姉という障害物を排除しました。
基本この小説はギャグですが、一応物語になっています。
真面目に書いたり、ギャグに書いたりすることがちらほらしますので、ご注意を。
時刻は夜。
雄馬は父の部屋の片付けを続け、アリスは雄馬の隣にいた。
先ほどの突風でいろいろ吹き飛んだので、片付けるのに苦労していた。
舌打ちをしながらも雄馬はてきぱきと片付ける。
そんな様子をアリスは上から見下ろしていた。
「で?お主が余を呼んだ本というのはどれじゃ?」
「あー・・・、確かここに 」
雄馬はアリスの言葉に反応して探し始める。
山のように積もった書類の下にあるのを確認し、それを手に取る。
表紙には魔法陣。父からの忠告のメッセージ。
ただの宗教臭い本かと思っていたはずが、まさかの事態を招くとは。
雄馬は額に嫌な汗を浮かべながら、その本をアリスに渡す。
「・・・・ふむ。やはりこの書物か。何故こんなところに?」
「俺が知るかよ。アリスはこれ知ってるのか?」
雄馬はアリスの後ろに近付き、何故か抱きしめる。
アリスは特に何も気にしていないみたいなので、そのまま抱きしめる。
微かにアリスの顔が赤いが、雄馬からは見えない。
「まぁな。前の主も、その前の主も、これで余を呼んだのじゃ」
「へぇ。まさか父さんが呼び出したとか?」
「いや。前に召喚されたときはイギリスだったからの」
とりあえずは謎ということで納得した雄馬達は片付けを再開しようとする。
が、一向に雄馬はアリスから離れない。
不思議に思ったアリスは「どうしたのじゃ?」と言うが反応なし。
しょうがないので力を出そうと思ったアリス。
が、その瞬間、雄馬の手はアリスの胸へ向かった。
「なっ!何をするのじゃ!!」
「この胸が!この胸が悪いんだ!!」
「一体何のことじゃ!えぇい!は、離さんか!」
揉み続ける雄馬は我を忘れ、欲望のままに動く。
アリスは我慢ならなかったのか、そのまま雄馬の腕を持ち投げる。
いわゆる背負い投げである。
雄馬はそれに応じて重力に引っ張られ背中から落ちる。
「がはっ!」
「主様よ!やっていいことと、やってはならないことがあるぞ!し、ししかも、何か固い物がお尻に当たってたし・・・!」
そこまで言ったところで、アリスの顔が蒸発した。
アリスはそのまま後ろに倒れ、気絶する。
雄馬は何事もなく立ち上がり、倒れているアリスを見る。
「はぁ。悪魔には見えないな」
そう言うと、アリスを背負って自室に向かうのであった。
‡
雄馬は考えていた。
アリスを召喚したということは、つまり同居するということだ。
・・・べ、別にエロいことなんか考えてないんだからねっ!
とかツンデレ発言を思う雄馬である。
しかし、我が家には姉という障害物がある。
あと二時間ぐらいで帰ってくるので、まだ時間はあるが。
現在ベッドで寝ているアリスにも説明しなくてはならない。
雄馬は寝ているアリスの顔を見つめていると、心の底から沸いてくるものがあった。
横たわっているアリスの上に跨る雄馬は下劣な笑いを浮かべる。
雄馬の手はアリスのドレスのファスナーに行き――
「何をしておるのじゃ?」
ビクッと手を引っ込める。
寝ている振りをしていたアリスは起き上がり、横目で雄馬を睨む。
普通の人より睨む力が強いアリスに、雄馬はつい肩を落とす。
溜息を一つ吐くと、アリスは鼻で笑い言う。
「お主がしようとしていることぐらい、余はお見通しじゃよ?」
「むっ」
「余は悪魔じゃ。お主が今悩んでいることもお見通しじゃ」
「むむぅ」
「え?お主、悩んでることあるのか?」
「勘で言ったのかよ!」
思わず突っ込みである。
雄馬は声を荒げるが、今はそんな問題ではない。
アリスは楽しそうにケラケラしてる。
若干、この表情に苛つく雄馬であったが、そこは無視し本題に入る。
「水菜がもうすぐ帰って来ちゃうんだよ。会わせるのも面倒だし・・・。どうにかならない?」
雄馬の言葉にアリスは少々考え込む。
「事実の上書きとかはどうじゃ?」
「何だそれ?」
「そのままの意味じゃ。帰ってくるという事実を違うことに置き換えるのじゃよ」
アリスは「凄いじゃろ」とでも言うように胸を張る。
思わず手を胸に置きにいったが、ヒョイとかわされる。
「例えば、どんなのがあるんだ?」
「帰る途中に鏡の中に入ってしまい、異世界で使い魔をやらされるとかじゃな」
「どこの貴族だよ」
「・・吸血鬼を助けて人間に戻るため家出中とか?」
「どこの怪異だよ」
「五月蝿いのぉ!じゃったら、どういうのがいいのじゃ!」
逆ギレしたアリスであった。
雄馬は半ば呆れたが、一刻を争う出来事なので戸惑うばかりだ。
もう事実がどうとか、どうでもよかった。
「何でもいいよ!とりあえず、さっさとやっちゃってくれ!」
「むぅ。ま、主様が言うなら仕方ない。・・・・・ほれ」
アリスは指を上げ、何やら紫っぽい炎を出す。
少し光ったと思うとすぐに消える。
「終わったのか?」
「まぁの」
同時に雄馬のズボンに入った携帯が鳴る。
メールの送信者は水菜である。
『ちょいと仕事でトラブった。しばらく帰れま10』
頭のネジが取れたような文面だった。
しかし、これで面倒なことはなくなったので、雄馬は安心した。
ホッとしたからか、身体が脱力するのを感じた。
「・・・はぁ」
「どうかしたのかの?」
「胸揉んでいい?」
「・・それ以外はするなよ?」
「わかってるよ・・」
雄馬は力の入らない手を伸ばし、胸を鷲掴みする。
元気が出るかと思った雄馬だが、胸だけでは物足りないらしい。
それでもなお揉み続ける雄馬は何か案は無いかと考えた。
「そうじゃ。お主よ」
「・・何だよ」
「腹が減ったのじゃが。何か食い物はないか?」
自由な悪魔だ、と思った雄馬であった。
「冷蔵庫にネギが入ってる。それでも食ってろ」
「料理はしないのかの?」
「してほしいのか?」
物欲しそうな顔をするアリスが可愛く見えた雄馬は直ぐ折れた。
アリスに弱いのか、雄馬のご機嫌はどうやら情緒不安定だ。
わけわからなく笑ったり、なんだか悲しくなったり。
時計を見る。すでに8時を回っていた。
普段は勝手に水菜が作るので、時間はほっときっぱなしだった。
だが、今日からは雄馬が作るときであった。
水菜を失ったことは失敗だったか、と少し後悔した。
アリスは食べたそうな顔をしていたので、何か作ろうと思い立ち上がる。
「さて、何がいい?」
「んむ。激辛麻婆豆腐がいいぞ!」
「どこの天使だよ・・・」
「言峰綺礼と言って欲しいのぅ!」
やけにテンションの高い悪魔であった。
雄馬「なぁ。アリスが上書いた内容って結局何なんだ?」
アリス「む?知りたいか?」
雄馬「是非」
アリス「仕事の上司の顔をぶん殴り鼻の骨を折らせ、その上司の代わりに少し遠い地方に転勤させられる、という内容じゃ」
雄馬「・・・・・(アリス。恐ろしい子・・・!!!)」
ちなみに、冷蔵庫のネギのネタは「クレヨンしんちゃん」見てる人はわかると思う。