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14.ギルド嬢との出会い



 執務室から階段を降り、受付のあるフロアに戻る。

 首からはさっき貰った鉄製のプレートが下がり揺れていた。


「おう、ティナ、冒険者登録出来たんだな」


 階下にまだいたケビンさん達が声をかけてくる。何組かギルド内にいた、他のパーティーが驚いた様にこちらを見ていて、少々気まずい。


 装備を見る限り、駆け出しか初心者かな。防御力の低い真新しい装備を身に付けているメンバーが多い。


「ケビンさん、本当にありがとうございました。お陰さまでご覧の通り、駆け出し冒険者になれました!」


 満面の笑みを浮かべて、鉄のプレートを掲げて見せる。


「おー、良かったなぁ。ん?でもよ、嬢ちゃん、登録の水晶とかはどうしたんだ?ギルマスの所にもあったのかよ?」


 登録の水晶??何の事だかわからない質問をされて、不思議な顔をしてしまった。


「あらあら、ジョンさん、ギルドの何処に何があるのかは、機密事項ですわよ?」


 真後ろから妙齢の女性の声がして固まった。


「おう、アンナ!久しぶりだなぁ、堅いこと言いっこなしだぜ」


 ジョンさんが嬉しそうに手を振っている。他の面々も、この人に会えて嬉しそうだ。


「チーフ、お疲れ様です。お昼の休憩はもう終わりですか?」


「ええ、マリアンヌちゃん。ギルマスに呼ばれてね、切り上げてきたのよ。

 Cランクパーティー、スカル・マッシャー。マスター・クルバがお呼びです。戻ったばかりで申し訳ないけれど、執務室までお願いできるかしら?」


 アンナさんは私の肩を抱いて、マリアンヌの方に誘導しながらケビンさんにそう言う。言い方は問いかけだけど、これは、実質強制だね。

 隣にきたアンナさんは、濃い黄金の髪に紅の瞳。二十代後半の落ち着いて上品なご婦人だ。緩くまとめ上げた髪からは良い匂いが漂っている。


 おう、ケビンさん達が嫌な顔してるわ。なんでだろう?


「ああ、アンナがそう言うならすぐに向かおう。ただその前に、少しティナに渡したいものがある。構わないか?」


 頷くアンナさんを確認して、ケビンさんが近づいてくる。

 手にはどことなく見覚えがある小袋を握っていた。


「あー、ティナ。今回は本当に助かった。

 無事冒険者になれたようだし、これからこの町を拠点にするなら、何かあったら声をかけてくれ。出来るだけの助勢はする。

 これはクレフ殿から預かったものだ。思うところはあると思うが、受け取って欲しい」


 小袋を差し出してきた手を見ながら、これはなんだったかな?と考える。小袋を見つめる私を見て、これが何だか理解していないことに気がついたのだろう。ケビンさんが補足してきた。


「『女神(ギル)慈悲(たち)』の売買代金だ。クレフ殿とも話し合ってな、ティナがいなければギル達を町に連れていく事はおろか、下手をしたら森で全滅していた。

 だからこれはティナに全額渡すと決めたんだ」


 え、そんなものいらない。


「ティナ、そう固まるな。遠慮することも、気に病むこともない。正当な権利だ。

 実はな、これをお前に受け取らせる事までが、クレフ殿から受けたお前の護衛依頼の内容なんだ。ほら、手を出せ」


 私の右手に無理やり袋を握らせる。突き返そうと思ったけれど、それを制するように、マリアンヌがケビンさん達の護衛依頼終了を認定する。


 それでも小袋を返そうとする私を、アンナさんが柔らかく止めた。


「あら、ダメよ。ティナちゃんよね?

 これは貴女への正当な報酬。突き返したら、スカル・マッシャーさんたちのプライドを傷付けることになるわ。

 さあ、マスター・クルバから、ティナちゃんにこのギルドの事を教えておくようにと指示されているのよ。

 お姉さんと、少しお話しましょ?」


 視線でケビンさん達にさっさと行け!と指示しつつ、私を受付カウンターに誘導する。

 ケビンさん達も心得たもので、私達に手を降り次々と階段を揚がっていった。


「人間を売り買いした代金とか、もの凄く抵抗あるんですけど…」


 ゴミでも摘まむように、小袋をぶら下げたままアンナさんを見上げると、困ったように苦笑される。


 受付カウンターの脇、ブースで囲われた、対面のローカウンターに三人で移動し席につく。周りからの無遠慮な視線は遮られていた。


「今は暇な時間だから、こっちで少しお話しましょうか?

