良かったですよ」
「よく言うわ。十秒も凍ってなかった癖に」
「寒いのは苦手なので」
「あら、熱いのがお好みかしら」
「なんか字が違う気がしますし、どちらも苦手です」
「随分と我儘なのね。どちらも嫌なんて」
「まあ人間得手不得手ありますし」
「そんなレベルじゃないでしょ」
そんなことを話しながらクーリアは懐かしいと感じながらも次の手を打ち、式人は迫り来る魔力をどうするか考えていた。
「どうしようもありませんね。これは斬れないし、『空閃』も凍るだろうし」
と言って溜息を零した。『永久凍土の吐息』は全てを凍てつかせる魔法だ。それは魔力も含まれる。魔力を斬撃として飛ばしている『空閃』やそれ以外の技は一切通じない。だから一瞬式人が諦めたように見えたが実は違う。まあ、ある意味諦めたのだが少しだけ意味が違う。式人が選んだ方法は魔法にも例外は存在するということだ。
「しょうがない、かな」
と言って式人が悲しそうに、寂しそうに、悔しそうに、そして、ほんの少しだけ嬉しそうに笑ったのを、クーリアは見た。
その表情の意味をクーリアは知らない。クーリアが成長したことを喜んでいるということをクーリアは知らない。それと同時に自分の弱さに嘆いていることもクーリアは知らない。けれど、それは知らなくていいことだ。少なくとも今は。
クーリアが今知っておくべきことは別のこと。式人が覚悟を決めた。舞台の上で死ぬことはないとしても、かつての仲間を殺す覚悟を。それだけ分かれば十分なのだ。
これは先の試合でリンティアを斬ったのと訳が違う。結界を破壊して相手を殺してしまう可能性がある。それ程までに式人の魔法は威力が高い。けれどそうでもしなければ勝てないと式人は判断した。
元々負けられない戦いだ。それに加えて今は試合前の交渉によって尚更負けられなくなっている。今更本気を出したって誰も怒りやしない。だから――
「『煉獄の黒焔』」
今大会初めて式人は攻撃魔法を使った。それは一回戦でイーラがクレスの結界を破るために用いた魔法。その本来の使い方。即ち――
「対『永久凍土の吐息』の魔法!? まさかそんなものを用意していたなんて・・・」
式人の体から漆黒の焔が噴き出す。黒焔は舞台に落ちると忽ち燃え広がり、『永久凍土の吐息』と衝突する。全てを凍てつかせる魔法と全てを灼き尽くす魔法の衝突は『煉獄の黒焔』に軍配が上がった。
魔法に矛盾はない。魔法同士がぶつかればどちらかが勝ち、どちらかが負ける。それは威力であったり、魔力の質であったり理由は様々だが、今回は相性から『煉獄の黒焔』が『永久凍土の吐息』を打ち破った。故に最強無敵の魔法は存在しない。全ては魔法の使い手、術者によって優劣が決まるのだ。
『永久凍土の吐息』を灼き尽くした『煉獄の黒焔』はそのままクーリアを燃やそうと、凍った舞台を溶かしながら進む。だがそれを黙って見ているクーリアではない。誰だって燃えていれば消そうとするだろう。クーリアも同じだった。それを式人が狙っているとも知らずに。
「くっ! 『津波』!」
用意していたものを破棄し、消火するためにクーリアは魔力にものをいわせて津波を引き起こす。自らの魔力を全て水に変換し『煉獄の黒焔』にぶつける。
高温のものにぶつかった水は蒸発するが、そのときに水の体積はおよそ1700倍にも増大するという。多量の水が瞬間的に蒸発した体積の増大を人は『水蒸気爆発』と呼ぶのだ。
「これは!?」
式人が不敵な笑みを一瞬浮かべたのが見えた瞬間、爆発が二人を飲み込んだ。
『これは・・・水蒸気爆発か』
『なにそれ?』
