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ゆるキャラはじめました  作者: 山下ひよ
18/27

【じゅうはち】初飲み会です

今回は天堂カメラ広報の飲み会をお届けします。

仲の良い職場っていいですね!


『ごめん急用できた。今日は行けない』


 そんなメッセージが届いたのは、約束した時間の直前でした。

 急用? さっきまでカメ子と田島さんと過ごしてましたよね?

 急な仕事でも入ったんでしょうか。スポーツクラブって大変そうですもんね!


『わかりました。大丈夫です』


 残念な気持ちが半分、そして…、ほっとしたのが半分。

 この前母に言われたことで、岬くんを意識してしまっています。またぎこちなくなるのは嫌ですし、だからといって気持ちの整理がついていないのに下手に会えば、不器用な私はおかしな態度を取るに決まっているのです。

 正直な気持ち、急用でちょっと助かりましたよ!


 じゃあ家に帰ってゆるキャラコンテストの予習でもしようかな。

 藤井さんにもらった茶封筒を抱え直し、歩き出そうとしたら、後ろから谷さんが声をかけてきた。


「ひまりちゃん、お疲れ様」

「あ、お疲れ様です! 今日は直帰ですか」

「ええ。カメ子は今田島さんが車で社に戻してくれてるから。ひまりちゃんはデートなんでしょ?」

「ええええ!? な、何でですか!!」

「部長が言ってたわ」


 お母さーん! 個人情報ですよ!!


「ちちち違います! デートじゃないし、たった今その予定なくなりましたから!」

「あら、そうなの」


 何で残念そうなんですか。


「じゃあ、ひまりちゃんも来る? 今から皆でご飯食べるんだけど」

「えっ、いいんですか?」


 職場を転々としましたが、職場の人に誘われたのは初めてです!

 嬉しい!



 初めての職場の方とのご飯は、居酒屋の個室でした。それも若い世代が行くような安いところではなく、何だかおしゃれな大人の居酒屋です! すごいですね! 母はいつもこんなところで飲み会をしてるんですか。

 谷さんと私が一番でした。その後、藤井さんと田島さんが合流し、最後に社に戻って仕事を片付けていたらしい母がやって来ました。


「あら、ひまり! フラれたの?」

「だからそんなんじゃないですよ! 向こうに急用ができたんです!」

「あら残念。早くイケメンの息子がほしいわぁ」


 くっ。事あるごとに私に圧力をかけてきますね! ですが、そう簡単には行きませんよ! 何しろあなたの娘は顔面凶器ですからね!


「ひまりちゃんの彼氏って、イケメンなの?」

「あら。いいわねぇ」


 藤井さんと谷さんは早くもビールを三杯空けてます。ペース早くありませんか?


「だから彼氏じゃないですよ! ちょっと一緒に出掛けたりするだけです!」

「それデートじゃん」

「デートよねぇ」

「ほら、デートよ」

「デートだねぇ」


 全員に言われました! ものすごいアウェイ感!

 だから違います!


「ねぇひまりちゃん」

「…何ですか田島さん」


 田島さんは車だからお酒は飲んでいません。ですが、飲まなくても酔えそうなタイプとお見受けします。


「その人って、この前一緒にフラワーパーク行った?」

「ぶふ!?」


 飲んでいたウーロン茶を吹きました。痛い! 鼻に入った!


「え、フラワーパークってこの前岬くんも行ってたよね?」


 藤井さん、言わなくていいですよ!


「やっぱりそうかー。いや、お似合いだと思うよ、岬くんとひまりちゃん」


 ひいい!? 田島さん、何で分かったんですか!

 しかも確信してらっしゃる!


「田島さんもそう思います?」

「思う思う、明美ちゃん。いやー、イケメンの息子が出来るかも知れないなんて羨ましいね」


 明美ちゃんこと私の母はご満悦です。ちょっと、私まだ何一つ認めてないですからね!?


