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その1
会いたい。
ただそれだけなのに、憎くてどうしようもない。
会いたい。
会いたい。
ただそれだけなのに、憎くてどうしようもない。
胸の中が、沸き返るようだ。発熱する。からだが溶ける。我が手も足も声も、なくしてしまった。残った思念の片隅で、記憶も、零れるように消えていく。きみの声も、きみの好きな花の名も、忘失してしまう。
白い花だったような気がする。白いものがたくさん、舞うようにこぼれ落ちていた。
『綺麗ね』
きみがいった。
『来年も見たいわ』
きみはそういった。
だから、待っていた。待っていたのに・・・
憎い。
憎い。
黒い焔が四肢を舐め、皮膚に絡みつく。体内に溜まり続け、矛先を失った憎悪が溶けてじゅくじゅくと流れ出す。
ああ、熱い。
闇の底に疲れ果てたからだを横たえる。底はずるりと動き出し、これでもかと闇に塗れたからだを引きずり込もうとする。
瞼を閉じた。小さな白い花弁が舞った。
最後にみたあなたの笑顔が映っていた。
(第二章その1へ続く)