178.執事とメイド?
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2018.4.16記
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ジルさんの異論は聞き流し、アルオルの反論には耳を貸さずに部屋割りは確定した。ちなみに私が使っているフロアへ続く道は、ジルさん達の区画にある。
「……さて、ではようやくですけど、明日以降は都市の修復にかかれそうですね。フォルクマー団長達とも相談しないと」
そうな風に話しながら、にっこりと笑って別れ翌日を迎えた私は、驚きに目を見張ることになった。
「おはようございます。リュスティーナ陛下」
目の前できっちりとした礼を取るのはレイモンドさんと、半魔の村人であるアガタさんだった。何故アガタさんがここにいるんだ?
「おはようございます?」
扉を開けた瞬間に挨拶されて、目が点のまま返事をする。村で腕の良い女狩人であるアガタさんも、何故かレイモンドさんに合わせてクラシカルなメイド服だ。
「失礼を致します」
レイモンドさんに押されて部屋に戻されそうになった。
この部屋には誰も入れたくない。だから入り口で踏ん張り、レイモンドさんに疑問を投げ掛ける。
「え? あの……」
「わたくしは本日より、リュスティーナ陛下の側仕えを申しつかりました。アガタと申します。よろしくお願い致します」
「身の回りのお世話はこちらのアガタが行います。順次、侍女や女官、メイドの数も増やしていく予定ではございますが、初めは我ら二人でお世話を致します。手が行き届かない点もあるかとは思いますが、ご容赦ください」
「え? 二人?」
「私も執事としてお側近くにお仕えさせて頂きます。何かと至らない点もあろうことかと思われますが、精一杯、精進致しますので、どうかお許し下さい」
私から信頼されていないと判断したのか、レイモンドさんと狩人のはずのアガタさんが挨拶をしてきた。
「は?」
なんでそんな事になったのか分からずに、首を傾げる。いきなり執事とメイドって……。
「昨夜の宰相殿達との相談でそのように一致しました。我々の間では、陛下の側仕えがいないことが第一の懸案事項で御座いました故。
当初の予定通り、住人が少ないならば、ゆっくりと形を整えていっても大きな問題にはならなかったでしょう。ですが万を超える民を受け入れ、近々、冒険者達もやってくるとなると、国としての形を整えるのも急がねばなりません」
「はあ……」
って私がいないところで、勝手に何をやっているんだ。
「わたくしは、10歳まで貴族の子女として育っております。その為にお側近くに侍っても、無礼にはならぬと判断されました」
たおやかな女性の口調で話すアガタさんに違和感が拭えない。いつもの貴女は何処へいった!
「アルフレッド殿やオルランド殿は他に役割がございます。ジルベルト殿にいたっては、獣人との橋渡し役となりましょう。故に私が執事の大任を任される事と相成りました。
これでも長く生きておりますし、それなりに人に仕える経験もございます。陛下の恥にならぬよう、アガタ共々お仕えさせて頂きますので、よろしくお願い致します。
まずは朝の仕度から……」
「かしこまりました、レイモンド様。
さあ、陛下、お髪とお顔を……」
圧倒されて反応を返さなかったら、アガタさんがお世話を開始しようとする。改めて扉を開こうとする二人に対して、つい声を荒げてしまった。
「やめて! この部屋に入るのは許さない!
