第一話「謎探し?」
クトゥルフ神話trpgでプレイした内容の小説バージョンです。
今回はあまり怖い描写はないです。
あまり上手く書けてはいないですが楽しんで読んで下されば幸いです。
これは、悲しい物語。
ある日、私の探偵事務所に一通の手紙が届いた。
それは世界的に有名な「ギャツビー」と言う名の大企業の成功者からのものだった。
「何かしら。なんでこんなものが私のところに」
郵便配達の人が間違えて入れたのかと一瞬思ったが、このあたりに大企業の社長や政治宅はない。
宛名もしっかり「峰内様」と書かれているところから、間違いはないようだった。
「私、何かしたかな」
個人で私立探偵を経営している峰内だが、私立探偵といっても、基本は一般の人向けに相談を受けているだけだし、唯一何かあるとしても、一度政治絡みの事件を解決したくらいだ。
封筒を開け、手紙を取り出すと、中にはこれまた達筆な字でこう書いてあった。
『前略
数日後にパーティーをします。是非とも我が家にお越しください』
いかにも金持ちがやりそうなことだなぁと思いながら読み進めると、ご丁寧に一番下にパーティー会場であろう住所が書いてあった。
「嫌な予感がするんだけど、気のせいかしらねぇ」
世界的に有名な「ギャツビー」という人物は、あちらこちらの大物の政治家や大企業とつながり、ニュースなどに大々的に取り上げられることも珍しくないと言う事実があるのにもかかわらず、誰一人としてその姿を見たことはないという、都市伝説にも近い人なのである。
故に一部の人間からは『姿なき成功者』と呼ばれている。
それほどのものが、しかも一般人にこんな招待状を送る意味が、いまいちわからなかった。
誰もあったことがないように、私とて例外ではなくあったこともないし、ましてやこんなパーティーに呼ばれるほど仲良くっなた覚えはないので、この手紙はあまりに不思議だった。
しかし、送られてきた手紙にはきちんと探偵事務所の名前まで記入してある。これは何かの仕事かもしれないなと思わなくもない。
「ふむ、そうね。せっかく招待されてるんだし、息抜きついでに行ってみようかしら」
そう言ってとりあえず手紙をバックの中にしまい、部屋に戻って準備を始めると、記載されている住所へバイクを走らせた。
記載された住所を頼りにバイクを走らせていった先には、大きな洋館がそびえ立っていた。
どこから見てもこの場が日本であることを忘れてしまうほどに美しい。
しかし、あのギャツビーの家にしては少々小さいようなきもするが。
峰打薫はバイクを近くの駐車場に止めると、荷物を持って館の入り口に戻ってきた。
歩いて洋館の入り口の前に戻ってくると、スーツを着た男と、その近くに停車したバスと黒い車が目に入った。
バスはとおりからこちらに来ると静かに止まり、扉が開いて一人の男が降りてきた。
黒いスーツでポケットに手を突っ込み、なんというかめんどくさそうな、それでいてイライラしてそうな顔でたばこを携帯灰皿に突っ込んでいく。
その男はバスから降りるとふと前に止まっていた黒い車に目をやり、何を思ったのかその前にいくと。
「、、、ちっ」
ここまで届くほど盛大に舌打ちをした。
黒い車を見るとどうやらお金持ち関連の車だったようで、男はそれが気に食わなかったのだろうか。
その様子を見て峰内はつい顔をしかめてしまった。
(えー、そんなあらかさまに)
苦笑気味にそう思うも、口は出さずにその横を通り過ぎようと足を進める。
「ちょっとそこのあなた、あまりにも失礼ではなくて?」
どこかいらだったような、それでいて凛とした綺麗な声が峰内の耳を打った。一瞬心を持って行かれそうになり女性の声を聞いた瞬間、峰打はつい足を止めてしまった。
(きれいな声……)
そう思って振り向くと、黒い車の後ろの窓が開けられて、きれいな女性が眉間にしわを寄せて男をにらんでいた。
女性と男がにらみ合う。
峰内はそこに来てようやく自身の危機に気付いた。
(な、なんか今、私は面倒ごとに巻き込まれようとしてるんじゃ)
探偵やらなんやらやっていると、面倒ごとや事件に巻き込まれることは良くあるのだが、まさか館に入る前に面倒ごとに巻き込まれるなんてことにはならないよね。なんていう思考を固まったまま巡らせる。
しかし、嫌な予感というのは峰内を見逃してはくれなかった。
「なんのことでしょうね?」
