16.食い道楽は国民性!
朝起きてベットから降りようとした途端、自分の張った防御陣に激突する。まだ、朝靄が立ち込める時間だが、打撃以外の痛みで悶絶する事となった。
頭イタイ…。これは二日酔いだ……。
起き上がった途端に目眩と吐き気に襲われた。身体も怠いし、頭も割れるように痛い。これは参った。
無意識に呻きながら『スキル:健康体』を活性化する。身体の不調を早く治す、ただそれだけのスキルだ。
……うん、少し、よくなってきた。ついでに肝臓に解毒魔法をかける。解毒剤でも良いんだけど、飲みきる前に戻しそうでひさびさに治癒魔法を使う。集中できなくて、発動が怪しかったけれど、何とか効いたようだ。
あまりの症状の酷さに、アレルギーを疑ってしまう。
もしかして、この体ってアルコール受け付けないのかな。昨日のシード、美味しかったのに残念無念。
防御陣を解除して改めて起き上がる。うん、目の前も回らないし、治ったみたいだ。今後は自重しようと思う。
さて、今日の行動を開始しよう。
まずは今日の予定を軽くまとめてみる。
買い物の予定は
1、食材。
(野菜を中心にあれば魚も、肉はドロップ品が大量にある)
2、武器、防具。
(転生前に作ったフリーサイズのは何故か見つけられないし、目立たない駆け出しっぽいのを買おうと思う)
3、ズボン&ショートパンツ。
(スカートだけじゃ、野外活動は無理。これは昨日のお店で相談すればいいかな? 出来たら足首絞ったのが欲しいな)
4、鍋、釜、食器。まな板に包丁も。
(どこで売ってるんだろう? 金物屋さん??)
買い物予定の中でも、食材は日が昇ると同時に開く市場で買える。昼前には大体捌けてしまうから、品質の良いものが欲しいなら、朝早く行くようにと、昨日、屋台のおばちゃん、げふん、お姉さんに教えてもらった。
次にギルドに行って……あ!!
いけない、下位回復薬作ってないや。アンナさんに怒られる。中位より消費魔力は少ないし、10個作っちゃおう。
サクサク作ってバスケットに入れた。これで準備完了。
では、改めて、ギルドに行ってやること。
1、アンナさんかマリアンヌに薬を納品する
2、依頼を受ける
3、ついでにいらないドロップ品(ネズミ肉とか)を引き取って貰えないか聞く
なんか忘れてる気がする……、思い出せないし、思い出せたら予定に追加しよう。
まとめてみると案外忙しい。なら、やはりちょっとベットが固いのが気になるけど、この宿にもう一泊するしかないか。
一泊と言えば、オススメシリーズの隠れ家が気になる。豪華って書いてあったし、もしかして寝具、あっちの方が良かったりするかもしれない。
依頼は外に行くやつにして、アイテムの確認もしよう。本格的に忙しいぞ、これ。一日で終わるのか?
口を含めて全身に浄化をかけて部屋から出発しようとし、慌ててマップを確認する。
きれいさっぱり、昨日の間抜けを忘れてたわ。本格的に酔っ払っていたらしい。何か無意識にやらかしてなければいいんだけど。
私の部屋に変わりはなし、防御陣に綻びもないし、二重にかけた鍵もそのままだ。不審な動きをする人影もマップを見る限りなし。
よし、安全確認完了!!
「おはようございます」
「あら、随分早いのね。朝ごはんはもう少し後よ。大丈夫かしら?」
カウンターを掃除している女将さんに挨拶する。
「はい。少し市場を見に行こうかと。後、今日もう一泊お願いしたいのですが、大丈夫ですか?……昨日の…」
歯切れ悪く昨日の醜態について聞こうとしたが、みなまで言わない内に嬉しそうに遮られた。
「もちろんよ!昨日は怖がらせてごめんなさいね。夫にもしかられてしまったの。
大体今日出発のお客さんたちは、朝の鐘と共に町を発つからその頃戻ればゆっくりご飯が食べられるかしらね?」
情報ありがとうございます。女将さんは良い人だ。
さっそく今日の分の追加料金を払う。さて、では朝の買い出しと洒落こみますか。
やってきました! 早朝市場!!