「え、ちょっとどういうこと? ひまりちゃんの彼氏って岬くんなの?」


 だから彼氏じゃないですって!


「彼氏とはどういう出会い? まさかカメ子きっかけ?」


 だーかーらー! …もういいや。


「いえ…。同級生です。同窓会で五年ぶりに会いました。カメ子のことは向こうは知らないので、全くの偶然です」


 一気に言いました。もうこれでカンベンしてください!


「へえー! 偶然なんて、運命的!」


 藤井さん、そんなんじゃないですからね!


「若いっていいわねぇ」


 谷さん、それ六杯目ですよね。意外とお強いですね!


「それより田島さん、何で分かったんですか。母から聞いたんですか?」

「あら、私は何も言ってないわよ?」


 デートだとか言いふらしてたじゃないですか! 信用なりません。

 田島さんはにこにこと笑っています。


「いや今日ね、岬くんにフラワーパークの写真を見せてもらってたら、ひまりちゃんが写り込んでるのがあって、ピンと来たね!」


 えっ、いつ写り込んだんだろう? 基本的に横並びで同じ景色を撮ってたのに、私ったらどこかで岬くんの撮影の邪魔になっていたようです。反省!


「それは岬くんに悪いことをしましたね…」


 その場が何となく静まり返りました。あれ、私おかしなこと言いました?


「ひまりちゃん、それ素で言ってる?」

「? はい。だってせっかくのキレイな景色に顔面凶器が写り込むとかがっかりじゃないですか」


 すると大人四人は何やらヒソヒソと話し始めました。


「ちょっと部長。お宅のお嬢さん大丈夫ですか? 情操教育どうなってるんですか」

「私が聞きたいわよ。どうしてこう鈍感になっちゃったのかしら」

「しかもちょっと被害妄想もありませんか? 顔面凶器て」

「ちょっと笑うのがぎこちないだけで、美人だしモテそうなのにねぇ」

「あの自意識の低さのせいでチャンスをことごとく棒に振るタイプなのよ」

「岬くんは気があるのバレバレなのにねぇ。気づかないのはむしろすごいよね」

「困ったわねぇ…」


 何やら話した後、一斉にこちらを見て同時にため息をつかれました。息ぴったりですね! だけど若干傷つきますね!

 母が私の肩に手を置きます。


「ひまり。あなたもっと頑張りなさい」

「…私はいつも頑張ってますよ?」


 仕事だって手を抜いたことはありません。私の自慢です!


「違う!」


 ひぃ! 母が怖い!


「岬くんとのことを頑張りなさいって言ってるの。この機会逃したら、一生チャンスはないわよ!」


 チャンスって、五年前のわだかまりをなくすチャンスということでしょうか? 母は詳しく知らないはずなのに、やっぱりすごいですね。

 後ろで谷さんたちが何やら言っています。


「確かにこのままじゃ、一生恋愛できないわね」

「岬くん優良物件だよね」


 よく聞こえませんが、きっと私のことを心配してくれているのですね。優しい人たちです。

 私も岬くんとちゃんと仲直りしたいです。

 自分の気持ち云々は置いといて、今度はちゃんと話がしたいと思います。


「分かりました! 頑張ります!」

「よく言ったわ! さあ飲みなさい!」


 えっ、私お酒はあんまり強くないんですが。

 でも渡されたカクテルはジュースみたいで美味しそう。少し位なら大丈夫ですね!



 …そして気がつくと自分の部屋のベッドの上。

 あれ? あの後の記憶がない!

 お酒って怖い!

 枕元に置いてあったスマホを見てみます。皆さんから連絡が来てるかも。私が何か粗相をしなかったかわかるかも知れません!

 動いたら頭が痛い! これが二日酔いというやつですね。

 霞む目を必死でこすってメッセージを見てみると、岬くんから何か来てます。


『俺に隠してることない?』


 …えっ?



お酒って怖いですよね(笑)

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