 私はアンナ。このギルドの受付嬢を取りまとめているの。と、言っても、私を含めて5人しか居ないけれどね。

 マリアンヌは見習い受付嬢よ。落ち着いている時間帯に研修しているけど、まだまだなの。これから宜しくね」


 優しく挨拶するアンナさんの横で、ニコニコ笑ってマリアンヌも頭を下げてくる。


「Gランク冒険者のティナ・ラートルです。これからしばらくお世話になります」


「ええ、あと、マリアンヌには後からマスター・クルバが話すと思うけれど、例の件の担当は私かマリアンヌになるわ。納品の時は遠慮なく声をかけてね。いつでも、少量でも、もちろん大量でも大歓迎よ。

  出来たら、これくらいの時間だと、人目にも付きにくいし、お互いに助かるかしら?」


 挨拶をすると声をひそめて伝えてくる。このブースは弱いが盗聴防止と覗き見防止の魔術がかかっているから高額商品の受け払いや訳有り依頼報告なんかによく使われているそうだ。


 暇な時間なら冒険者達が受付嬢と雑談するのにも使われているから、幼い私が、同年代のマリアンヌや、アンナさんになついて、おしゃべりに興じていると装えて、ちょうど良いと教えてもらう。


「えーっと、ティナちゃん、それ、なんで受けとるの嫌なんですか?早く仕舞った方が安全ですよ??」


 身から離して置いていた小袋を視線で指しながら、マリアンヌが不思議そうに尋ねてくる。

 対してアンナさんは、何かを勘づいているのか、宥めるような口調で説得してきた。


「ティナちゃん、例えそれが不本意でも、正当な報酬は受け取らなくてはダメよ?冒険者(ここ)の秩序が乱れるわ。

 もし、本当にどうしても受けとりたくなかったら、そのお金の原因となった出来事を受け入れてはいけなかったの。

 対応策としては、町に着く前に逃がすとか、そもそも全員見捨てるとか、始末するとかになるかしら?」


 ごく当たり前に血生臭い事を言うアンナさんに緩く首を振り否定する。馬鹿(ギル)達を逃がすなんて出来ないし、そもそも大人組全員を見捨てるとかあり得ない。ましてや殺すなんて、出来っこない。


ん、違和感が…?

ヤバい! これ、ひっかけだ!!


「あの、始末するって、そもそも出来るわけないです」


 わざと気弱そうに言う。

 危ない、危ない。

ここで流していたら、今回のメンバーと何らかの形で戦えると認めるようなものだ。慎重に言葉を選ばないと、墓穴掘るわ。


 私は駆け出し冒険者。後衛だと思われているハズだから、ボロが出ないように、いつでも警戒が必要だ。

 こっそり心の中で五つ、呼吸を数えて落ち着こうとする。


「だよね!マスター・クレフはお父さんより強いって噂だし、ケビンさんたちは、もうすぐAランクも狙えるかもって噂の人達だもんね♪」


「マリアンヌ、軽口は身を滅ぼすと何度教えれば頭に入るのかしら?ギルド所属パーティーの情報を他に広めるのは、禁止事項よ」


 無邪気に同意したマリアンヌをアンナさんがたしなめる。お陰で時間が稼げたから冷静になれた。


「マリアンヌは後で個別にお話しましょうか?

 ティナちゃんには、どこまで話したかしら?

