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3.訓練期間ー上



「ユリさーん!! 無事ですか? 目が覚めましたか? 体調に変化はないですか?」


 目が覚めたら、リクスーの妖精さんが胸元にしがみついていました。


 おはよーございます。ユリです。

 今、2ヶ月の間付けていた首輪が外れて、足元で溶け去って行っています。ひさびさの自由で口調すらおかしくなっている気がしますが、おいおい直るでしょう。


 それはともかく、おばちゃんは頑張りました。


 来る日も来る日も、怒濤の如く押し寄せてくるデータと闘い続けました。管理者様は、ズルをして(?)私の2ヶ月の訓練を全て完全オートのインプットにしやがりました。

 ただ、肉体には受入れ限界というのがあるらしく、毎日頭痛と目眩と吐き気、あとは筋肉痛を堪える日々でした。


「おはよーございます。ハロさん、お元気そうで何より。管理者様から叱られてませんか? 大丈夫でしたか?」


 最後にみたハロさんは黒焦げ気絶でしたから、気になってたんですよね。


「大丈夫です!! ユリさんのお陰で叱られることも、消滅することもなかったです。でも、そのせいでユリさんがぁ」


 ああ、ほらほら、泣かないの。大丈夫、こっちこそお陰様で有意義な2ヶ月を送れましたよ。マイナス思考もすっかり落ち着いたし♪


「管理者様が、ユリさんに施した訓練は、訓練と言うよりも改造でしたし、私が気絶している間に始まってたから、すっごく心配したんですから!」


「訓練と言うより、改造……」


 どんだけの事をやったのでしょう。あの推定神さまは。


「とりあえず、ユリさん、こっちにきて、扉を潜って下さい」


 胸元のハロさんが左に引っ張るので向き直ると、目の前にベニヤ板の扉が有りました。真っ白空間に安っぽい扉。無性に笑いが込み上げてきます。


「はやく、はやく」


 無邪気に急かされるまま扉を潜ると、そこは観葉植物が置いてある、ホテルのロビーのような所だった。お約束ですが、振り返るとそこに扉はありません。


「ようやく本来の訓練施設にご案内出来ました! 今日はここで後1ヶ月分のメニューを決めていただきます!!

 まずは、お約束、『ステータスオープン!』と唱えてください」


 ふかふかソファーに対面して掛けると、ハロさんがそんなことを言ってくる。


「ステータスオープン?……おわっ」


 躊躇いがちに小声で唱えると、目の前にわたしのステータスが表示された。

 内容は穴飽きまくり。

 技能訓練付きすぎ。

 さすが神さまお手製。

 これチートなんじゃないかな。


 名前:高橋 ユリ(仮)

 種族:異世界産人間(仮) 性別:女

 レベル:***

 職業:転生者(仮)

 HP:***

 MP:***


 物理耐性:** 魔法耐性:**

 器用度:** 敏捷度:**

 筋力:** 生命力:**

 知力:** 精神力:**

 幸運:**


 一般技能:ネイティブ異世界言語、上級統一言語、上級古代語、中級精霊語、中級神語、初級魔族言語、上級一般常識、上級博物学、上級古代知識、中級精霊学、中級神学、中級動物学、中級魔獣学、中級薬草学、初級毒物工学、初級軍事知識、初級軍略、初級策謀、初級拷問、初級調教、初級騎乗、礼儀作法、ダンス、話術、商談、緑の指


 戦闘技能:格闘level5、剣術level6、槍術level5、斧術level3、弓術level8、投擲level3、古代魔法level8、治癒魔法level6、精霊魔法(全適正)level5


 特技技能:情報隠蔽、情報操作、回避、縄抜け、鍵開け、罠発見、気配察知、気配遮断、嘘感知、毒耐性、熱耐性、冷気耐性、魅了耐性、石化耐性、苦痛耐性、恐怖耐性、精神支配耐性、拷問耐性、不撓不屈、武器防具作製、アイテム作製、ポーション作製


 特殊技能:鑑定、アイテムボックス(∞)、看破、第六感、鷹の目、幸運付与(大)、魔力回復量増加(大)、魔力保持量増加(特大)、自己治癒、健康体、ポイント消費


 以下略。


 凄いわ。見ただけではわからん技能もあるけど。緑の指ってなんだろね? なんかの童話か昔話で読んだことある気はするけど、覚えてないわ。


「確認しましたか?

