ぼく
きみは何色だろうか
夕陽が差し込む教室。グラウンドから聞こえる声。茜色に染まった人影はまさに青春を物語っていた。葵はたった一人で窓辺に腰掛け、ただただ時間が過ぎるのを待っていた。
昔から一人でいる事は好きだ。好きだというより慣れただけかもしれない。その原因の一つにこの名前がある。葵という字は女にも使えるから、男子である葵には女の子っぽくていやなのだ。つい引っ込み思案になってしまう。友達も少ないからもちろん色恋沙汰も起こらない。だからといって淋しいわけでもない。いや、でもホントはちょっぴり淋しいかもしれない。
葵は今年高校に入学した。ピカピカの1年生だ。入学に伴って部活の勧誘は付きものだ。まわりのクラスメイト達はほとんど部活に入部し、各々の分野で日々活動を勤しんでいる。それに比べ葵は入部すらしないからいわゆる帰宅部だ。退屈ではあるが誰にも縛られない時間を過ごせる。
『それはそれでいいのかもしれないな』
そんな風に思い始めた頃、葵に転機が訪れたのだ。
『ねぇ。うちの部に入らない?』
それはいつか見たような、見覚えのある顔だった。
ぼくと同じ色だろうか