『Invasion of the Dead』 DAY-1.0
全ての日常が崩れてしまった日から時を遡る事、1日前…
太陽も登らない未明から既に非現実的な事は起こっていた…
04:45
哨戒から帰投したP-3Cから転送された静止画と動画を見た分析官たちは、その映像を見た瞬間、コーヒーを啜る手を止めた。
「……冗談だろ…私らは寝ぼけているのだろうか… …?」
一人の三等海佐が呟く。モニターには、強力なサーチライトに照らされた**『泰山丸』**の船首が映っていた。現代の流線型とは無縁の、切り立った絶壁のような艦首。そして、剥げかけたペンキで書かれた「丸」の字。
「艦種特定を急げ。あれは戦時標準船……か?信じられん、全隻が第二次大戦期の形状だ。しかも見てください…軽巡…あれは駆逐艦でしょうか…」
「船名を確認。……『大井川丸』『三笠丸』『能登丸』…… 駆逐艦『若月』 『沖波』……おおよそ照合終了。……長官、これらはすべて、1943年から44年にかけて沈没記録がある船舶です…」
分析室に、冷たい戦慄が走った。
05:10 防衛庁市ヶ谷地区:地下中央指揮所
防衛庁長官は、緊急連絡を受けてパジャマの上にジャケットを羽織り、指揮所へ駆け込んだ。
「状況を説明しろ。国籍は? 北か? それとも大陸の連中か?」
「不明です。いや…一応、日章旗を掲げていますが、欺瞞としか…約15ノット前後の速度で九州地方に向かっています…』
統合幕僚会議の幕僚が、最新の航跡図を指し示した。
「現在、海上自衛隊佐世保地方隊所属の**護衛艦『いそゆき』および『こんごう』**を緊急展開させています。また、海上保安庁の巡視船も現場へ急行中。……
長官は顔は青ざめていた…65年以上前の船舶とみられる不審船が…かつて無いほどの規模で領海侵犯する事は紛れもない非常事態を意味していた。
05:30 九州南西海域:護衛艦『いそゆき』(戦闘指揮所)
現場海域に到達した護衛艦『いそゆき』の艦内には、戦闘配置を告げるベルが鳴り響いていた。
「目標まで距離5000。肉眼で視認できます。……艦長、これは……異常です」
双眼鏡を覗きながら声を震わせる。波間に浮かぶのは、煙突から黒煙を上げて進む『泰山丸』『能登丸』ら船舶…そして軍艦色の『若月』ら紛れもない駆逐艦だった。
「こちらJMSDF(海上自衛隊)。貴船は我が国の領海に接近している。直ちに停船し、国籍と意図を明らかにせよ。繰り返す――」
だが、返ってきたのは現代の返答ではなかった。
各船の甲板に座る夥しい数の人影が動き出したのだ。
それは、カーキ色の軍服や背嚢に身を包み、略帽を被った**「かつての日本兵」**たちの姿…身を取り出して略帽や手を振っている…
• 『いそゆき』見張員: 「艦長! 目標甲板上に多数の人員を確認!」
• 『いそゆき』艦長: 「落ち着け。威嚇射撃の許可を求める。……」
それと同時に、船団全体から地鳴りのような歓声が聞こえてくる。
「ばんざーい! ばんざーい!」
その声は、狂喜と安堵が混じった、数千人の日焼けした男たちの咆哮だった…
05:45
緊迫の対峙
護衛艦『こんごう』のレーダーが、あまりにも低速で巨大な「目標」を捉え続けていた。
「艦長、これではまるで……戦時中の輸送船団を護衛しているような絵面です」
オペレーターが苦笑いとも恐怖ともつかない表情で報告する。
一方、防衛庁長官は、現場からの報告に…
「……一体…何が起きているのだ…!これは夢だろうか…? こんな事あるはずが無い…!』と激しく動揺した…
『戦時標準船』…
太平洋戦争中、戦地に物資や兵員を輸送するべく 耐久性、航海速力、信頼性などを犠牲にして建造された船舶…
『駆逐艦』…
輸送船や戦艦などの大型艦の護衛、潜水艦への哨戒を目的とする小型の軍艦…
『戦闘帽』…
式典などに用いる正帽に代わり、戦闘、訓練、作業時などの日常的な業務で着用される。代表的なものに、略帽とも呼ばれる…色に違いはあれど、日本陸軍、日本海軍共に愛用した…