 では、管理者様からの御伝言です。

『記憶を漁って、チートと言われるスキルと、暮らしていくのに便利そうなスキルを中心に覚えさせてみた。

 前世の物資を取り寄せする技能は、俺の世界では対応不可だから、諦めてくれ。そのかわり、ポイント消費で便利アイテムをがっちり準備するつもりだから、来月を楽しみにしておくように。』

 とのことです。」


 おー、管理者様ありがとうございます。楽しみにしてますよ。衣食住は大事ですからね。ほんとに期待してます。


「さて、ユリさん、今月のメニューですが、どうしますか? 今あるスキルを伸ばす事を考えるか、新たな技能を手に入れるか」


「あれ、ハロさん、質問。取得必須が抜けているものもあるんですけど、それは大丈夫なんですか?」


 世界史とかあった気がするんだよね。気のせいだったかな?


「ああ、それでしたら、上級技能に含まれた為、表示されていないだけで取得済みです。ご安心下さい。

 一部技能は幾つかの取得条件を満たすことで上級技能に変化します。ちなみに戦闘技能のレベル上限解放に、知識系一般技能の上級取得が必須となっているものもあります。

 進化ツリーを表示しますか? ポイントを10p消費します。技能分のボーナスポイントは訓練終了後に一括付与となるため、今のユリさんの手持ち全てとなります」


 おぅ、久々にきました。運命の選択タイム。ただこれは悩むまでもない。


「もちろん御願いします!! ……おぅ!!」


 目の前に表示されました。セフィロトの樹だっけ? 錬金術のツリー形式で分かりやすく作ってある。鼻息荒くなってるのが自分でもわかるなぁ。


 フムフム…治癒魔法を上げるためには上級神学、上級神語、中級博物学が必須と。


 精霊魔法を上げるためには、上級精霊語、上級博物学、上級魔物学が必須。


 あれ、各耐性を状態異常全耐性にランクアップさせるために、あと、麻痺耐性だけ。これは狙わないといけない。


「……りさーん、ユリさん! 話を聞いてください! 1か月丸々訓練に使えるわけではないんですよ」


 なにっ? わたしの完璧な計画が。ハロさんそこのとこ詳しく!


「あ、聞いて下さる気になりましたか?

 ユリさん、最初に管理者様から言われたと思いますが、本来この1か月は能力に慣れるための、実習期間です。その為、基本は実習期間となり、隙間で訓練をしていくことになります。

 具体的には睡眠時間や休憩時間を削ることになりまして、優先順位を決めて覚えていくことになります。

 ただし、戦闘技能で上限level10まで行っていないものに関しては、レベル上限解放しているものに限り、練度が上がって、レベルが上がることがあります。

 また各種耐性技能も実習内容によっては取得可能です」


 説明はAボタン連打でスキップしたくなるなぁ。早く選ばせてほしい。


「まずは実習の選択です。

 一日午前、午後の2回行えます。10日でワンクール、3クールで終了です。つまりはワンクール最大20回実習が行えます。

 実習の内容は、物理戦闘全般、魔法戦闘全般、採集、治癒、アイテム等合成、複合、休憩の七種類から好きな数を組み合わせ選んで頂けます。

 尚、複合はフィールドを自由に動き回り、好きなことができる分、こちらからのサポートがなくなります。休憩は文字通り休憩。ただしこちらを訓練に当てることも可能です」


 はいはい、育成ゲームのお約束ね。これで異性がいれば乙女系学園ものになれるよ。

 それはともかく、ドロップ品の扱いを聞いておかなきゃ。


「作ったアイテムとか、採集したものとかはどうなるのですか?」


「作製したアイテム、収集した素材、魔物のドロップ品に関しては全てアイテムボックスに収納され、転生後使用可能です。

 頑張れば頑張るほど、スタート物資が多くなると思ってください。

 治癒に関しては、転生先の某所に一時移転しての治癒となります。ユリさんが治さなくては、もしかしたら相手は死亡するかも知れません。ユリさんの姿は光輝く神人と認識されますので、来世に顔バレする恐れもありません。ちなみに時系列もあやふやな場所ですから、治した人と転生後会うこともないでしょう」


 えーっと、優遇され過ぎでない?

