表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/52

招集の要請

ひとまず一段落着いたので投稿します。

 ギルドに戻ってきた式人達はギルドマスターの部屋にいた。


「さて、報酬を渡そうか」


「そういえば、まだ貰ってませんでしたね」


 この場合の報酬はバイトのことだ。アンナの命を救ったことについては報酬を貰おうなどと式人は考えていない。そしてラナも式人がそう考えているだろうと思って含めていない。それは不誠実な気がすると式人は考えているからだ。金が欲しいから命を救った訳ではなく、ただの自己満足で救ったのだ。そんなエゴに金を渡す必要はなく、命を救って金を貰うのはそれを生業としている者だけで十分だと考えている。というか報酬を貰うことが目的で最初にギルドに来たのだが、すっかり忘れていたらしい。

 ラナは机の引き出しから鈴の魔法具を取り出し、チリリン、と鳴らした。間もなくして扉がノックされてからウルカが入ってきた。


「ギルドマスター、お呼びですか?」


「シキト君にバイトの報酬を渡してやってくれ」


「かしこまりました。少々お待ちください」


 そう言って部屋を出ていったウルカはすぐに戻ってきた。その手にはトレイが抱えられており、上には銀貨と布袋が乗っている。


「お待たせいたしました。こちらが報酬となります。一日バイトのご依頼でしたので5万(アルカ)になります。ご確認ください」


「確かに貰いました」


 と言いつつ、式人は適当にサッと見て銀貨を布袋にしまった。ちゃんと銀貨が枚数揃っているか確認していないが、ギルドマスターの命令を反故にする意味は無く、そんなことをしたら即刻クビにされる為しないだろうと式人は思っている。


「それでは俺はこれで失礼します」


「どこに行くつもりだい?」


「いえ、今日やることは終わったので宿に戻ろうかと」


「まだ依頼は終わっていないよ?」


「それは断られた筈ですが」


「それは本心からかい? ミーナ」


「・・・それは」


「もしミーナが彼に教わりたいなら私はもう一度依頼を出そう。けれど、どうしても教わりたくないと言うのなら仕方がない。別の人に教えてもらうか、或いは受付嬢になることを諦めるか、どちらかになるだろう。君はどうしたい?」


「あたしは・・・」


 それは子供にはまだ早い選択だ。今この瞬間に決めたことが将来に直接影響を及ぼす。そんな選択はまだ子供であるミーナには早すぎることだった。彼女はまだ子供なのだ。そんな彼女にそのような選択肢を与えることは、あまりにも酷というものだろう。だが彼女は式人に教わることはないと言ってしまったのだ。そしてそれは、それだけは言ってはいけなかった。

 この街において式人以上に教えることが出来る者など存在しない。つまり、ミーナは絶好の機会を逃したのだ。未来への近道は存在しないと言われるが、式人に教わることは確実に近道だった。それこそ子供でも即戦力になれる程に。


「あたしは・・・教えて欲しい・・・です」


 ミーナが選んだのは式人に教わることだった。


「シキト君。私からも頼む。もう一度依頼を受けてくれないだろうか。期間は君の好きなようにしていい。勿論報酬も出す。どうだろうか」


「・・・はあ。分かりました。その依頼受けましょう。一週間でいいですか?」


「ああ、構わない。ありがとう」


「ありがとう、ございます」


 最初に会った頃と比べてすっかり大人しくなったミーナはまるで借りてきた猫のようだ。だが、彼女はまだ子供なのだ。大人しいのも今だけで、明日になれば元気になるだろうと式人は予想している。


「それでは失礼します」


「ああ、引き止めて悪かったね。今日はありがとう」


 ラナのお礼を背に式人は今度こそ部屋を出た。そのまま真っ直ぐ宿に帰った式人は延泊の手続きをして、追加料金を払ってから即刻寝ることにした。明日もどうやら忙しくなるようだと、今から疲れた気分になりそうだった。






 夜、ギルドマスターの部屋でラナは一枚の書類を見ていた。それは式人がギルドマスターの部屋に来たときにも見ていたものだった。書類に書いてあることはただの招集だ。だが、よく読めば内容の異常さにすぐに気が付くだろう。それは――


()()()()()()()()()()・・・か。またこの時期がやって来たのか」


 そう。そこに記されていたのは、Sランク冒険者の招集。それは数年に一度開かれるイベント、Sランク冒険者によるエキシビジョンマッチ――通称、武闘会の予告だった。その日、開催場所には普段行方不明であるSランク冒険者達が一同に集う。何故彼らは普段行方不明でも大して問題にならないのか。その理由がこの武闘会だ。Sランク冒険者は武闘会への出場が義務付けられている。

 この知らせは全ての国、全ての街の冒険者ギルドに告げられる。そして開催場所から遠い街程早く知らせが届く。それはSランク冒険者に開催を知らせるためだ。だからこそ毎回、武闘会にはSランク冒険者が全員集まることができている。


「果たして、シキト君にどう伝えるかな」


 式人はSランク冒険者である。故に武闘会に出場する義務があるのだが――


「しかし、彼は()()()()()()()()()()・・・?」


 いや、出ている筈だとラナは頭を振る。Sランク冒険者は毎回全員集まっている。だが――


(彼の黒髪に青いコートは出ていたら印象深い筈だが・・・いや、()()! 彼の武器と同じ物を持ったSランク冒険者が一人、いたはずだ! 青ではなく、黒のコートを着てフードで顔を隠した冒険者が!)


 ラナは気付いた。否、()()()()()()()()。彼の、式人の正体に。


(だが、彼は()()()()()()()()()()()()だった筈だ。彼の仲間の全員が今でも彼を探していると聞く。何故こんな所にいる? いや、違う! それ以前に()()()()()()()()()?!)


 考えているうちに、今の式人の異常さに気づいていく。Sランク冒険者である式人が何故誰にも気づかれないのか。そもそも式人は普通のSランク冒険者ではない。Sランクの時点で普通では無いが、それよりも一線を画している。何せ災厄の象徴たるドラゴンを討伐したパーティのリーダーなのだ。もっと知られていて然るべきだ。


(もしかすると普段から黒のコートを着てフードで顔を隠していたから、今の青のコートでは誰も気づかないのか? いや、それなら名前はどうする? 彼の名前は変わっていない筈だ。まさか魔法具? だとしたら、何故?)


 ラナは椅子から立ち上がり窓から月を見上げる。


「シキト君。君は一体何がしたいんだい?」


 一人呟き、ラナは少しばかりの()()を覚えた。

次も更新がいつになるか分かりませんが、気長にお待ちいただけたらなと思います。


ユニークが1000を超えました。これもひとえに読んでくれてる皆様のおかげです。これからも拙作『失踪冒険者の放浪旅』をよろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