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ゆるキャラはじめました  作者: 山下ひよ
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【おまけ そのさん】田中目線

本編から五年後のお話です。

皆さん、田中のこと覚えてます…?


 俺の名前は田中郁也。

 現在二十八歳、独身。営業の仕事をしている。

 そして今年も、俺は同窓会の幹事だ。



 同級生の間では、結婚して子どもも出来た奴が少しずつ増えてくる。その度に独身組は肩身が狭くなってくる。「全然気にしてないぜ!」みたいな奴も中にはいるが、俺は違う。


 彼女ほしい! 

 結婚だってしたい!

 この前、一年付き合った彼女からフラれた。「いい人なんだけど、結婚とかは考えられない」だって。酷い!

 

 同窓会で嫁や夫の愚痴とか、俺も言いたい。

 若い頃はそんなに結婚願望はなかったんだけど、「ああ、いいなあ」と思ったきっかけは、親友の結婚だった。


 岬隼人。

 奥さんも同級生だ。だけど、どう転んでも結婚なんかしそうにない二人だったから、突然の展開にクラスメイト全員がざわめいた。

 毎年、同窓会に来るのは隼人だけだ。嫁は来ない。「今年は来るよ」と隼人は毎回言うのだが、いつも結局来ない。

 今年は連れて来るだろうか。



「あっ岬くんだ!」


 クラスメイトの女子の声に振り向くと、隼人が軽く手を上げて俺の方に来た。隼人が来ると他の女子たちも集まってくる。相変わらずのイケメンぶりだ。こいつ年取らねぇな。


「わり、遅くなった」

「ホント遅いわ。てかやっぱり今年も一人かよ!」


 隼人の後ろには誰もいない。やはり嫁、吉川さんは来ないようだ。

 まあ仕方ないか。クラスに仲の良い人いなかったしな。その原因は隼人だけどな!


「いや、来る予定だったんだぞ? 子どもらもお義母さんが預かってくれるはずだったし」

「じゃあ何だよ。…まさかお前、今年もあの理由じゃないだろうな?」

「つわり」

「またかよ!」


 思わずテーブルを叩いた。ビールジョッキが揺れる。


「吉川さん、毎年つわりか臨月か産褥期じゃねえか! 何人産ませる気だよ!」

「えー、岬くんとこ、またおめでたなの?」

「すごーい! 何人目? 六人目?」

「勝手に増やすな。四人目だよ」

「十分多いわ!」


 隼人は俺を心配そうに見やる。くそ、そんな気遣いすら腹立つ!


「ぼこぼこ子ども作りやがって、何を少子化問題に貢献してるんだよ!」

「いいことじゃねぇか」

「うるさい腹立つ! サッカーチームでも作る気か!」

「親が入ってもいいなら作れないこともないなってこの前嫁と話した」


 のろけやがった!


「岬くんとこ、仲良いよね! 結婚って聞いたときはびっくりしたけど」

「大体、結婚してから報告すんじゃねえよ! 俺は親友なのに!」

「なぁ、田中のやつ、何かあったの? 荒れてるけど」


 隼人の言葉に女子が答える。


「振られたんだって」

「言うなー!!」


 わっと机に突っ伏すと、隼人は俺の背中をぽんぽん叩いた。


「お前いい奴なのになぁ」

「振られたときと同じ台詞を言うなー!」

「もう何言ってもダメじゃん。田中ウケる」


 昨年結婚した女子にウケるって言われた! 傷つくわ!


「ねえ、吉川さんって結構小柄だったよね? 出産とか大変じゃないの?」

「あ、私も気になってた! 私は安産型って言われたのに陣痛ヤバかったもん」


 女子たちが盛り上がり始めた。独身男が加わりにくい話をするな!

 でも隼人は普通に答える。


「ああ、一人目は大変だったかな。三十時間かかって何度か意識飛んでた」

「うわぁ、あれが三十時間とかヤバイ」 


 出産経験のある女子たちは心底無理という顔をしている。


「でも二人目以降は毎回二時間くらいで生まれてるな。三人目の時なんか「陣痛始まったんで産んできます。夕飯は冷蔵庫にいれてますからね」って電話してきたくらいの余裕だったぞ」

「ええ! すごいねそれ」

「吉川さんカッコいい!」


 盛り上がってる。俺も会話に入りたい。


「で、でも子ども生むと体型変わるとか言うじゃん。吉川さん大丈夫なの」


 無理矢理入った。だって俺も構ってほしい。

 うちの母親が言っていた。「あんたを生んだあとからめっちゃ太った」と。


「そうそう、ホントに体型変わるよね」

「私も十キロ増えたもん」


 盛り上がってきた! 母ちゃんありがとう!


「いや、あんまり変わってないな」

「うっそ! ねえねえ、今の写真とかないの」


 女は本当に押しが強い。でも俺も見たい。吉川さんとは、二人が結婚する前の同窓会で会ったきりだ。しかも吉川さんはあっという間に帰ってしまった。

 隼人がスマホを出した。


「最近の写真なら、ええと、…あ、これだ」


 皆で覗き込んだら、画面には某テーマパークの有名キャラクターを囲んで、笑顔を浮かべている家族の写真。

 真ん中にキャラクター。左に二歳くらいの男の子を抱いた隼人。キャラクターの前に、ツインテールの四歳くらいの女の子が満面の笑みでピースしている。そして右側には赤ちゃんを抱いた吉川さん。

 えっ、吉川さん!? 顔面凶器どこ行った。ほっそりした小柄な女性が、優しい笑顔で赤ちゃんを抱っこしている。


「うそ、これ吉川さん!?」

「ほっそ! 美人! どうなってんの」

「隼人なんか爆発しちまえ!」

「てめえ田中! 変な悪態つくんじゃねえよ!」


 とうとう隼人にも怒られた。


「だって何だよ、このいかにもな幸せ家族写真は! 親友がこんなに寂しい思いをしてるのに!」

「うっわ…。お前今日マジで面倒くさいわ」


 隼人が酷い!


「…もういいんだ。俺は独身のまま孤独死するんだ…」

「お前どんだけ飲んだんだよ。すいませーん。水ください」

「はい喜んでー!」


 店長の元気な声がする。面倒くさいと言いながらも、隼人は結局いつも俺を気にかけてくれる。


「まあ元気出せよ。今度うち遊びに来い。ひまりのつわりが落ち着いたら、お前のためにごちそうでも作ってもらうから」

「隼人…!」


 優しい俺の親友。


「えー! 私らも行きたい!」

「お前らはダメ」


 隼人がスパッと断った。女子たちが文句を言っている。

 俺だけ特別なんだな。そうなんだな隼人!


「じゃあお前のとこの長女の桃ちゃん、将来嫁にちょうだい」

「絶対ヤダ」


 そこは本気で断られました。




 岬家に遊びに行った田中が、同じく岬家にお邪魔していた川島優花という女の子と出会うのは、それから少しあとの話。



ちなみにこのあと生まれるのは双子の女の子です。

大家族ですね!笑

田中には幸せになってもらいたいものです。


ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!

次回作もよろしくお願いしますm(_ _)m

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