『水蒸気爆発とは大量の水が高温のものに触れたときに、水が気化されて発生する爆発のことだ。ここまでの威力になるとは思わなかったが、とてつもない力だな』
舞台で起こった爆発は結界に阻まれて周りに被害は及ぼさない。しかしある程度の威力は見てとれるため結界がなかったときの被害を考えると誰も逃げられないだろう。
未だに水蒸気に覆われて見えない舞台を誰もが見つめる中、唐突に風が吹き始めた。最初は何も思わなかったが結界を中心に渦を巻き始めたのを見て普通じゃないことに気付いた。
そもそも武闘会の安全装置として働いている結界は観客に被害を及ぼさぬように魔力を外に出さない仕組みになっている。だが今はその結界を超えて魔力が渦巻いている。明らかに異常だ。
やがて晴れていく結界内の舞台上では渦巻く魔力に飛ばされぬように刀を舞台に突き刺している式人と、吹き荒れる魔力の中心で佇むクーリアがいた。
『・・・・・・なにこれ?』
呆然と、思わず口から零れたと表現してもいいように、ポツリとミーナは呟いた。それに解を示せるのはやはりというか当然というべきか、Sランクを除けばギルドマスターであるラナとアックスだけだった。
『これは・・・リミッター解除だね。クーリア選手のとっておき、切り札とでも呼ぶべき代物。彼女の最後の手札だ』
『確か代々『魔女』に伝わるという技術じゃな。死ぬ危険性はないが魔力を大量に消費する分、しばらくまともに動けんくなるらしいの。吹き荒れてるあれはリミッターを解除した際の余剰分の魔力だとか聞いたのお』
『まさかこんなところでお目にかかれるとは思ってもみなかったね。だからミーナ。しっかりと目に焼きつけておくといい。Sランクというものがどういう存在なのか。そして、『魔女』と謳われる彼女の本気を』
舞台の端で魔力を放出しながら佇む彼女の姿は確かに最後のとっておきに相応しいといえる。その佇まいは攻撃魔法最高峰の使い手たる『魔女』の名を冠するに相応しいもので、その表情は決死の覚悟を決めた者のそれだ。
――人々は言う。あれこそが暴虐の嵐だと。
――仲間は言う。あれこそが魔法の真髄だと。
――彼は言う。あれこそが『魔女』たる所以だと。
「皮肉なものね。かつての戦いで一度だけ解除したリミッターを、今度はリーダーに向けて解除するなんて。世界の敵に使ったものを今度は世界の英雄に向けて使う。これ以上ないくらい皮肉なものね」
「いえ、これ以上ないくらい光栄なことですよ。かつて『無能』と蔑まれたこの身が、あの災厄とならべたのだから。この身に有り余ると言っても過言ではないですよ」
「過言よ。あなたのことは誰よりも認めてるわ。だからこそ解除したわ。あなたはその災厄を討ったのだから、寧ろ危険度としてはあなたの方が上よ」
「いや、あれは仲間の援護があってこそできたこと。僕一人だけだったら何もできませんでしたよ」
言葉を交わし合う中でその単語だけは、その言葉だけは聞き逃せなかった。
「・・・・・・何でそれを今言うの?」
「・・・・・・」
「何で私達を仲間と呼ぶの!? あなたが! あなたの方から! 勝手にいなくなった癖に・・・! 今まで一度も、仲間だって言わなかった癖に・・・! 何で・・・! 今・・・!」
クーリアの悲痛とも言える叫びが舞台に響く。けれど吹き荒れる魔力によって実況までは届かない。だから叫ぶ。試合に勝った後で聞きたかったことを今ここで叫ぶ。
式人の胸中に広がる大きな罪悪感が痛みを伴って式人の中に残った僅かな心を蝕む。それは錯覚だ。錯覚だと分かっている。
けれど、それを誤解させたままでいいのか?
理由も言わずに目的を成すつもりなのか?
何も言わないまま彼らに咎を背負わせる気か?
全てはお前の自己満足のせいなのに?