と言うか、このフロアに入る許可を出した記憶はないです!! 出ていって下さい」
私の拒絶を受けて、扉が固く閉ざされた。獣人の人達も入ったばかりだし、緊急でカスタマイズしなくてはならないような何かあった時の為にと、カスタマイズ用の水晶を持ち歩いていて良かったよ。
「リュスティーナ陛下、そのように……」
困った顔で宥めてくるレイモンドさんの後ろから、アルオルとジルさんが表れた。
「ティナ、どうした?」
「我が君?」
「勝手な事をしないでよ!!」
八つ当たり気味に、アルを怒鳴り付けた。レイモンドさん達と私を見比べたアルフレッドは、状況に予想がついたのだろう。謝罪をしつつ、近づいてくる。
「陛下の許可を得ず、ここまで彼らが入った事に関しては謝罪致します。本日打ち合わせ時にでも、ご報告をと思っていたのですが……」
「…………ティナ、お前は今後忙しくなる。身の回りの雑多な事を引き受ける者は必要だ」
「ハニーバニーは妙な所で警戒心が強いからなぁ」
「私は朝の用意くらい自分で出来るし、部屋に他の人を入れるつもりはないよ。お客さんが来るときの晩餐の支度とか、来客予定の管理ならばお願いしたいけど、掃除や洗濯は自分でやるから」
廊下で睨み合いになってしまった。
「レイモンド殿、ですから我が君に話すまでは動かないで欲しいとお願いしたのです」
アルは私が引かないと判断して、レイモンド村長に矛先を変えたみたいだ。
「ここまで拒否されるとは思いませんでした。
普通かしずかれるのをここまで強固には拒まぬでしょう」
「陛下のことを分かっていないからそんな事を言うのです。一年近くも我が君と共に過ごしていて、気がつかなかったのですか?」
「模範的な住人で御座いました」
「良い子だったわよ?」
「アガタッ!」
アガタさんがいつもの口調になりかけて、レイモンドさんから叱責が飛んだ。スカートの裾を持って軽く謝罪をするアガタさんを睨んだアルフレッドはこれ見よがしにため息をついた。
「我が君は人と関わることを嫌い、頼る事を良しとせず、それでいて他者へは善意の塊である独立心旺盛な強者です。
世話をされることを負担に思うことはあっても、喜ぶことはないでしょう」
「ついでに言えば、上下関係も嫌うな」
「食い意地ははってるから、そこから調教していけば……」
「オルランド!」
混ぜ返したオルランドにアルフレッドからの叱責が飛ぶ。
「調教ってねぇ……。わたしゃ野生馬かなんかなの? 失礼しちゃうわ」
「申し訳ございません。オルランドの声はやはり封じるべきかと」
半分呆れながら話したら、本気で怒ったらしいアルフレッドが、目を炯々と光らせて提案してくる。面倒になって手を振ることで否定に変えて、上のフロアを目指して歩き出した。
「とりあえずリビングに向かおう。レイモンドさん達をどうするのかはそこで改めて話そう。
朝ごはんはみんなは済ませたの?
いつも言ってるけど私は済ませたから、まだなら構わないから食べてね」
「陛下!」
「アガタさん。私はついこの前まで独り暮らしの冒険者でしたから、それなりになんでも一人で出来ます。
王としてお世話をと言うならば、対外的な場所だけで十分。そうでしょ?」
「……上で今後の予定も含め、ゆっくりと話をさせてください」
譲らない私に、アルフレッドが頭を下げた。
「うん。私も話したいと言うか、聞きたいこと出来たし」
さっきのレイモンドさんの一言、しっかり聞いておかないと駄目だろう。私は飾り物になるつもりはない。
リビング、今では謁見室とも呼ばれている部屋に着くと、既にフォルクマー団長とエッカルトさん達が待っていた。
「おはようございます」
私の挨拶に姿勢を正した赤鱗の騎士達は一斉に返事をする。大きなテーブルを囲む様に配置された椅子のひとつを引かれて、腰かけた。2ヶ所ある入り口にはそれぞれ赤鱗の兵士が立つ。
アガタさんとレイモンドさんは私の後ろに控えたみたいだ。
「さて、では今朝の議題ですが……」
最近毎朝行っている打ち合わせを始めようとしたアルフレッドを止めて、私が口を開いた。
「先にひとつ教えて欲しい。
昨日の夜に行われたらしい話し合いが私に知らされなかったのは何で? 今までもそんなことはあったの?」
今までは、打ち合わせで出た議題の対応策を考えて、赤鱗の移住民や半魔の村の人々が生活しやすいようにしてきたつもりだった。でも、それが出来レースだったとしたら?
