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スタンピード

今回は凄く短いです。とても戦闘しているとは思えません。

 式人は最初にとにかく数を減らすことに尽力した。とにかく数を減らさないことにはスタンピードの『核』である長は探しようがないのだ。


「第一の型『空閃』」


 式人が抜刀する度に目には見えない空気の斬撃が飛んでいき、敵を切り刻み、納刀する。先程からずっと繰り返している光景だ。だが、一々納刀しなければ『空閃』は使えないため隙が非常に大きい。それに加え『空閃』は斬撃を飛ばしているため、どうしても端の方の魔物は斬れずに残ってしまい、段々と式人と魔物の差が縮み始めた。「チッ!」と式人は舌打ちをすると戦法を変えることにした。線の攻撃が効かないならば面の攻撃、即ち魔法だ。


「『津波(タイダルウェーブ)』」


 式人は水が無い場所で自分の魔力を使い、放出した魔力を全て水に変えて津波を起こした。そして連続でもう一つ魔法を起こした。


「『溶岩(ラーヴァ)』」


 津波と溶岩が同時に魔物に迫る。それだけで魔物は消えていくが、式人の狙いはそこではない。それは多量の水と高温の熱源が接触することで引き起こされる現象。つまり、水蒸気爆発だ。


 ドドォォォーーーーーーーーーーーン!!!!!!


 その爆発でほとんどの魔物が吹っ飛んでいき、消えていったがそれでも九万程の魔物が残っている。


「まだ残ってんのか・・・街との距離がある内にケリを付けたいな」


 そう言って式人は『浮遊(フライ)』で浮かび上がり、魔物の上空へ移動した。全ての魔物が森から出てきているのならば長を探せるのではないかと考えた。

 しかし、そこに魔物が飛んできた。嘴が鋭く尖り羽も金属のように硬い魔物、メタルウィングバードだ。この魔物もスタンピードにつられて街を攻めてきたのだろう。

 式人はメタルウィングバードからの攻撃を避けながらスタンピードの『核』の長を探さなければならなくなったが、その度に邪魔が入るので中々見つからない。鬱陶しく思った式人は魔法を使ってメタルウィングバードを落とすことにした。


「ああもう、邪魔だ!『閃光(スパーク)』!」


 突然光に打たれたメタルウィングバードはそのまま落ちていった。


「ここからなら攻撃しながら探せるか。『落雷(サンダーボルト)』」


 式人が魔法名を唱えた瞬間空から幾つもの雷が降ってきては魔物に直撃し、その数を減らしていく。雷が降り始めてから十秒後、突然式人は魔法を止めた。


「ダメだ。先頭が街に近づいてやがる」


 式人は地面に降り立ち魔法を発動した。


「『土壁(ウォール)』」


 その魔法で式人は壁を魔力に物言わせて、かなりの厚さで魔物の両端から自分側に斜めに作り上げた。丁度自分が逆三角形の頂点に立つようにして、魔物を誘導することにしたようだ。

 そしてそれは上手くいったようで、魔物は密集し上手く進めないようになった。そこを式人は収めていた刀を一気に振り抜く。


「『空閃』!」


 密集していたおかげで大量の魔物が斬られては消えていった。しかも斬撃は放射状に進んだので、壁には一切傷が付いていない。そして式人は容赦なく斬撃を放ち続ける。だが、それでも魔物の数は減らない。


「はぁ、はぁ・・・まだか・・・はぁ、後どれくらいだ?」


 何度も振り抜き続けたからか式人の腕は段々と限界が近づいてきた。だが、その甲斐あってか式人と魔物との間に若干の距離が開いている。魔物の残りは後四万程だろう。


「『核』さえ倒せば終わりなんだが・・・」


 だが、中々見つからない。


「いっその事ここを塞いで上から探すか? いや、また鳥が飛んでくるか・・・だからと言って溶岩を流し込んでも魔力が持つか分からんしな・・・よし、石を落とすか」


 どうやら全ての魔物の上に岩を落とすことに決めたようで、そのための準備を始めた。


「まずは全ての魔物を中に入れなきゃだな」


 まず式人は壁の上に登り、自分の立っていた場所を壁で塞いで左右の壁をくっ付けた。


「後は入るのを待つだけだな」


 全ての魔物が入るように溢れた魔物は斬り捨てながら壁の上から全体を見渡す。先頭の魔物は壁にぶつかって壊そうとしているが、かなりの厚さで壁を作っているので中々壊れない。そして――


「よし。全部入ったな。そんじゃ『落石(フォールンロックス)』」


 大量の石を作り出し上から落とした。かなりの魔物が潰れて魔石に変わる。式人が魔法を解くと土の壁と石が全て消えた。


「おいおい、まだ生きてんのか」


 それは『核』だった。たった一匹の魔物がそこにいた。全身が黒い靄で覆われているため分かりづらいが、そのシルエットは巨大な狼のようだった。


「そのしぶとさは評価するが、俺はお前のせいでこの街を出なきゃいけなくなった。だから、ここで消えろ」


 ここまでのことをしでかしたのだ。当然目立つと予想した式人は、街を出ることにした。一ヶ月はいた街だ。当然愛着も湧く。それらの思いを八つ当たり気味にぶつけるため、『核』へ思い切り刀を振り抜いた。狼は悲鳴を上げることなく消滅し、魔石を落とした。『核』となっていた魔物が消失し、これ以上魔物が増えることは無くなった。

 ここにスタンピードは終結した。式人は『核』の魔石だけを回収すると遠くに見えるエリエスの街を一瞥してからウルス大森林の方に向かった。

 こうして冒険者の手によって歴史上初のスタンピードから街を守り抜いたエリエスの街はその後、人が増えていくことで大きな街となっていくが、そこには式人の姿は無く、彼はまたもや失踪した。

追記 : 実際に津波と溶岩はぶつかっても水蒸気爆発しません。溶岩が固まるだけです。作中で式人は魔力で発生させた津波と溶岩をぶつけることで魔力により擬似的に水蒸気爆発を起こしたと考えて下さい。惑わせてしまい申し訳ございません。


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