プロローグ
それは、破壊と暴力を具現化したようなものだった。それが吐く息は街を焼き、それが羽ばたくだけで大地はめくれ上がる。人々はそれを《災厄の象徴》と呼んだ。
別に一体だけなら人々はそこまで恐怖しなかっただろう。しかし、それが五体も確認されたならば話は別だった。人々は恐怖に耐えられそうになかった。
一一一ある冒険者チームが《災厄の象徴》の一体を討伐するまでは。
ある島で一体のドラゴンが沈んだ。五十メートルはあるのではないかと思う程巨大な赤いドラゴンだ。
「やった。倒したぞ!」
「遂に、倒すことが出来たのね・・・!」
「これで世界が平和に一歩近づくことが出来たわけだ」
「ああ、やっとだ。長かったな。そう思わないかリーダー?」
「・・・」
「どうしました? リーダー」
5人の男女がリーダーと呼ばれた1人の男に近づいていく。その男はドラゴンの返り血で真っ赤だった。彼が着ている黒いコートが一部の隙もないくらいに赤に染まってしまっている。
「・・・いや、少しな。帰るか。リン、転移を頼む」
「もう準備は出来てますよ」
リンと呼ばれた少女はそう言った。
「皆さん、私の近くに来てください。転移します」
そして、転移する直前になって
「皆、ごめんな」
唐突に謝ったリーダーに皆は困惑した。もう転移は始まってしまっている。
「ここでお別れだ」
と言い出した。当然皆は止めようとしたが転移の影響で声は既に彼には届かない。
「俺はもうお前らの強さについていくことが出来ないみたいだ。だからここでお別れだ」
当然彼のその言葉も彼らには届かない。そして彼らは転移した。仲間達がもう一度転移して来た時にはもう彼の姿はなかった。
そうして最強と呼ばれた冒険者チームのリーダーは失踪した。
初めまして。読んでいただき幸いです。これは完全に趣味なので頑張って更新出来たらいいなと思ってます。