――ああ、分かっている。これは、俺の我儘だ。
「・・・・・・」
「何とか、言ってみなさいよ・・・! このバカ・・・!」
今までと少しだけ、ほんの少しだけ違う年相応の少女のような口調で涙を流しながら叫ぶ。その姿が式人の中で彼女と重なって見えた。ドラゴンを討つきっかけとなった少女に。似ていない筈なのに、どうしても重なって見えてしまう。
それがとても見ていられなくて――
「・・・・・・一つだけ」
「?」
「一つだけ、聞きたいことがあります」
「あなたが聞いてどうすんのよ・・・!」
確かにその通りだと苦笑する。こうやって苦笑するのも久しぶりだなと思いながらも口にした。これ以上彼女が泣く姿を見ていられなかったから。早く泣きやませたかったから。だから、思わず聞いた。
「何で・・・何で俺を探そうと思った? 俺はあなたが言った通りに勝手に消えた男だ。確かに武闘会はSランクの参加が義務付けられている。だからといって俺が来るとは限らないだろう。どこかで野垂れ死にしていたかもしれないだろう。何故だ? 何故お前達は俺を探した?」
「寧ろ何で探されないと思ったのかこっちが聞きたいわね・・・。いいわ、教えてあげる。といっても簡単な理由だけどね。私達『ヴェンガドル』はあなたを殴るために探していたわ。何で勝手に消えたんだって、思いっきりぶん殴ってやるつもりで探していたのよ。どう? 簡単でしょ?」
「確かにそれは簡単だね。俺が被害を被ることを除けばまともな理由だ。いや、それも含めて当たり前なのか? まあいいか。理由も分かった。これで俺は十分満足したよ」
「私からも一つだけ聞いてもいいかしら」
「それは、勝ってから聞くのではなかったのですか」
「・・・それもそうね。この試合に勝って、あなたから全てを聞き出すわ。あの日の理由も目的も全部」
「それが聞きたいことですか。いいでしょう。全て答えよう。俺の、あのときの意味を」
ニヤリと、不敵にクーリアは笑った。式人も、笑った。笑って二人は魔力を高め合った。吹き荒れていた魔力は納まり、今は全てクーリアの力となっている。
「全部の試合が長いようで短かった気がしますよ」
「それもそうね。互いに魔法を打ち合って決着が着いてるだけだものね。でも、それでいいんじゃない? これはエキシビションマッチ。互いに本気だけど短期決戦で終わらせようとしてたものね」
「まあそういうことにしておきましょうか」
そう言って二人は構える。式人は刀を、クーリアは杖を。互いに魔力を集中させる。
本音を言ってしまえば、クーリアは最初負けても構わないと思っていた。久しぶりに言葉を交わし、技をぶつけ合い、全てが防がれる。手も足も出ないような実力の差に懐かしさと憧れを抱きながら彼が変わっていないことを実感した。
これこそが我らのリーダー。これこそがリーダーたる力。そしてその力に憧れた。憧れたからついて行った。ついてこなくていと言われながらもついて行った。
けれどそのうち一緒にいるのが当たり前になってきて、受け入れられたのだと思った。仲間だと認められたのだと勝手に思っていた。だからあのとき、目の前で何かを言いながら離れていった式人に絶望した。私達は仲間と思われていなかったのだと。だから置いていかれたのだと思った。皆がそう思った。せめて理由くらいは説明して欲しいと、ついでにぶん殴ってやろうと決意して探し始めた。
けれど見つからなかった。そもそもクーリア達はリーダーの顔も名前も知らないし、どこに行ったのかも分からないという問題に直面したから。だから武闘会に希望を託した。Sランクの参加が義務付けられている武闘会になら必ず現れると。ルールを絶対に破ろうとしない人だったから、絶対来ると確信すらしていた。