城壁の外側に住む農家のおかみさんや、子供が収穫した野菜を持ちより売っている。まんま、前世の田舎でやっていた朝市形式だ。ゴザの上に商品が並んでいる。どこも似たり寄ったり。
道沿いに中央に進んでいくと、正規の小売店が軒を並べ、値は張るが、季節外のものや遠方の特産物も売っていた。
入口でマイバック代わりに木箱を1つ譲ってもらい、それを抱えて歩いてゆく。今の私は、無限バックをアイテムボックスの中に入れており、胸の隠しに財布代わりの巾着があるだけの軽装だ。
ちなみにオススメシリーズのローブだから、周りの視線が少し気になったりする。服、村娘の服の方が良かったかな、今更だけど。
通路を歩き、目につく端から買い込んでいく。ただし、大量には買わず、隣同士の店でも連続では買わない様注意した。あくまでも一店舗毎には、大家族のまとめ買い程度で済ました。
前世でいう、キャベツ、きゅうり、トマトに茄子、ゴーヤにズッキーニ、名前も知らないおひたしにしたら美味しそうな葉っぱ、袋に詰められた野菜は何かと思って覗いてみたら玉ねぎとジャガイモだった。
それぞれにこの世界での名前はあるけれど、覚える気も無いから今後も今まで通りに呼ぼうと思う。
他にはブロッコリーとか、ピーマンとか、本当に節操なく買い込む。こんな時、好き嫌いが無くて良かったなぁと実感する。ただしゲテモノは除く。
虫とかは無理。爬虫類も遠慮したい。
市場の中央まで行き、そこの商店で小麦粉を買った。黒っぽいものから見慣れた白いものまで様々あったが、オーソドックスに白い小麦粉にし、大袋を2つ注文する。左の肩に木箱を担ぎ、右手で大袋を2つ抱えたら売り子さんの顎が外れかけていたけれど、前衛冒険者ならこれくらいは出来るだろうし、ってことで気にしないことにした。
野菜で木箱が一杯になったら、人通りの少ない場所に移動し中身だけをアイテムボックスに入れる。何度も市場と裏路地を往復して気が済むまで買い込んだ。おそらくワンシーズンは余裕で賄える。
残念ながら、米は見つけられなかった。しばらくはパンとうどんが主食になりそう。
しかし、野菜を見る限り、今は夏の終わり、秋に片足突っ込んだ辺りなのだろう。農家のおばちゃんたちも、最近涼しくなってきて助かると雑談していたし。
この町は四季があるんだな。と、ちょっと感傷に浸りながら、買い忘れはないかと市場をブラつく。
おお!シソ発見!!
市場の隅にゴザを敷いて小汚い少年が売っていた、ぱっと見、雑草?? と思ってしまう多種多様な葉っぱの中にシソっぽい葉っぱを見つける。
匂いを嗅ぐとまさしくシソだ。赤シソと大葉、両方あるよ!
梅干し、素麺の付け合わせ、漬け物のフレーバー、万能薬味見つけたよ!!
「ねぇ、これ、もっと欲しいんだけど無いかな??」
「もっと?? なんだよ、お前、それは臭い葉っぱだよ。どれでも両手で持てる分で銅貨一枚だ。薬草の材料にもなるからたまに欲しがるやつもいるけど、なんでそんなに欲しいんだ」
おや、お客さん相手に口の悪いお子様ですこと。臭い葉っぱって、なんて認識で売ってるんだか。クレソンやハーブ類も、もしかしてこの雑草の中に埋もれてる??
あれ、なら、ネギや生姜、ワサビも薬草枠なのかな、だから探してもなかったのか。
「何とか言えよ!チビ!!」
ー…小汚い小僧が喚いている。チビって失礼な。お前も未成年だろう? まったく。
「うるさいわね、品物を見ているときは黙っていてくれない?
