アルザスのギルド
次の日に式人はギルドに向かうことにした。二つ隣なので迷うことなく中に入った。式人が中に入ると、騒がしかったギルド内が一瞬静かになり直ぐに興味を失くしたのかまた騒ぎ始めた。一部の冒険者は興味深そうに式人を見てくるが、特に用は無さそうなので式人は気にせず受付に向かった。
「こんにちは。見ない顔ですね。この街は初めてですか?」
「ええ、こんにちは。昨日この街に入ったばかりですね」
「そうでしたか。今日は一体どのようなご要件でしょうか?」
「どんな依頼があるのかの確認ですね。ついでに何個か受けようかなと」
「いい心掛けですね。分かりました。一つ依頼を紹介しましょう。雑用系の依頼ですがよろしいですか?」
「受けられるなら何でも」
「それなら、こちらの依頼を。内容はアルバイトです。このギルドを出て右に行くとパン屋がありますので、そこで今日一日臨時として売り子を手伝って欲しいとのことです。何でもぎっくり腰をやらかしたとか」
「それをやります。何時からでしょうか?」
「今から行っていただいても構いません。午後の三時を目安に終わらせるとのことです。それではギルドカードを出して頂けますか?」
「どうぞ」
「はい、ギルドカードをおあ・・・ず・・・・・・かり?」
しばらく受付の女性は固まった。式人は首を傾げてから、「あ!」と気付き止めようとしたのだが時すでに遅く。
「え、Sランク・・・!」
エリエスの街の二の舞を踏んでしまったのだ。結果、ギルド内は一瞬静かになると、
「「「「「ええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」」」」」
と大騒ぎになってしまった。Sランク冒険者に雑用系の依頼を紹介した受付嬢は既にパニックらしく、あたふたしている。どうも治まりそうにないと思った式人は、「コツ」と踵を鳴らした。それだけでギルドは水を打ったように静かになった。
「すいません、依頼に行かなくてはいけないのでカードを返してもらえます?」
「は、はははは、はい!」
「ありがとうございます。では」
そう言って式人は踵を返し入り口に向かった。が、そこに思わぬ邪魔が入る。
「こんななよなよした奴がSランクだと? 笑わせてくれるぜ! なぁお前ら!」
「「「ギャハハハハハハハ!!!!!!」」」
変に小物感を出すもみあげの男がニヤニヤしながら式人の前に立って前を塞いだのだ。オマケに取り巻きも式人を囲んでいる。周りの冒険者も静かにその成り行きを見ている。ただ、受付嬢は「ギルド内での戦闘は禁止です!」と止めようとしているが彼らには届かず、寧ろ式人に「問題ありません」とまで言われる始末だ。それが気に障ったのか、
「おいおい。何が問題ありませんだ! どうせ偽物のカードなんだろ? 俺達が回収してやるよ!」
と怒鳴ってきた。カードの偽造は重罪だ。冒険者ランクを剥奪され、ギルドを追い出される。そのためカードの偽造は禁止されているが、それと同じようにギルド内での戦闘は禁止されている。だが、もしカードが偽造されていると気付き回収するという名目があるならば、罪にはならず許されるのだ。
しかしだ。もしカードが本物だったのならその罰則はかなり重くなる。当然だ。ギルド内で戦闘した挙句濡れ衣まで着せたのだ。全ての冒険者ギルドから追放される。この罰則は重いと言われることもあるが、こうでもしないとしょっちゅうカードの回収という大義名分の元にギルド内で戦闘が起きてしまうのだ。
「やれやれ。人を舐めるのはいいが相手の実力は感じ取れるようになろうな」
「「「「「「え?」」」」」」
気づけば式人は絡んできた男の真後ろに立っていた。ギルドの全員が驚いた声を出した。今の式人の動きに誰も付いてこれなかったのだ。
「それでは依頼に行ってきます」
最後の言葉は受付嬢に向けられたものだったが、男達にも向けられていた。見逃してやるから感謝しろ、と。そう言って式人はギルドを出た。
「これが、Sランク冒険者の実力の一端か・・・」
誰かが呟いた言葉にギルド内は騒然となる。見事に躱された男達は顔を真っ赤にするかと思いきや、疲れた表情で式人の受付をした受付嬢とは別の受付嬢を見る。
「これで良かったっすか?」
「え、ええ。そうですね。ありがとうございました」
「本当に勘弁して欲しいですよ。後で謝ってくださいよ」
「それはもちろん謝ります」
彼らの話からどうやらやらせだったようで、式人が絡まれたときにどのように乗り越えるのか試していたのだ。誰も予想のしない方法で回避した式人は見事にSランク冒険者と認められてしまった。そのことはまだ式人は知らないが、帰ってきたらすぐに思い知るだろう。倒さなくて良かったと。
すいません。昨日は作者が忙しくて書けませんでした。




