森の中で
エリエスの街を出てウルス大森林に入った式人はもうすぐ出口だというところで、ものすごく困っていた。そんな式人の目の前には小さな少女がものすごい涙目をしながら式人を見上げている。一体何があればこんなことになるのか。話は数分前に遡る。
ウルス大森林を真っ直ぐ進み続けていた式人は非常に喉が乾いていた。何故か『収納袋』の中に水が入っておらず、水源を探していたのだ。しかし、これが中々見つからず諦めて森を抜けようとしたその時、
ガサリッ!
と音がした。敵意は感じられなかったので、恐らく魔物ではないと判断した式人は取り敢えず音源に向かって進むことにした。そこには小さな少女が居た。というか倒れてた。何故倒れてるか分からないが取り敢えず保護しようと手を伸ばしたら、少女が目を覚ました。少女は焦っただろう。起きたら知らない男が自分に手を伸ばしているのだから。咄嗟に離れようとしたが後ろには木しかないため、すぐに詰まってしまう。悲鳴を上げることもできず、少女はこの後の展開を予想して涙目で式人を見上げた。
そして今にいたる。
「えーと、俺は怪しいやつじゃないんだけど・・・」
一先ず式人は誤解を解くことにしたのだろう。ものすごく怪しいが。案の定少女は涙目で首をふるふると横に振り後ずさろうとしている。もはや式人が泣きそうだ。
「取り敢えず、俺は式人。冒険者だ。それで、君の名前は?」
「・・・」
少女は首をふるふると横に降っている。というかもう泣きそうだ。その反応に式人は慌てて、
「ほ、ほら! これ見て、これ! 冒険者カード! これでちゃんと身分が証明されたんじゃない!?」
「・・・」
するとようやく少女は近づいてきてカードをまじまじと見つめた。
「それじゃ、改めて俺は式人。君は?」
「・・・・・・ルナ」
「そうか、月か。いい名前だ。」
確かにその容姿は整っており、腰まで届きそうな長い銀の髪はまるで月の精のようだと式人は感じた。
名前を褒められたからか、少女――ルナの警戒心はほとんどなくなり式人にかなり近づいて来た。
「ところで、ルナはどうしてここに?」
「・・・私たちの村の食べ物が無くなりそうだから、私が何か食べられる物を探しに来たの。そしたらお腹が空いちゃって倒れちゃったの」
空腹を思い出したのかルナのお腹からものすごい音が響いてきた。思わず式人は笑ってしまったが式人も喉が乾いていたのを思い出した。
「取り敢えず、ここら辺に水源ない?」
「それなら、私たちの村に来る? 水くらいなら多分出せるから」
「いいのか?」
「だってお兄ちゃん、ぼうけんしゃさんなんでしょ? だったらパパがぼうけんしゃでいい人そうだったら連れて来ていいって言ってたから」
「だったらお言葉に甘えて。ルナ、君の村に案内してくれる?」
「うん!」
頼られたのが嬉しかったのか笑顔でルナは頷いた。そこにはさっきまでの泣き顔はもうなかった。式人はルナにお兄ちゃんと呼ばれたことで地味に嬉しい反面、そして若干の寂しさを覚えていた。
ちなみに余談だが、
「ところでルナは何歳だ?」
「10歳だよ?」
「え!? 年の割には小さいな」
「小さくないもん!! これから大きくなるもん!! 毎日揉んでるもん!!」
「え?」
「え?」
「「・・・・・・・・・」」
「お兄ちゃんの、バカァァァ!」
という会話が村に行く途中に合ったとか。