それよりも、さっきの質問、コレとコレとコレとコレ、もっとまとめて沢山ほしいの。簡単に手に入るの??」
イラッとして、生来の口調が顔を出した。追加した2品は三つ葉とニラだ。
わざと半銀を一枚、手の中で弄ぶ。
目の前でゴクリと喉がなった。フッ、他愛もない。
「増えてるし。ここにあるのは俺が採ってきてる。場所は秘密。今言った4種類ならもっと手に入る。ただ傷みやすいから、大量にあっても困らないか?」
「平気。なら、4種類合計で、半銀一枚で買える分量が欲しい。この紫の葉っぱと同じ形の葉っぱの量を多くして欲しい。何時までなら出来る?」
「明日の朝には持って来れるぜ。ただし、注文だから、採ってきたものは買い取ってもらわないと困る。明日必ず来てくれるか?」
「もちろん! でも、そうね、なら、手付けで銅貨5枚払うわ。万一明日出会えなかったら、門前町の小春亭に泊まっているから、そっちに持ってきて。虫食いなんかじゃないキレイなものよ?
私はティナ。あなたは?」
「ニッキーだよ」
「オーケー、ニッキー。なら小春亭の女将さんにお願いしておくから。小春亭はわかる? これなら安心でしょ。で、受け取りだけど、明日も同じ場所で店を開くの?」
「あぁ、毎日開いてる。しかし、一見のオレに、ぽろっと現金渡すってどうよ?」
「あら、おにいちゃん、こんな子供を騙すの? 意地悪さんだね」
わざと幼い口調で混ぜっ返してからかってみる。あらあら、真っ赤になって可愛いこと。うん、悪のりしている自覚はある。私はどこの悪役だ。
「なぁ、ティナ。お前いくつ? なんか、近所のババァと話してる感じがする」
「失礼ね! レディに歳を聞くもんじゃないわよ。ほら、お金!」
少しやり過ぎたかな。明日の約束をして、銅貨を渡して強引にごまかし、また歩き出した。
後は特にめぼしいものも見付からなかったから、宿屋に戻ることにした。朝の鐘はまだ鳴らない。今帰ると昨日の覗き魔に鉢合わせするかもしれないと思って、わざと遠回りをして帰ることにする。
ブラブラと歩いていくと、早朝から煙が上がり、金属を叩く音のする店がある。くり抜きの窓を覗いてみると、そこは金物屋さんだった。
朝の掃除のため、小者が店の前を掃除していたから、鍋や食器を買いたい旨を伝えて何時から開くか聞いてみた。
「はい、いらっしゃいませ。うちはお客さんが来ればいつでも開けます。親方は今鍛冶場なので、奥様を呼んできます。少しお待ち下さい。良かったら商品を見ていてください」
私より年下の礼儀正しい少年はペコリと頭を下げて奥に引っ込んだ。
遠慮なく商品を見させてもらう。とりあえず、最低限必要なのは、鍋大中小、フライパン、フライ返し、シャモジ、万能包丁、まな板、各種皿、コップ、あればどんぶり、ナイフ、フォーク、スプーンってとこかな?あと、バーベキューで使うみたいな焼き串を一杯。
ここで売ってない物はどこで買えるか聞こう。
「いらっしゃいませ。お早い来店って事は冒険者さんか旅の方かしら? どうぞ、沢山買ってね」
抱っこひもで子供を抱いた奥さんが声をかけてくる。朝の鐘の前の客は、冒険者か当日出発の旅人と相場が決まっているそうだ。
冒険者だと答えて、さっき考えた内容をそのまま伝える。家族ごと引っ越してきたと勘違いされたが否定はせずに流した。どうせ皿なんかそのうち割れる。予備はいくらあっても困らない。
正直、道具にはそれほどこだわりはないので、オススメで一式揃える。まな板や各種皿もシンプルなものだが一式置いてあって驚いたが、一店舗で済んで助かった。足らないものや気がついたものは、追々買い求めていこうと思う。
包丁だけは解体用があった方がいいと力説されて、普段使い様と、解体用、それと果物ナイフのような小さいものの3本を買い込んだ。
重たくなったからと麻袋をサービスしてもらい店を出る。通りにも人が増えてきていた。むろん人目につかない場所で、麻袋ごと全てアイテムボックスに放り込んだ。
改めて宿屋に戻る途中、朝の鐘が聞こえてきた。市場の関係者以外の平民は、この鐘から夕方の鐘までしか町に出入りは出来ない。
門前町に近づくにつれ、混雑が激しくなって歩きにくい。
ーあ、ヤバイ。
