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第三話 青年アラケルと円卓の十二人

 茶色の髪をした青年アラケルの説法が終わり、大聖堂の一角。

 アラケルとウォレスは話し合う。


「つまり……グラウフラルにあるヘレン教の力でもって、グラウフラル軍のリリオット侵攻を防いで欲しい、というのですか。リリオットの教師ウォレス殿」

「まあそんなところじゃな」

 話のスケールのあまりの大きさに、アラケルは面食らう。


「一応、教師フルフィウス殿に御相談はしてみます。しかしあまりあてにはしないでもらいたい」アラケルは釘を刺す。

「というと?」

「この国には、リリオットを一段下に見る者が大勢いるのです。言い方を変えれば、大国グラウフラルは精霊採掘で潤うリリオットの繁栄を妬んでいるとさえいえます。建前上はあなたともこうやって対等にお話していますが、教団の中にはリリオットの教師を『田舎教師』と呼んではばからない者までいる」


「リリオットの自治権が蹂躙されても、なんとも思わない者が多い、ということかの」


「そういうことです。無論、『馬要らずの馬車』などの便利な発明品はこちらでも重宝されていますが……それによってリリオットを全面的に擁護できるほどではない」


「ふむ」

 ウォレスは考え込む。

 

 親愛の印に、アラケルは頭を覆うフードを外し、素顔を曝け出す。

 光を浴びたその顔と茶色の髪には、機知と聡明さが伺えた。

 

「個人的に同情はします。リリオットはリリオットで、八十八年間の自治を行ってきた。それがいま半壊し、グラウフラルにつけこむ隙を与えている。悲しいことです」

 アラケルは続ける。

「しかし、この国の事情も理解していただきたい。『大国』と名を冠してはいるものの、グラウフラルの力は『盟約』によって弱まりました。否。弱まり続けています。国内の雇用も治安も悪くなる一方です」


「グラウフラル家の後ろ盾を得て、公騎士団を擁する貴族パテルーシャ。傭兵リソースガードを擁するソウルスミス。市民という立場を隠れ蓑としたエフェクティヴ。そして我らがヘレン教。皆それぞれに利害があり、得失がある」


「『盟約』は――あるいは今回のリリオットの半壊に伴い――破棄されるかもしれません。全ては≪円卓の十二人≫が決めることです。そのうちの一人が、わが師フルフィウスなのです」

 アラケルはそれをとても誇らしげに言った。


 儂が思うに。とウォレスは呟く。

「教師フルフィウスは良い弟子を持ったな。事情はよく分かった」

「分かって頂けましたか」


「ああ、最終的には実力行使しかないということが、よく分かった」

 アラケルは愕然とする。


「まさか……ご冗談でしょう?」

「嘘や冗談で済むなら、そのほうが良いが……話を聞くにその『円卓の十二人』を早急に『説得』しなければならんのだろう? 残念じゃが、一人ひとりを尋ねて回るには数が多すぎる。手荒な真似はしたくはないが、あまり手段は選べんな……」


 顔が青くなるアラケル。自分の説明不足のせいで万が一の事が起きてしまったら、教師フルフィウスに何と釈明すればいいのだろう。


「ま、待って下さい。十二人とはいいましたが、実際にいるメンバーは六名、六名だけです!! 解決は話し合いで!! ヘレン教は暴力反対!!」


「なんじゃ、六名か。それなら話は簡単じゃな。リストを作ってくれ。儂が全員に会いに行って『説得』してこよう」


「お、穏便に、ですよね」「そう、なるべく穏便に、じゃ」


----


円卓の十二人

・王族 1名 (グラウフラル家グラウフラル)

・貴族 1名 (パテルーシャ家サテレス)

・ソウルスミス 2名 (本部長ウェトゥム、傭兵長ベルル)

・エフェクティヴ 1名 (有力者アケルブ)

・ヘレン教 1名 (教師フルフィウス)

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