 そんなに危険な世界? うわ、行くのヤになってきた。

 それはともかく、治癒は利点ないのね。そして神人ってなんやねん。治癒は、自己満足と経験を積むだけ? 他に何か隠れた利点があるの?

 うーん、悩むなぁ。


「さて、10分以内に選択をお願いします」


 目の前に表情を消し淡々と選択を迫るハロさんがいる。私が怖じ気づいたのに、気がついているよね、これは。


「ハロさんって時々凄い事務的になるよね?おっかないわ~」


 とりあえず、茶化してみる。


「ユリさん、冗談言ってる時間は無いですよ。早く考えて下さい」


 とりつく島もありませんでした。

 では、真面目に考えましょう。


「1クール目、物理戦闘5、魔法戦闘5、採集5、治癒5。敵は電撃攻撃持ちを出して貰えると嬉しいです。

 次、2クール目~、物理戦闘3、魔法戦闘3、採集3、アイテム等合成3、治癒4、休憩4。休憩は治癒の前に入れて、治癒上限解放の為の知識取得に当てます。アイテム合成は最後に一回は必ずいれてください。余裕があれば精霊魔法のレベル上限解放も狙いたいです。

 ラスト、3クール目、複合20。以上」


 全体的なバランスを取りつつ、最後は男前に。女だけどさ。


「はぁ、もういいです。なんだか色々と要求が聞こえましたがそれで。

 では次に訓練ですが、ほぼさっきの実習選択で話していましたね。ちゃっかりしてますよね、本当に。なら、もしも、早朝深夜でそれらが全て終わり、まだ取得出来るものがある場合は追加で対応します。休憩時間が余った場合も追加対応とします。

 感謝してください」


 おー、ハロさん話が早い♪


 ではここから、一部ダイジェストで、実習風景をどうぞ


 **


 一日目

 朝、知識取得に向けてお勉強。


 午前、物理戦闘全般。

 訓練用の場所には全て移転での移動。視界がホワイトアウトしたと思ったら、服装も変わっていてビックリです。

 基本、戦闘がありそうな訓練は高校時代に着ていた懐かしの運動着に素材不明なプロテクターでの参加。この運動着、通称:カエルスーツ呼ばれてたヤツで雨蛙色なんだよね。ダサダサ。


 それはともかく、目の前に、7人の様々な武器を持った戦士がいます。それぞれに達人と呼ばれた人達らしい。今回私の物理戦闘を指導してもらえる師匠達である。


 めっちゃこわい!!


 一種類ずつ武器を取っての模擬戦。刃物は潰していないから、当たり前に切れます。自分に治癒をかけながら、死にたくないので必死に食らいつき、ボコボコにされて実習終了。


 午後、魔法戦闘

 師匠が魔物になりました。

 ラッキーな事に電撃攻撃持ちがいたので、そいつ以外倒し、時間一杯まで、状態異常:痺れ➡解除を繰り返す予定が実習にならないと、電撃魔物だけになると次の魔物集団が召喚されるようになりました。最終的には六匹の電撃を浴び続けることになりましたとさ。

 今日は麻痺耐性取得出来ず。残念無念。

 