少し前方に、昨日食堂で宴会をしていたおっさん達が見える。旅装束を完璧に整えて、護衛と共に町を出る順番待ちの列に並んでいた。
素知らぬ顔で道の端に寄り通り抜ける。呼び止められることもなく、通りすぎた。少々自意識過剰だっただろうか。無性に恥ずかしくなり足早に宿に向かう。
その私の背中をじっと見つめていた視線にはついぞ気が付かなかった。これが、ずっと後に影響してくるなんてその時は気づきもしなかった。
カランッ
「あら、お嬢さん、お帰りなさい。市場は楽しめたかしら?」
宿に戻ると、女将さんが出迎えてくれた。私も笑顔で挨拶を返す。
「はい、明日、もし市場で出会えなかったら、私宛にお客さんが来るかもしれません。ティナ宛にニッキーという少年が訪ねてきたら教えていただけませんか?」
「あら、何か注文したのね?ならここまで配達してもらえば良かったのに。ええ、もちろん、ティナちゃん宛に、ニッキー君がきたら声をかけるわ。
あ、それとそろそろ食事の時間が終わるのよ。朝ごはんを食べるなら、急いで頂戴ね」
おう、それはいけない。明日のもしもの場合も快諾して貰えたし、私はすぐに食事にすることにした。
裏庭で手を洗って食堂に戻ると、空いている為か今日はテーブルに案内される。朝は一種類しかないとのことですぐに食事が運ばれてきた。
酸味の強い黒パンに、ザワークラウト、ウインナー、具沢山スープトマト味、飲み物はシード……あっ。
「すみません、昨日お酒飲んだら、私にはまだ早かったみたいで、気持ち悪くなってしまって。別料金でお水かお茶をいただけませんか?」
運んでくれた女将さんに言う。ほほえましいものを見る笑顔を向けられる。
「あらあら、まぁまぁ、それは大変だったわね。でも食欲があるなら大丈夫かしら? 無理しちゃダメよ。少し待ってね」
そういってシードを持ってキッチンに戻るとすぐに水をくれた。
一度沸かしたものだから、安心して飲んでね。と言って女将さんもカウンターの端っこで自分の朝食を食べ始める。
ボリューム十分で味もいい朝食、今日も大満足。
食べ終わってから、トレーを持って女将さんに話しかけた。
「ご馳走さまでした。教えて欲しいことがあるんですが、少しいいですか?」
「あら、何かしら?」
食後の飲み物を飲んでいた女将さんが、気さくに振り向いてくれた。ワインかな。赤い液体だ。
「お茶っ葉と、昨日から出ている美味しいソーセージとかはどこで買えるんですか?市場では見つけられなくて、魚類もないし」
昨日から食事のことでしか行動していない気がするけれど、食に貪欲なのも日本人の特性だしね。仕方ないよね。
「あら、食べ物に興味があるの?この辺りで茶葉があるとしたら自家製だけれど、そうね、もし買うなら貴族街の専門店かしら?
それとソーセージは自家製よ。これは売ってないから、食べたいなら自分で作るしかないわ。道具は鍛冶屋か金物屋で注文するのよ。
後、魚だけれど、ここは内陸で大きな湖もないからダンジョンドロップ品くらいしかないのよ。後は塩漬けで王都から運ばれてくるとかかしら? だからそれも貴族街の珍味専門店かしらね? 高いから私たちは買わないけれど」
おう、貴族街! 山の手ですね! 子供が行ったら叩き出されるかな。でも、魚はともかく、飲み物が水限定ってキツいんだよね。少し悩もう。最悪、自分で作るか? 鑑定もあるし飲める草も見つかるだろう。
女将さんにお礼を良い、一度部屋に戻る。歯磨き代わりに手早く浄化をかけて、また出かけることにした。
今度は買い物後半戦とギルドにいかなきゃ。
食べ物じゃないから悩まないし、早いよ!
手早く昨日の服屋さんに行き、店員さんにズボンが欲しいことを伝える。鎧下以外でズボンを履く女の人は滅多に居ないと驚かれたけれど、そこを何とかと拝み倒してオーダーメイドで3着作ってもらえる事となった。
出来上がるまでに5日かかるらしい。全額前金だと言われてそれなりにを支払う事となったが、デザインに注文もつけたし文句はない。
次に武器防具のお店に行く。
浅黒いマッチョじじいが店員をしていて驚いた。
私が何かをいう前に、うっかりオススメシリーズを着たままだったせいか、「それより良いものはないっ!!」と怒鳴られて終わりだった。偏屈ジジィめ!