そして現れた知らない青年に八つ当たりしようとして、思いとどまった。彼の立ち姿が何となくリーダーに似ていると思ったから。気のせいかもしれないけどなんとなく似ていると思った。けれど、彼が試合中に見せる技が、刀が、全部がリーダーに似ている気がしてならなかった。
それを確認するために勝ち上がった。普段出さない本気を出し、柄にもなく全力でSランクを叩き潰した。エルレアから聞いてから、或いは聞く前からそれは確信に変わっていた。彼こそがリーダーなのだと。そして試合前に賭けをした上で負けても構わないと、試合でボコボコにできれば満足だと矛盾したことを考えて、その実力差に呆れた。出す魔法全てが悉く防がれるどころか余裕で破られるのだから、もう笑うしかないだろうと。今まで追いつこうと必死に鍛えたものが無駄になった気がして。
けれど今ようやく追いつけそうだ。リミッターを解除しなければ追いつけない時点でまだまだ未熟だなと思いながらも、その身を迸る膨大な魔力を一点に集中させる。これで最後であって欲しいと願いながら暴虐の嵐を解き放つ。
「全てを呑み込め。『破壊の閃光』」
それを迎え撃つために式人はいつもの構えよりもさらに体を捻る。同時に『速度上昇』も発動して極限まで速度による斬れ味を意識した斬撃を放つ。
「第七の型『断閃』」
クーリアの杖から全てを破壊する光が、式人の刀から全てを斬り裂く斬撃が、舞台の中央でぶつかり合った。
舞台が爆発し、舞台を覆っていた結界が破壊される。その影響で爆風が観客や実況席を襲う。それでも、誰もが目を逸らさずに舞台を見つめる。
やがて、どさりと、何かが、否、誰かが倒れる音が響いた。
煙が晴れていく中で舞台上に立ち尽くしていたのは
――クーリア、ただ一人だけだった。
誰もが驚いた。Sランクですら目を見開いて舞台を見ている。当然だ。全員が式人が負けると思っていなかったのだから。舞台で立ち尽くすクーリアですら驚いている。そして当の式人は、全身のあちこちから血を流れ出して舞台に倒れていた。
『シキト!』
解説席にいるミーナがいち早く正気を取り戻して叫んだ。その声につられてようやく皆が正気を取り戻して慌てだした。そう。今は実際に式人は死にかけている。結界が破壊されたのだから、今は全ての怪我が無かったことにならない。故に今の式人は急いで治療しなければ危険な状態に陥っている。
『急いで彼を治療するんだ!』
ラナが指示を出して直ぐにリンティアが治療へと向かった。
「大治癒!」
みるみる治っていく式人の体。それにつれて式人は意識を取り戻した。そして直ぐに自分の現状を確認した後に空を見上げた。
「そうか。俺は、負けたのか」
「その通りよ。あなたは負けたわ。これで約束通り全てを教えてもらうわ」
「そうだな。だけどその前に」
『勝者! クーリア・フィトニーザム! よって優勝は、クーリア選手です!』
『『『『ウオオォォォォォォォォ‼‼‼』』』』
盛り上がっていく観客を尻目に見つつ式人は立ち上がりクーリアを見る。
「優勝おめでとう」
「・・・せめて名前くらい呼んでくれると嬉しかったわね」
「それはまた今度で。治療もありがとう」
「いえ、私にはこれくらいしかできませんから」
三人で語り合う内にSランクが続々と舞台へと降りて口々にクーリアへ言葉をかけていく。
『それでは今回の武闘会はこれで終わります! 皆様お疲れ様でした!』
会場にいる全ての人間から拍手を浴びながら武闘会は終了した。しかし、式人にとって、Sランクにとってまだ成すべきことが残っている。
「取り敢えず、場所を変えようか」
これから式人の理由と目的が語られる。あの日の全てが。
ぎりぎり間に合いました!・・・アウトですかね?まだ日が変わっていないからセーフな筈・・・!
1月は忙しいため更新が難しいかもしれないですが、気長にお待ちください、と思っても最後まで読んでるよっていう人がいるのか分からないんですよね。
それでは皆さん良いお年を。