男はしらばっくれてわかりやすくそういう。はたから見れば挑発しているように見えて仕方がない。というより挑発しかしてないのでは……。
「あなた今、私の車を見て盛大に舌打ちをしてくれたじゃないの」
対して女性はそれに対していらいらしてはいるものの気丈にふるまっている。
「さぁ、なんのことやら。こんなところに車を置いておくそちらが悪いのでは?」
完全に自分は悪くありませんオーラ。どうやら黒い服の男は意地が悪いらしいと、峰打はここで印象を硬くした。
「言いがかりも甚だしい、あなたの方が失礼だと私はっ」
女性は我慢がならなくなったのか声を荒げ、言い争いが始まってしまった。
しかも、見ている限り二人が二人とも譲ろうとしない。
これは知っている。このままだときりがなく言い争いはヒートアップして、、、。
(あー、止めないとまずいかなぁ)
ある程度で終わる気配があるならほっておいてもいいかと思ったのだが、どうやらそう甘くはなかったらしい。
仕方なく峰内は「あのー」と止めに入ろうと振り返りかけたその時。
「お待ちしておりました」
門の入り口からメイド姿の女性が姿を現し、礼儀正しくお辞儀をしながらそう言った。
それを機に言い争いはピタリと止む。
メイドはその様子を気にすることもなく続けていった。
「ようこそわが館へ。皆様がいらっしゃるのをお待ちしておりました。中へご案内いたしますので、こちらへどうぞ」
そうして綺麗なメイドは門の中へ消えてゆく。
メイドの登場によって男と女性は言い争いをやめ、メイドの後ろから黒い男が続き、先ほどの女性が車から降りて、門の中に入っていった。
峰内は助かったとばかりに詰まっていた息をはぁと吐き出した後、そのあとに続いて門の中に足を踏み入れた。
##########################
館に入ると、目の前に広がっていたのは今まで見たこともないような『お城』だった。
その中でもすごかったのは正面に見える大きな螺旋階段。
洋館によくあるような、中央から門へ続く大きな正面階段に、サイドから曲線を描きながら中央で合流する形の螺旋階段。
まるでここが日本であることを忘れてしまうような、そんな美しい作りだった。
「うわぁ、さすが綺麗だなぁ」
次に目に入ったのは、エントランスにいる先客だった。
先ほどの黒服は部屋の隅でタバコを吸っており、女性の方はどこかで見たことのあるような大人相手に何か話をしている。
(あの人、どこかで見たことあるような?)
どこで見たのか、多分テレビではなかっただろうか。
「んー、思い出せない」
たぶん、政治に関係する人だったようなきがする。
ここで挨拶でもするのが礼儀なのだろうが、見た所、それぞれが誰かに話をしていて入る隙はないように見える。
とりあえず、スーツを着た男性に話しかけてみた。
「どうも。初めまして。峰内と申します」
そう会釈すると、男性はこちらをメワドくさそうに一瞥したあと「どうも」と一言めんどくさそうに吐き出しただけで、目線をエントランスの方に戻してしまった。
とりあえず、灰皿を挟んだ隣に並んで、同じようにエントランスの中を眺める。
「あなたも招待されてここに?」
答えてくれるかはわからないが、峰打は男性の服装から何やら、視線の先でぺこぺこしている人たちとは違う雰囲気を感じて訪ねた。
「あぁ、まあな。こういうところは庶民肌に合わないんだがなぁ」
「そうですねぇ。私仕事でもこんなところに来ることは少ないんですが、慣れなくて」
男の言葉につい苦笑して答える峰内。
エントランスでは先ほど見た女性が、別の男性に会釈しているのが見える。
よく見てみれば峰内と年は変わらないように見える。
「大変そうねぇ、まだ若いのに」
(誰かの代理ってちらっと聞いたけど、令嬢ってのも、苦労あるみたいね)
と、そんなことを考えていると、階段から1人の少女が優雅に降りてくるのが目に入った。
階段の手すりに手を添え、フワッとした淡い色のドレスを見にまとい、髪は長く、後ろでまとめられている。
コツコツと音を立てて階段を降りるにつれ、エントランスのざわめきは静まり返っていった。
そして彼女が中央部分にまで降りると、わきに先ほどのメイドをひかえさせたままその口を開いた。
『お待たせいたしました。ようこそ我がギャツビー邸へ。私の招待に応じ、はるばるこのような場所へ来ていただき、誠に感謝します』