……装備に目立たないように幻影魔法でもかけようかな。グスン。
朝と昼のちょうど中間くらいにギルドに着く。
朝の一波が終わったところなのか、ギルド内にはのんびりとした空気が流れていた。
「ティナ! いらっしゃい!」
カウンターに入っていたマリアンヌが私を見つけて声をかけてくる。3つあるカウンターの内、一番入り口から近い窓口だ。
「おはようございます。マリアンヌさん」
ちょうど誰もいなかったから、そのまま窓口に近づき挨拶をする。アンナさんも後ろのブースから出てきてくれているみたいだ。
「ティーナー!呼び捨て!!」
膨れっ面で口調を注意される。
「マリアンヌ、おはよう。アンナさんもお早うございます。今日も、良いですか?」
マリアンヌに挨拶し、後ろにいるアンナさんにブースを見ながら確認する。
「おはよう、ティナちゃん。もちろん大丈夫だけれど、良かったら依頼も見てきたらどうかしら?」
隙間が空いている掲示板を指差し、苦笑されてしまった。確かに、ギルドにきてブース直行ってどうかしてますよね。
誘導されるまま、Gランクの依頼を確認する。猫の遊び相手、庭の草取り、お使い、お留守番、町の中で達成出来る子供用の依頼ばかりの中で、1つだけ条件に合う依頼を見つける。
ーよし、コレにしよう!
依頼票を剥がし、カウンターに向き直るとブースにアンナさんが座って待っていた。急いでブースに向かう。
「お待たせしてすみません。この依頼を受けようと思います。あと、バスケットの引き取りと、相談に乗っていただきたい事もあるんですが…」
「はい、依頼票を見せてね。あら、草原で採れる薬草採集ね。本来は何人かでまとまって受ける依頼なんだけれど、ティナならひとりでも無理なく出来るかしらね。
薬草は5本で一束。報酬は銅貨1枚。期限はなし。一束でも納品すれば依頼完了。この依頼で良いかしら?なら、ギルドカードを貸してね」
お願いします、と言いながらカードを手渡す。続けて、作成したポーションも引き取るとのことで、同じくバスケットを渡した。
「ローポーション10個、確かに確認しました。
ティナちゃん、これから貴女が採集する薬草はローポーションの素材なのだけれど、バスケットにローポーションの素材補充は必要かしら?」
「採れるかどうかわからないのでお願いします」
困ったように笑いながら答える。まぁ、十中八九、余裕で大丈夫だとは思うけどね、一応、保険をかけておきましょう。
石橋を叩いて叩いて叩き壊す、が私の身上だし。
「それと、ドロップアイテムの買い取りをお願いしたいのですが、依頼以外のアイテムでも引き取ってもらえますか?」
「ええ、それは良いけれど、具体的には何があるのかしら?それにもよるわね」
「ネズミ肉とか、犬の牙とか毛皮とかです。ここに着くまでに狩ったものです、見ますか?」
「あら、なら少し待った方がいいわ。Dランクには牙の採集依頼もあるし、その方がお得よ。昨日、今日の回復薬の納品で随分ポイントも貯まってるし、本当にすぐにDランクまで駆け上がりそうだから」
ウインク1つつけて教えてくれる。
ちなみに、私が卸す回復薬のポイントは、
下位回復薬1個 1P
中位回復薬1個 10P
高位回復薬1個 100P
で決まったそうだ。
各種魔力回復薬はその2倍のポイントが付くから期待しててね。といわれてしまった。そのうち魔力ポーションも卸す事になりそうだ。
そして、GランクからFランクに上がるのに必要なポイントは100P。FランクならEランクへは1000Pが必要でランクがひとつ上がるごとに必要ポイントは10倍になっていく。
今日受けた薬草採集は一束ごとに1ポイントつくことを考えると、私は本当に優遇されている。
ギルドカードと中身が補充されたバスケットを返却されながら、今のポイントは70Pだから、次の納品で確実にランクアップね、と微笑まれてしまった。
何となくだけれど、ズルをしているみたいでバツの悪い思いをしながら、ギルドを後にした。




