第十三話 リリオット-グラウフラル間 臨時同盟
かくして≪円卓の十二人≫は集められた。
円卓の十二人
・王族 1名 (グラウフラル家グラウフラル)
・貴族 1名 (パテルーシャ家サテレス)
・ソウルスミス 2名 (本部長ウェトゥム、傭兵長ベルル)
・エフェクティヴ 1名 (有力者アケルブ)
・ヘレン教 1名 (教師フルフィウス)
六名の者が一つの円卓につき、迫り来る竜の脅威について話を交わす。
既存の長弓兵の大隊を繰り出したところで、竜に矢を当てることもままならない。そもそも地上に展開した兵士は竜の操る雷撃によって駆逐されてしまう。だがリリオットの精霊武器ならばどうか。議題は自然に、ソウルスミスの提供する最新の武器の話、リリオット半壊と復興、それに伴う武器流通の話などへとシフトしていく。
有力者アケルブは言った。「リリオットには鉱夫たちの力がある」
教師フルフィウスは言った。「リリオットには回復術の使い手がいる」
ソウルスミス本部長ウェトゥムは言った。「リリオットには大量の精霊武器がある」
リソースガード傭兵長ベルルは言った。「リリオットには良い傭兵たちが揃っている」
パテルーシャ家サテレス・オービットは言った。「我々はリリオットの復興を支援できる」
グラウフラル国王は言った。
「リリオットとの臨時同盟の是非について、決を取りたい」
開票結果 賛成 四票 白票 二票
よって賛成多数により可決
そしてリリオットへの特使として、王の息子、金髪のグラウスが選ばれた。
「馬要らずの馬車」は一つの歴史を載せて、リリオットへの道をひた走った。
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「号外!! 号外!! 『竜殺し求む』!! リリオットとグラウフラル間の臨時同盟締結!!」
リリオットとグラウフラル間の臨時同盟。それは、大国グラウフラルが、ついにリリオットの自治権を一時追認した、もっといえば同格と認めたという意味である。竜を殺すまでの僅かな間のこととはいえ、その事実は大きな喜びとなってリリオット中を走り抜けた。
話を聞きつけた公騎士団が、リソースガードの傭兵たちが、ヘレン教徒が、エフェクティヴ構成員が、続々と武装し、馬要らずの馬車に乗り込む。
精霊武器の中でも、とりわけ精霊銃を使う者たちは、竜の頭に自分の放つ弾丸を喰らわせようと夢見て弾丸の準備を怠らない。もはや使われなくなった巨大な精霊武器を持って行こうとする者、逆に最新の小型の精霊武器を携えて行く者、様々な者達がいた。
だが全て頭の中は一緒である。レッド・ドラゴンをぶち殺して凱旋する。リリオットの独立を勝ち取る。未来永劫英雄として、リリオット復興の祖として語り継がれる。以上。おわり。
そんな中、ソウルスミスは冷静に武器の流通をチェックしていた。
「精霊武器が、どこからこんなに出てきたのやら……在庫の管理で頭が痛いよ」
リソースガードの連中は笑う。
「むしろ儲かりすぎて胃が痛むんじゃねえか?」
ヘレン教の上層部≪受難の五日間≫は戦後のコネクションを意識し、回復術の使い手を大量に送り込む。
「銃後はうちらが支えなきゃね♪」
エフェクティヴもこのチャンスを生かし、革命を、≪ニュークリア・エフェクト≫を起こそうと必死になる。
「野郎ども!! 鉱夫の底力ってやつを見せてやれ!!」
先の惨禍の被害を受けた公騎士団からも、心ばかりの志願兵が募られる。
「リリオットの騎士道精神、とくとご覧あれ」
半壊したはずのリリオットの全てが、急速な復興の兆しを見せ始めていた。のちに言われる「対レッド・ドラゴン体制」。打倒ドラゴンの掛け声の下に、経済のギアが噛み合い、回り始めていたのである。