流暢な日本語が流れ、その声はエントランスの隅から隅まで響き渡った。
美しく、言葉を発しているだけだというのに、まるで音楽を聴いているような感動をかすかに覚えた。
(すごい、、、綺麗〜)
つい頬を赤らめ見入っていると、再び彼女が口を開く。
『招待させていただいたところ、申し訳ないのですが、パーティーは後日三日間開催することとなります。きょうはその前に、皆さんにお願いがあって、この館にご招待させていただきました』
彼女はそう言うとすっと目を閉じ、再び階段を下り始める。
その一挙一動が美しいことこの上ない。
『お願いと言いますのは、この館に隠された謎、伝説でも構いません。それをあなたがたに探して欲しいのです』
コツコツと音を立てながら降りてくる彼女は、エントランスにいる全員の顔を確かめるように顔を巡らせると、階段を下りきり、まっすぐこちらにいった。
『期限はパーティーが終わる3日後までとさせていただきます。』
謎解き、、、。
峰打は嫌な予感が当たったことを、ここで確信に変えたと同時に、どうしようもなく帰りたい衝動に駆られた。
がしかし、何か事情があるようなので帰るわけにもいかない。
(んー、正直嫌なんだけどなぁ。面倒だし。)
げっそりしてる峰内をおいて、彼女は最後に「何か質問はありますでしょうか」と告げた。
峰打はそっと手を挙げる。
「館の謎を探すとのことですが、それは館のどこを探してもいいということでしょうか」
『ええ。ただし、この館にある倉庫には近づかないように。外にはSPが立っているのですぐ分かるかと思いますが、その倉庫以外であれば、この館のどこを探しても構いません』
「倉庫?」
『館の外にある、大きな倉庫です。あそこには私の個人的な私物が入っておりますので、なるべく近づかないようお願いします』
「質問がある」
峰内ではない。それは眉間にしわを寄せたスーツの男性だった。
やけに不機嫌そうにタバコの火をねじけしながら、男は続けていった。
「謎と言うからには、謎と言う根拠となるものがあるんですよね?」
そうして一歩前に進み出る。
しかし、ギャツビーは少しも同様などすることはなく、淡々と言葉を発した。
『どういう意味でしょうか』
「我々を呼んで探して欲しいものは、伝説や謎だとおっしゃいましたね。探し物をして欲しいや見つけて欲しいなどではなく、あなたははっきり謎を解いて欲しいと言った。そういうからには、我々を呼んでまでといて欲しい謎が、どんな物であるかわかっているのではないでしょうかと、伺っているんです」
その発言に、私は確かにと内心その男に同感を抱いた。
彼女は曖昧なものではなく、はっきりと物事をいいきり、かつどうして欲しいかも提示している。
のにもかかわらずその先の説明がない。
どういった謎であるか、どの部類のものなのかさえ、彼女からは一言もなかった。
そんな些細なところに気づいて、その上ここまで強く申し出るこの男は何者なのだろうと思いながら、峰打も手を挙げ前に進み出た。
「私もそれは気になるところです。せめて、どの部類のなぞであるか、あるいは伝説なのか謎なのかをお教えいただければ幸いです」
しかし、そんな進言も虚しく、彼女は男と峰打の顔を交互に見た後、クスリと笑い、そっけない返事を返した。
『それを探すのも、謎探しのうちに入るのですよ?』
峰打は何も言えず、黙るしかなかった。
かすかに面白がっているような微笑に、これ以上は語らないという雰囲気を出されてしまえば、これ以上突っ込む意味もないのだから。
男もこれ以上聞いても無駄だと悟ったのか、タバコを一本取り出しそれに火をつけるると、数歩下がって黙り込んだ。
『他になければ、二階にそれぞれのお部屋をご用意させていただいております。どうぞご自由にお使いください。晩餐は用意が出来次第、メイドに呼びに行かせますので、それまではごゆるりとおくつろぎください』
ギャツビーはそう言うと階段を上って姿を消した。
「それではみなさん、二階の部屋へ御案内いたします。こちらへどうぞ」
間も無くそう言ってメイドが先を生き、階段を上っていく。
それを見てから、峰内はなんとなく気になっていたエントランスを一周じっくり見て回ることにした。
続く。。。
とりあえずこんな感じで続きます。
読んで下さりありがとうございました。