私がいないところで、宰相主導の元、半魔の村の代表と赤鱗騎士団の代表が話し合い、全てが決まっていたのならば、私がここにいる必要はない。
望みもしない王の位に、責任を果たすために居続けることはないんじゃないか?
視線を交わし、相手の出方を窺っているフォルクマーさんとレイモンドさんを見てため息が堪えきれなかった。
「…………そう。
確かに私は治世なんて分からない。でも、だからと言って、貴方達がお膳立てした通りに動く気もないし、そんな風にしてくれと頼んだ覚えもない。
アルオルやジルさんには前にも話したよね?
お飾りになるくらいなら、私は消える。
王には誰か他の人がなればいい」
「神子姫様!」
「我が君!」
「リュスティーナ陛下」
私の言葉を受けて、アルフレッドが自分の席を立ち、私の前に跪いた。それに倣うようにフォルクマーさん達も膝をつく。
「我が君、どうかお怒りにならないでください。我々は陛下を軽んじた訳ではなく、少しでもお心安らぐように、負担が軽くなるようにと行動しただけなのです。それは私が捧げた誓約が発動していないことからも明らかです」
必死に言い募るアルフレッドの言葉を遮った。
「つまりは今までも、私の知らないところで国の在り方を決めていた……と?」
グッと言葉に詰まったみんなを見て、悔しさに唇を噛んだ。どんなに言葉を飾ろうとも、そう言うことでしょうが。
「リトルキャット。『自分は治世に対して詳しくはない。間違うかも知れないから恐ろしい』君が前に話した事だ。
アルフレッド様はそのハニーの不安をどうにかしようと行動したに過ぎない。責めるのはお門違いだ」
妙に冷静なオルランドの突っ込みが入った。でもね、オルランド。それとこれとは話が別だよ。
「ええ、だから私は、世の中の事を教えて欲しいと頼んでいた。それをせずに、勝手に国の在り方を決めることは許されることなの?」
肩を竦めるオルランドからの返事はなかった。
「……それで、隠す必要はこれでなくなったよね? 面倒な会議の形なんか取らなくて良いから、貴方達で決まったことを私にも教えてくれる?」
深々と頭を下げたままのアルフレッドが、言いにくそうに重い口を開いた。誓約とやらが働いているのかもしれない。
「今後の復旧計画ですが、外壁から直すべきと判断致しました。幸い近くに石切場もございます。
また、産業としては、魔物からのドロップ品にしばらくは頼ることになるため、それについても冒険者ギルドとの話し合いを持つ事となっております。話し合いの場にはレイモンド殿がオブザーバーとして参加して下さいます。
陛下の身の回りに関してですが……」
次々と語られる内容を聞いて、本当に私は不要だなと実感してしまった。とてもよく考えて作られた計画で、隙がない。私が口を挟む余地もなかった。今までも気がつかないまま、アルフレッド達が作った計画のままに行動していたのだろう。
「…………そっか。わかった。
私の身の回り以外は好きにして」
吐き捨てるように言った私を、すがるような瞳でアルフレッドが見ていた。
「処罰を……」
「不要。アルフレッド達が作った計画で良いんじゃないの? うまく行くといいね。頑張って」
きっぱりと言いきった私を、顔を上げて見ているメンバーはいなかった。そんな風に気にするなら、そもそも知らないところで打ち合わせなんかしなければいいのに。
燻る怒りのままに続ける。
「…………私の身の回りの世話はいらない。食事は、国賓になるお客さん向けのものだけでお願いします。
私にご飯を作るのは、ダビデの仕事だよ。彼以外から3食おさんどんして貰おうとは思わない」
後は私がいなくても大丈夫だろうから好きにして、そう言い捨てて席を立った。そのまま目的地を定めず、外に向かって歩き出す。
後ろから慌てた気配がして、数人の護衛が追いかけてきた。いつもなら配慮して動くけれど、それも面倒になって、私はただ前を向いて歩き続けた。




