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『Communicating with the dead』 過去と今を繋ぐ通信…

7:25

満身創痍な巨艦の合流…


船団合流を果たした戦艦『金剛』の艦橋。すでに16度の傾斜を見せ、戦闘も航行も困難な状況にある。


「島崎艦長……! 如何いたしましょうか!」


副長が、手摺りにしがみつきながら叫んだ


「通信機能は何とか維持しておりますが、操舵不能、機関停止寸前! 砲塔旋回装置も焼き付き、一門たりとも動かせません! このままでは、前方を行く船団に衝突するか、あるいは……」


航海長が、窓の外を指差して声を震わせた。


「あの不審艦です! 軍艦旗を掲げ、我々に異常な速力で接近してくるあの二隻……。あんな形の艦…見た事ありません。敵か味方かさえ判別不能です!」


艦橋の窓越しに見えるのは、霧を切り裂いて現れた海上自衛隊のイージス艦『こんごう』と護衛艦『いそゆき』の姿だった。


島崎利雄艦長は、戦闘帽を深く被り直し、傾いた床に踏ん張った。

彼の脳裏には、1944年11月21日――台湾海峡の冷たい海に、この巨艦と共に沈んでいった最期の記憶が鮮明に焼き付いている。


「……あり得ぬ。異国の艦が、我が国の軍艦旗をあのように堂々と掲げるなど、万に一つも法的にあり得ぬことだ」


島崎の声は、騒乱の中でも奇妙なほどに落ち着いていた。


「副長…通信室に連絡…打電せよ。あの二艦に対してだ。……我々は、たしかに一度は没した身…状況が全く掴めない中、彼らを友軍と信じて頼るしか道はないだろう……それに…副長、総員退去の準備をさせよ」


「艦長! まさか、あの正体不明の艦に命を預けようというのですか!?」


副長の抗議を、島崎は静かな眼光で制した。


「ついこの間……いや、あの時、私らは自分達の楽観視によって、この艦と、多くの部下を失った。魚雷二発程度、高速戦艦の不沈性ならば耐えられると……その過信が数多くの乗組員を死なせてしまった…二度と同じ過ちは繰り返さぬ。…いつ轟沈するか分からないんだ…今の我々に、彼らを頼る以外に、方法はないのだ」


7:28

イージス艦『こんごう』のCIC(戦闘指揮所)は、

受信した電文の解析結果を前に、凍りついたような静寂に支配された。


「電文、再受信……。発信源は間違いなく前方、戦艦『金剛』と見られる艦です。符号は旧帝国海軍の暗号形式ですが、平文ひらぶんが混じっています」


通信士の手が震え、打ち出された文字が、現代の自衛官たちを動揺させた…


「ワレ魚雷二発受ク……傾斜十八度。浸水防グモ速力低下中ナリ。貴艦ハ速ヤカニ本艦ノ援護……並ビニ同ジク制御不能ノ船団ノ護衛ニ当タラレタシ。反転接近セヨ。本艦、依然トシテ戦闘旗ヲ降下セズ」


「……援護しろ、だと?」


『こんごう』艦長は、その言葉を反芻した。


現代のイージス艦『こんごう』は、その圧倒的な電子の眼で、旧戦艦の悲惨な状況を冷徹にスキャンしていた。

ダメージ・コントロールは絶望的。本来なら数分以内に転覆してもおかしくない船体であろう…


「艦長、どうしますか? 彼らは我々を『味方の新型艦』だと信じて疑っていませんが…」


「……分かっている。これより本艦は、国際法を逸脱し、未知の事態に対応して不審船団に接近する…」


7:45

九州南西、水平線から昇る朝日が、海面を焼くような朱色に染め上げる。


海上自衛隊の護衛艦『いそゆき』、そしてイージス艦『こんごう』が、未知の船団との距離を「目と鼻の先」まで縮めたその時、ブリッジを支配したのは戦慄を超えた驚きと感嘆だった。

レーダーに映る虚像ではない。そこには、歴史の教科書や古い記録映画の中にのみでしか見られない…

「遺物」たちが、潮風に錆を躍らせ、生々しい熱気を帯びて存在していた。


「……左舷、不審船群。……あれは、1B型、2A型戦時標準船……。間違いありません、全隻がかつての日本軍徴用船です」


『いそゆき』の観測員が、双眼鏡を構えたまま指先を震わせる。

視界を埋め尽くすのは、10隻を超える輸送船。船首には『泰山丸』『帝洋丸』といった名が刻まれ、その甲板には隙間もないほどに、カーキ色の軍服を着た将兵たちがひしめき合っている…彼らは一様に、現代の洗練された護衛艦を不思議な物を見るように見つめていた。

さらに、船団を囲むように配置された護衛艦艇が、自衛官たちの心臓を鷲掴みにした。


• 秋月型防空駆逐艦『若月』:かつてオルモック湾に没した防御に長けた駆逐艦…


• 島風型駆逐艦『島風』: 共にオルモック湾に没した伝説の高速駆逐艦。


• 夕雲型駆逐艦『沖波』: 荒波を切り裂き、航行するかつてマニラに放棄された武勲艦。


「……あり得ない。あれは幻でも、復元模型でもない。あの船体…、海水を切る重厚な音……すべてが本物だ」


挿絵(By みてみん)


そして、船団の外側に鎮座する**戦艦『金剛』**が、その圧倒的な質量で自衛官たちを威圧した。

200メートルを超える巨体は右舷に18度傾斜し、見ての通りの満身創痍だった。


『こんごう』の若い隊員の中には、あまりの光景に感嘆するものや、ただ呆然と「これは夢だ」と呟き続ける者が続出した。


「艦長! 『金剛』の甲板……見てください! 人です! 『金剛』の甲板にも…あちこちに生きた人間がいます!」


『こんごう』の艦橋から、望遠レンズが…

そこには、鉄帽を被り、救命胴衣を纏った若者たちが、必死に排水作業を続け、あるいは並走する自衛艦に対し、期待と不安の入り混じった顔で手を振っている姿を捉え、艦長も乗組員たちも不思議な安堵のような感覚に陥った…


過去と現代…二つの存在はどのように交わるのだろうか…!


・平文…

電文の中で暗号化されておらず…誰でも読める物…別名、生文…


・ダメージ・コントロール…


戦闘、衝突、火災などで被害を受けた艦船が、沈没や行動不能になるのを防ぐために…復原力を維持して安全な場所へ帰還するための「応急処置・復旧活動」のこと…


・ブリッジ…


船の艦橋の別名…船のコントロール及び指揮をする建造物…

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