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ゆるキャラはじめました  作者: 山下ひよ
14/27

【じゅうよん】決してデートではありません

ついにデート? です!

二人とも中学生みたい…


 ついに、ついにこの日が来てしまいました。

 岬くんと、あの岬くんと二人で出掛ける日が来ようとは。


 さんざん考えて、結局服装はよく着るドレープシャツに七分丈のジーンズ、そして黒と白のスニーカーにしました。

 写真を撮るなら動きやすい方がいいだろうと思ったのと、…デートを意識しているとか思われないよう、ボーイッシュに!

 だって変に意識して、向こうが「うわ、こいつデートのつもりかよ」とか思ったら嫌じゃないですか!

 そしてもうひとつ、これはどうなんだと思いながらも用意してしまったのが、お弁当。

 だってフラワーパーク調べてみたら、お弁当持って来て食べるお客さん多いって書いてあったんだもん!

 飲食店はそんなに無さそうだし、ソフトクリームとかはやたら多いけどそれだけじゃ体に悪いし、ピクニックエリアでお弁当広げるとかちょっと憧れだったんだもん!

 暑くなりそうだから保冷剤入れてるし、フラワーパークではお弁当やBBQの材料を持ってくる人も多いから貸し冷蔵庫も用意されてるって。じゃあと思ってお弁当を作りました。でもこれって、男の人と二人で出掛ける場合、やっぱり「アピールしてるよこいつ」とか思われるのかな。

 …いいえ、これはあくまで私のお昼ご飯です! ちょっと多く作ったので、岬くんにも分けてやらないでもないのです!

 そうです、その感じで行きましょう!



 駅に着くと、岬くんはもう着いていました。ドタキャンされなかった!

 岬くんは紺色のTシャツにジーンズ、スニーカー。ラフな格好です。鍛えていて体格がいいので、そんな格好も様になります。

 不覚にも少しときめきました。イケメンめ!


 フラワーパークまでは電車を乗り継いで一時間弱。

 電車の中では、意外と普通に話しました。岬くんがスポーツクラブで働いていることも聞きました。知ってますけどね!

 私の会社のことも聞かれましたが、「吹けば飛ぶような小さな会社です」と言い切り、それ以上の追求を逃れました。ああ、嘘ついちゃった。本当は全国四百店舗以上を構える大手企業で、私は事務員ではなくゆるキャラです。…口が裂けても言えません! だって岬くんが知っているカメ子なんだもの!

 でもこのくらいはいいかな、と思って、カメ子のカメラアプリを紹介しました。岬くん、知らなかったみたいで、驚いていました。

 私も今日のことでいっぱいいっぱいで、まだインストールしていなかったので、一緒にインストールしました。アニメになったカメ子、かわいいです! そして社長、思いの外イケメンに作られてます。詐欺だ!


 この時、ちょっと気になったんですが、…岬くんってもしかして、カメ子のこと大好きじゃないですか? アプリで異様にテンションが上がり、思わず「かわいいな」と呟いてました。ストラップも持ってるらしいし、しょっちゅう会いに来てますよね。田島さん目当てかと思ってましたが、本当はカメ子だったんでしょうか? それとも田島さんに会いに来てるうちにカメ子にも愛着を持った? どちらにしろ、カメ子のことは好きだと思います。根拠はないですが、女の勘です!

 もしそうなら光栄ですね! これはますます、中身のことは知られてはいけません。岬くんの夢を壊してしまいます。

 フラワーパークに着いたらカメラアプリも実際に使ってみようということになりました。楽しみが増えましたよ!



 今日はいい天気で良かったですね! 

 フラワーパークは本当に一面の花畑で、ヨーロッパ風の建物がたくさんあってとってもきれいです。こんなところあったんですね!


「あ、岬くん、ちょっと荷物預けてきてもいいですか?」

「いいけど…。そのでかいカバン何入ってんの?」

「ええと、お弁当です」

「えっ」


 岬くん、びっくりしてる。勘違いされないように気をつけねば!


「調べてみたら、ここレストラン少なくて。持ち込みする人多いって聞いたので作ってきたんです。多めにあるので岬くんも後でどうぞ」

「………ありがと」


 こ、これはどういう反応でしょうか?

 引かれてる? 困惑してる?

 もしかして、他人の手料理が苦手なタイプ!?