 ……あぁそうね。受け入れてはいけないまでだったわね。

 だから、クレフ殿やスカル・マッシャーさん達と一緒に市場に行った、そして引き渡した時点で、貴女には権利が発生したのよ。

 そして、クレフ殿達が相談の上、今回はティナちゃん、貴女に全額受けとる権利があると判断したの。

 しかも、クレフ殿は貴女に全額渡す所までをスカル・マッシャーに対する依頼とした。

 だから、貴女がそのお金を受け取らないと、スカル・マッシャーが任務を失敗したことになるわ。

ね?なにも言わずにソレを仕舞いなさい」


 マリアンヌを、軽く睨んで釘を刺してから、切々と私の説得を続ける。


 これは私が奴隷慣れしてないって報告が来てるからだろう。ギルド間だと、通信機能でもあるのだろう。私に対する対応が的確すぎる。


 受け取りなくないなぁ、でもなぁ。


 しばらく迷ってから、バックにそのまま放り込んだ。

 今回は仕方ないと思おう。どうしても嫌になったら、どっかの公共団体にでも寄付してしまえばいいさ。教会とか、孤児院とか、養老院とか、探せばこの世界でもあるだろうし。

 …タイ◯ーマスク的な?うん、なんだか怒られそうだわ。


 私がバックに小袋を仕舞うことを確認して、アンナは一度大きく笑うと、泣きそうになっているマリアンヌに向き直った。


「あらあら、マリアンヌ、何をそんなに悲しんでいるのかしら?」


 さっきのお話合いとらやからですよ。そんなに怖いのかな?


「仕方ないわね。では、マリアンヌ、貴女がティナちゃんに冒険者規約の説明と、簡単な利用法を説明なさい。

 きちんと出来たら、お話しは免除してあげる」


 そういってアンナさんは隣のカウンターに来た冒険者の相手をするために立ち上がり、潜り戸からカウンターの中に入っていった。

 受付で、にこやかに笑みを貼り付け、アイテムの確認をし始めた。


「えっと、ティナちゃん、では規約とギルドの利用法を説明させて貰います。……ドキドキする。うまく出来るかな……」


 さっきまでとは違い、緊張と喜びに頬をひきつらせながら小さく呟いている。


 見習いって言ってたし、もしかして初めての説明?

 頑張れ、新人さん!

 ついつい、昔を思い出してもほっこり応援する。


「えっと、まずは規約ですが

 理由のない冒険者同士の私闘(けんか)は駄目です。殺しはもっと駄目です。

 ギルドの依頼を受けてすっぽかしてはいけません。

 ギルドの要請や命令は出来るだけ聞いてください。あんまりにも言うことを聞かないとペナルティが発生することがあります。

 あと、何かあったっけ?う~ん」


 お客さんの前で腕を組んで首を傾げて唸り始める。可愛いけど、それ駄目よ、マリアンヌちゃん。


「……忘れちゃった。まぁ、いっか。」


 良くないから!!

 後でこっそりアンナさんに確認しておかないとダメかも。


「次に利用法ですが、壁にある掲示板から受ける依頼の依頼票を取り、受付に提出していただきます。

 お手持ちのギルドカードに依頼内容を登録し受付完了です。

 あとは内容に記入の条件を満たしてギルドに提出してください。

 達成状況を確認して報酬を支払います。

 ランク毎に受けられる内容が違うので、掲示板のランクを確認して内容を見てください。当ギルドでは、左から低ランク用の依頼となっています」


 私、頑張った。と言わんばかりの笑顔を向けられる。マリアンヌは後ろを振り向き、アンナさんを見るがまだ接客中だ。ギルドカードを預かってるし、そろそろ終わるかな?


「えっと、ティナちゃん、何か質問はありますか?」


 こちらを再度振り向き、確認してくる。

 うん、完璧だと思ってるところ悪いけど、少し突っ込ませてもらうね?ごめんね。

 私はピンと背筋を伸ばして気合いを入れ、笑みを浮かべて話し出す。


「マリアンヌさん、ではいくつか確認があります。

 まず、依頼ですが受けた後に何らかの理由で未達成となった場合、ペナルティはありますか?