 夜、 知識取得に向けてお勉強。



 二日目


 朝、相変わらずお勉強。


 採集。

 知識を元に、次を育てる最低限以外、乱獲しました。


 治癒。

 移転先には怪我やら病気やらの患者さん(軽度)がたくさんいたので、対処療法的に色々な呪文を唱えました。


 夜、知識取得に向けてお勉強。


 以下繰り返し。


 13日目。

 魔法戦闘で麻痺耐性取得。これで耐性が状態異常全耐性に進化しました。やったね! ここからは、魔物ドロップを狙って、全力で狩ろうと思います。


 16日目、

 物理戦闘で、弓術奥義を取得


 17日目、

 物理戦闘で、剣術奥義を取得


 19日目、治癒魔法level上限解放。


 20日目、精霊魔法level上限解放。


 覚える知識が無くなったので、料理とか、子守唄とか、まだ覚えていない知識を残り10日覚えていくことにした。

 ついでに、楽器演奏と歌唱もチョイス。

 選んだものが多過ぎて、朝晩だけでは足りず、早朝訓練も行うことになりました。眠いです。

 自動インプット。……頭痛い。



 ……

 そんなこんなで、22日目、

 ルーチンワークになりつつある日中の複合は採集戦闘をバランス良くこなして、宿泊所に帰って来た。

 物資は順調すぎるほど順調に、大量に集まっている。合成の時間が足りないくらい。夜の訓練に備えて、夕食を取っていると(ここの食事はホテルのビュッフェ方式、なかなかに旨い)館内放送が流れた。


 "緊急ミッションです。移転先で大規模な魔族の侵攻及び国家間戦闘が起こり、多数の負傷者が"神々の慈悲"西棟に運び込まれています。この負傷者を一人でも多く助けて下さい。

 ……これは実習ではありません。繰り返します。これは実習ではありません!"


 聞いたことのない、アニキャラのキャピキャピした声が深刻な内容を放送する。


「ユリさん、どうしますか? 緊急ミッションを受けますか?」

 キャピキャピ声と内容の差異に、違和感を感じていると、いつのまにか緊張した面持ちのハロさんが隣に浮いていた。


「ハロさん、こんばんは。実習ではないってことは、誰かが本当に死にかけていて、私がそれを癒しに行くと言うことですよね? 何故管理者様は動かないんですか?」


 推定神さまならこれくらい、余裕で出来ると思うんだけどね。


「ユリさん、管理者様が世界に直接干渉するのは禁止行為なんです。

 何か行うとしたら、地上に代行者、聖女とか聖人とか言われる人に、一時的に加護を与えて、その者たちに助けさせること位です。でも、それには時間がかかるのです。いま西棟に運び込まれている人達の多くは死ぬでしょう。

 だから、お願いします。協力してください!」


 はいはい。ハロさんの協力要請なら、何なりと頑張りますよ。でもその前に。


「分かりました。ただし食事だけはさせてください。ハラペコじゃ、魔力回復も遅くなります。今は少しでも多くの魔力が必要なんでしょう?」


 また、呆れられてしまいました。


「もー! 魔力回復ポーションは10本渡されています! 移転時に減っている魔力も全回復させます! ことは一刻を争います! ほら! 行きますよ!!

 ……いままでの軽傷者と違い、今回は重症から瀕死までしかいません。覚悟してください。

 …ユリさんが躊躇ったら……人が死にます」


 グロいのは御免だけど逃げませんから、そんなに脅さなくても大丈夫ですよ。


  ハロさんは暗い顔でそう宣言すると私の肩に触れる。


 もう慣れっこになってしまった、移転時の視界のホワイトアウトから回復すると、次に見えた光景は陳腐な言い方たけど、地獄だった。

 一面の負傷者。手足を失っている者、顔の一部が剥ぎ取られている者、内蔵を露出している者、身体中が焼け爛れ、切り刻まれ、凍りつき、腐れ落ちている者。これはキツい。


 私の移転を見て救い主が来たように、視線だけを必死に送ってくる。そんな彼らには光輝く人影しか見えていない。私の声は届かない。彼らの声も届かない。意思ある音は、緊急ミッション中は全て遮断される。


