新たな街
短いです。
ファンの村から去って、取り敢えず式人はファンの村を東にひたすら進むことにしてから早二日。未だに式人は別の街にたどり着いていなかった。本人はこれも放浪の醍醐味と言って気にしてないが、傍から見るとただの迷子である。
「フンフンフンフフン〜」
適当に鼻歌を口ずさみながら道を進むこと約二時間、ようやく街のようなものが見えてきた。
「お、今度はどこの街だ?」
取り敢えず式人は街に入ることにした。街に入る際には門番がいる。門番は街の平穏を守るために犯罪者が入ってこないよう徹底的に言い聞かせられている。如何にも真面目な顔でどんな犯罪者も通さないという雰囲気を出している門番のところに式人は近づいていく。
「街に入りたいんですけど」
「それじゃあ、身分を証明出来るものを出してくれ。」
「これでいいですか?」
「・・・! あなたは・・・。いえ、失礼しました。問題ありません。どうぞお通り下さい」
「ありがとうございます。聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」
「自分で答えられることならば」
「それじゃ、ギルドの場所とオススメの宿屋を教えてください」
「ギルドはこの門を通って真っ直ぐ行くと大きい建物が見えてきますので、そちらになります。宿屋はギルドの二つほど右にある『安らぎ亭』がオススメになりますね」
「ありがとうございます。では」
「ええ、ようこそアルザスの街へ」
真面目な門番のおかげで自分のことが広まらずに済んで若干満足そうな式人はまず真っ先に宿屋へ向かった。
「すいません、部屋空いてますか?」
「おや、いらっしゃい。部屋なら空いてるよ。何泊する予定だい?」
結構な大男が出てきたので驚きはしたが、部屋は空いているようなのでそのまま泊まることにした。
「そうですね・・・。取り敢えず一週間で」
「一週間だと2100Aってとこだな」
「意外と安いですね」
「おうよ。うちは安くて高水準がモットーなんでな。ちょうど2100Aお預かりっと。ちなみにその前に引き払うなら金は返すぜ。延泊するときは最終日の前日までに言ってくれ」
「分かりました」
「んじゃこれ、部屋の鍵な。2階の一番奥の部屋だ」
「お世話になります」
「おう。飯は今日の夜から出るが時間は決まってねえ。けど、あんまり遅すぎると出せねえからな。そこら辺注意しとけよ」
「ありがとうございます」
早速部屋に入った式人は意外に広いことに驚いた。大体8畳程ある。一人で使うには少々広い。
「広いな。まあ、たまにはこんな部屋もいいか」
前向きに思うことで気にしないことにした式人はギルドに行くのは明日にしようと思い、今日は休むことにした。
Sランク冒険者である式人に依頼をこなす義務は発生しない。基本的に所在不明な彼らに普通の依頼など出しようもないからだ。しかし、式人は普通の依頼も受けることにしている。理由はいくつかあるが、最大の理由としては何をすればいいのか分からないからである。冒険者になってからずっと依頼を受け続け、一切の自由を謳歌せず切り捨ててきた式人はいざ自由になったとき何をすればいいのか分からなかったのだ。仲間と別れるもっと前から、この世界に来る前から自由などなかった彼は取り敢えず旅に出ることにした。それが今放浪している理由である。
「今日はもう疲れたから寝るか」
そう言って彼はそのまま寝ることにした。夕食は当然食わずに寝過ごした。