 また、依頼達成の確認はその依頼を受けたギルドのみでしょうか?護衛依頼などでは、おそらく到着地での達成報告が認められているでしょうけど、それ以外の採集とか魔物(モンスター)退治等も良いのでしょうか?」


「え、あ、はい!」


 次々と質問する私に目を白黒させながら、一生懸命答えてくれる。


「えっと、まず、未達成の場合ですが、先払いの報酬がある場合は3倍?だったかな、返しになります。で、えーっと、報告ですが…」


「あらあら、マリアンヌ、落ち着きなさいな。

 ごめんなさいね、ティナちゃん、まだマリアンヌには少し早かったみたい」


 接客が終わったアンナさんがマリアンヌの後ろから入ってきて、空いていた隣の席に座る。


「うふふ、ティナちゃん、しっかりしてるのね。安心だわ。

 ここからの説明は私が引き継がせて頂きます。よろしいかしら?」


 マリアンヌの背中に手を当てたまま、アンナさんが尋ねてくる。

 望むところです。よろしくお願いします。


「まずは未達成ペナルティですが、二種類あります。ひとつは先ほどマリアンヌが話した、先払い報酬の3倍返し。そして、ギルド評価のマイナスです。

 ランクの説明はもうしましたか?

 ランクは依頼達成時に付与されるポイントに対応しています。一定以上貯まればランク・アップ、一定以下になればランク・ダウン。受けられる依頼を増やすためにも積極的にランク・アップを目指すことになります」


 うん?何も聞いてませんが??


 小首をかしげる私を見て、どうやら説明していないと判断したのだろう、軽くマリアンヌを睨んでから説明を始めてくれる。


「どうやら説明を受けていないようですので、こちらから再度確認のためご説明いたしますわ」


 ため息混じりに解説してくれる。どうやら長くなりそうだと判断したのだろう、奥で書類仕事をしていた受付嬢を呼んでカウンターを任せている。


「冒険者にはランクがあります。

 最低がGで最高がSSの9つね。未成年者はGランクからのスタート、成人はFランクからのスタートとなります。

 Gランクには、ギルド内の宿泊施設利用許可、世話役の斡旋等優遇措置があります。

 ちなみに、Gからのスタートの未成年者の場合に、たとえランクが上がっても、成人するまで優遇措置は続きます。

 ここまではいいかしら?」


 無言で頷く私を確認して先を続ける。

 マリアンヌが隣で口を半開きにしてアンナさんを見つめている。


「自分のランクより下のランクの依頼は全て受けられるけれど、低ランクの依頼はポイントも報酬も少ないから効率的とは言えないわね。ついでに受けるってスタンスでいてもらえると助かるわ。

 そして、依頼の達成報告だけれど、これは依頼毎に報告場所が決められています。多くは受けたギルドだけれど、護衛依頼なら目的地、一部の討伐や素材納入依頼だと、国単位でギルドは全て可能と言うものもあるわね。

 依頼を受けるときに確認してもらえるかしら?

 他にご質問や疑問点はありますか?」


「わかりました。丁寧な回答有難うございます。今は特に質問事項はありません」


「では、私からいくつか補足させていただきます。

 まず、ティナさんは冒険者であると同時に、ギルドの臨時薬剤師という立場でもあります。

 回復薬を納入して頂く都度、品物の内容によって、ギルドの評価ポイントを付与させていただきます。これにより一般の冒険者よりも遥かに早くランク・アップ出来るでしょう。

 ただし、未成年者の間は最大でもDランクまでしか上がることが出来ません。

これは申し訳ないですが、ご了承下さい。成人に達し次第、貯まったポイントのランクに上げさせていただきます。

 また、無用な嫉妬ややっかみ等による余計な弊害を避けるためにも、世話役をこちらで設定させていただきました。これは、ティナさんを送ってきたスカル・マッシャーさんにお願いする予定です。世話役の話が広まるまで多少不愉快な思いをされるかもしれませんが、短期間ですので我慢してください。

 それと、冒険者、町の住人、商人、貴族等で、直接的に手を出してくる愚か者がいた場合、当ギルドが相手になります。すみやかに報告をしてください」


 最後は迫力のある笑みで言いきられてしまった。なんか出来るキャリアウーマンって感じでカッコいいわ。


「え、あ、や、薬剤師??」


 詳しいことを聞いていないマリアンヌが混乱している。こっちは典型的新人さん。成長が楽しみ。


「そうよ、マリアンヌ。貴女のお母様の負担があまりにも大きいからと、マスター・クルバが無理を言ってティナさんのご両親にお願いしたそうなの」


 おや、そう言うことになってるのか。嘘も方便ってやつかな?