 私が立ち尽くす間にも、次々と負傷者が運び込まれ、一つのベッドに複数が寝かされ、床にも細い通路を残して、負傷者達で埋め尽くされていく。

 種族もバラバラで、人間もいれば、小人も、尖り耳のエルフもいる。意識のある全員が救いを求めるかの様にこちらを見ている。


 《ユリさん、大丈夫ですか?治癒を、早く治癒を始めてください!》


 頭のなかに、切迫したハロさんの声がする。


 唱えられる広域治癒の中でもひときは強力なものを選ぶ。声は聞こえなくても、私が纏う輝きが強さを増し、周りに救いの手がきたことを知らせているようだ。


 治癒可能範囲はこの部屋半分ほど。人数にして約250人。


 欠損部位を修復し、状態異常回復し、傷を癒す。

 三日前に覚えたばかりの大技だ。私の魔力の8割を消費するこの魔法を連発は出来ない。


 早口で唱え終わると、体からごっそり力が抜けた。それと引き換えに周りにいる負傷者たちの傷が、画像の逆再生のように癒えていく。ほっとするまもなく、残りの魔力で、範囲外にいた患者に個別の大治癒を唱える。


 残った患者さん達の視線が痛い。


 次々と治して、魔力の残量が1割を切ったところで、魔力枯渇の吐き気がきた。まだまだ耐えられる程度だったので、ギリギリまでポーションを節約するために、大治癒を唱え続ける。


 人間、エルフ、巨人、小人。

 少年、子供、大人、兵士。


 《ユリさん、そろそろ限界です。ポーション使ってください。気絶しちゃいます》


 ハロさんからストップがかかり、持たされた魔力回復ポーションを飲む。この西棟と呼ばれる場所にハロさんは来られない。

 そしてまた、広域治癒。


 西棟は石造りの回廊型で六部屋でロの字を描いている。ひと部屋毎に広域治癒1回、入れ換え待ちで大治癒、また半分ほどが埋まったらポーション飲んで広域治癒。そして次の部屋へ進む。


 どれくらいたったのか、ポーションを使いきり、魔力枯渇の症状に悩まされる頃にようやく運び込まれた患者の中でも、特に酷い者達の治癒が終わった。


 《ユリさん、お疲れ様でした。緊急ミッション終了です。引き上げます》

 

 また目の前が白く染まり、見慣れた風景に戻る。


 まだ、治せていない人もいたのに。命に関わらないとは言え、残してきてしまった。後味悪く、回りを見渡す。


 食事も食べかけのまま、冷めずに放置されており、おそらくはここの時間はたいして過ぎていないのだろう。


「ユリさん、お疲れ様でした。大丈夫ですか?」


 大丈夫、と答えようとして、ふと、食事の匂いがダイレクトに入ってきた。


「ぐっ、うふっ…」


 込み上げてくるものがあり、慌ててトイレに駆け込む。しばらく籠り、衝動が落ち着いてから、口をすすいで席に戻った。私を見るハロさんは心配そうだ。


「失礼。大丈夫ですよ。ちょっと気が抜けただけです。さて、冷めてしまいましたが、ゴハンにしましょ」


 無理やり笑って、極力匂いを嗅がない様に、何も考えないようにして箸を動かす。そこから私が食べ終わるまで、ハロさんは口を開かなかった。

 大丈夫なんだけどなぁ。ちょっと、臭いとかキツかったし、グロかったから、日常に戻った途端に限界がきただけなんだけど。


「……ごちそうさまでした。ハロさん、そんなに心配しないで。ちょっと驚いただけですよ。大丈夫、すぐ馴れます。外科医のお医者さん達も、全く気にならなくなるらしいですし」


「ユリさんはお医者様じゃないですよ。だから弱音吐いてもいいんですよ?」


 やさしいなぁ、ハロさん。でも大丈夫。今はショックを受けるよりも、実力をつける方が先。あんな後味悪い気分を味わうのはもうごめんだ。


 今回は魔力消費が激しすぎたから、魔力消費軽減(特大)と回復速度増加(特大)が欲しい。あとは詠唱時間が勿体ないから、無詠唱系も。


「ハロさん、魔力回復速度増加、消費軽減、無詠唱か詠唱省略系のスキルが欲しいんですが、手に入りませんかね?」


 ダメ元で聞いてみる。何事も意思表示が大事です。


「ユリさん、それは残念ながらポイント消費になります。今は取得不可ですね。でも、魔力量を少しでも増加させたい、という事であれば方法はありますよ? ……聞きますか?」


 わたしはその提案に飛び付いた。








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