「あ、あの、嫌だったら食べなくていいですからね!」


 慌ててそう言うと、岬くんは首を振りました。


「いや、嫌じゃねぇよ! 後でもらう」


 本当でしょうか? 気を使わせてしまったかも。

 ちょっとしょんぼりしながらお弁当を預けに行く私の背中を見つめる岬くんは、どんな顔をしていたんでしょうか。

 振り返る勇気はありませんでした。



 岬くんの写真撮影の教え方は、予想外に上手でした。最近始めたばかりのはずなのに、神様は不公平です。イケメンをひいきします。きっと女性の神様です。

 ピントすら合わせられなかった私も、練習していくうちに数枚に一枚くらいは成功するようになってきました。ひまわり畑がとてもきれいに撮れたのは本当に嬉しかったです!


 カメ子のアプリは午後に使おうということになり、とうとう、とうとうお昼ご飯です!

 預けたお弁当を受け取り、持ち込みの食事が出来るピクニックエリアの丸い木のテーブルにそれを広げました。

 まずはおにぎり、中の具は梅、鮭、焼きたらこ。

 そして唐揚げ、ハンバーグ、卵焼き、ウインナー、ほうれんそうの胡麻和え、蓮根の甘辛炒め、プチトマト。

 とりあえず定番で、大体の人が「好き」というメニューにしました。無難です。

 岬くんは目を丸くしていました。そんな驚きますか?

 お箸を渡すと、岬くんは手を合わせて「頂きます」って。ちょっと新鮮です。

 よく考えたら、私の作ったものを食べたことあるの、母以外では岬くんが初めてかも。にわかに緊張してきました! 吉川家の味は、岬くんの口に合うのでしょうか!?

 唐揚げを口に入れた岬くんは、顔を綻ばせました。


「旨いな!」


 その顔、心臓に悪いです! イケメンめ! そして私の面食い!

 でもお口に合ったようで安心しました。

 私もおにぎりを頬張ります。


「ホント料理上手いんだな」

「母子家庭なんで、昔から作ってたんですよ」

「え、そうなんだ」

「岬くんは、料理しないんですか?」


 岬くんは苦笑いを浮かべます。


「作ってもあんまり旨くないんだよな。コンビニで買う方が失敗がない」

「でもカレーパンとかじゃ、身体に悪いですよ」

「分かってるんだけどなぁ。大体不味くなるから食材無駄にしてるみたいでさ」


 意外です。岬くんは何でも人並み以上に出来てしまう人だと何となく思っていました。



 そんな何でもない話をしながら食べているうちに、お弁当箱は空っぽになってました。結構な量だったのに、岬くんって結構食べるんですね! 残さず食べてもらえると作った甲斐があります。

私が片付けている間に、岬くんはソフトクリームを買ってきてくれました。お弁当のお礼だそうです。マメですね! 卒がありません。

 ソフトクリームはとても美味しかったです。


 その後はアプリも使って、スマホとデジカメでたくさん写真を撮りました。

 アプリは写真のフレーミングやらズームとワイドやら、基本的な、でも覚えておくとなるほどな情報が、イケメン詐欺の社長からもたらされました。撮影する度にマイカメ子が「またひとつ、おおきくなったです」と言います。…この台詞はちょっとどうかと思いますが、岬くんは嬉しそうです。ならいいか。



 そんなことをしているうちに、あっという間に帰る時間に。

 帰りの電車では、撮影した写真をお互いに見せ合いながら過ごしました。岬くんは本当に撮るのが上手です。悔しい。

 だけど丁寧に教えてくれて感謝ですね。これで「カメ子の日記」でも良い写真をお見せできる日が近づきました!

 朝に待ち合わせた、私の家の最寄り駅の改札まで、岬くんは送ってくれました。空のお弁当箱が入ったトートバッグを受け取ります。そう、お昼ご飯の後、岬くんはずっとその荷物を持っててくれたんです! 素直に優しいな、とも思いましたが、きっとこれもモテ男のやり口です。そうに違いない。私は騙されませんよ!


 家路につきながら、今日の出来事を振り返ります。

 たくさん写真を撮って、一緒にご飯を食べて、きれいな景色をたくさん見て。

 岬くんは私に一度も「顔面凶器」って言いませんでした。笑顔を作らないようにしていましたからね!

 色んな話をしました。

 うん、楽しかった。

 行って良かったな。



ひまりはガードが固いのか緩いのかわかりませんね。

次回もよろしくお願いします!

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