「~~っん!! ティナちゃん、ありがとう!!

お母さん、ずっと無理して薬を作っていて、最近じゃ、魔力枯渇で寝ているか、薬を作っているかだったの!

 わたしにはポーション作成技能がないし、お母さんも下位回復薬(ローポーション)までしか作れないし。

 何とか、町の商人さんから仕入れようにも、ギルドで売っている何倍もの値段を吹っ掛けてくるし!

 しかも、ギルドの数倍の報酬で懇意の薬剤師さんをどんどん引き抜くし、本当にどうしたら良いのかと!!」


 身を乗り出して、両手を握りそう話す。


「ティナちゃんは本当にすごいね。チーフと対等に話すし、お父さんからも頼りにされてる。

 あ、そうだ、この町に着いたばかりだよね?

今度の休みに一緒にお店巡りでもしようよ!

ずっとここにいたから、私、すごい詳しいよ! 欲しいものとか教えてくれたら、どこでも案内しちゃう!! とっておきの美味しいお菓子屋さんとか、食べ歩きしよ!! 」


 テンション高いなぁ、本当に嬉しいんだね。ご両親思いの良い子。後ろにいるアンナさんも微笑ましい生き物を見る目になってる。


「ありがとうございます、喜んでお願いします」


「えー、ダメだよ、ティナ。もっと砕けて!ほら、呼び捨てで良いから、これから、仲良くしようね!!」


 むーっと膨れっ面でさらに身を乗り出す。あらら、膝がテーブルに乗っちゃってる。行儀悪いよ。


「マリアンヌ、落ち着きなさい。

 ティナさんごめんなさいね。

 あら、お客さんが混んできてるわね」


 ちらりとカウンターを見ると4、5組の列が出来ていた。

 私はアンナさんにチラリと目配せをする。


「マリアンヌ、私はティナさんともう少しお話があるの。カウンターのヘルプに入ってくれないかしら?」


 マリアンヌは元気よく返事をすると、私に小さく手を降り、カウンターへ小走りで向かっていった。


「ありがとうございます。アンナさん、追加で少しお伺いしたいことが出来てしまいました」


 軽く頭を下げながら続ける。繁忙時間に入っているし、さっさと終わらせねば。


「先ほど、マリアンヌさんが話していましたが、回復薬の不足はそれほどまでに深刻なのですか?」


「ええ、正直の所、かなり厳しいわ。

回復薬の不足から、受ける依頼のランクを下げたり、そもそも受けなかったり。今では討伐が進まないだけではなく、ドロップ品すらも品不足気味よ。このままではいけないと思いながらも、ここの立地的に他国のギルドからの輸入に頼るわけにもいかず、手をこまねいている状態ね」


 一転して暗い表情で話す。しかしそんなことまで、部外者(わたし)に話していいのかな?


「だから、貴女の来訪と所属は凄く凄く嬉しいのよ。プレッシャーに感じないで頂戴ね。ただ出来るなら、ひとつでも多く回復薬を卸して貰えると嬉しいわ」


「わかりました。では、マスター・クルバに下で素材を受け取るように言われましたし、出来たらポーションの素材を頂けませんか?

今日は宿を探して休むだけですし、下位回復薬(ローポーション)くらいなら明日までにいくつか作れます。駄目でしょうか?」


 そう私が聞くと、ちょっとだけお待ち下さい。といい置いて、アンナさんは席を外し、本当にすぐ戻ってきた。


 手にはピクニックにでも行くようなバスケットを持っている。手渡されるまま受け取って、中を覗くと素材がきれいに整理され入っている。


「今後、納品の際はそのバスケットに入れて持ってきてね。ポーション素材くらいならいつでも補充可能だから遠慮しないでちょうだい」


 そういって見送るアンナさんと、冒険者の対応に追われながらも、ギルドを出る私を見つけて、またね!!と大声で挨拶し手を降るマリアンヌに見送られ、町に繰り出した。






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