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家を追放された魔法薬師は、薬獣や妖精に囲まれて秘密の薬草園で第二の人生を謳歌する(旧題:再婚したいと乞われましても困ります。どうか愛する人とお幸せに!)  作者: 江本マシメサ
二部・第二章 謝肉祭での大事件!?

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下町へ

 トリスの家に行ったところ、家のカーテンは閉ざされ、洗濯物も干されていない状態だった。

 まさか、家族全員臥せっている状態なのか?

 扉を叩いて声をかけたものの反応はなし。まさか誰も動けない状況なのだろうか?

 どうしようか迷ったものの、ご家族の安否を確認させていただく。

 一応、入る前に声をかけた。

「あの、ベアトリスです。心配ですので、中の様子を確認させていただきますね」

 幸いと言っていいのかわからないが、ドアノブを捻ったところ施錠はされていなかった。

 カーテンが閉ざされた部屋は薄暗く、人の気配はない。

「トリスさん、いらっしゃいますか?」

 声を張り上げると、返事の代わりに咳き込む様子が聞き取れた。

「トリスさん!?」

 部屋の中へ入らせてもらうと、寝台に姉妹弟(きょうだい)三人で寝転がり、苦しげな様子でいるのを発見した。

「大丈夫ですか!?」

 私の声に反応したトリスが、うっすら瞼を開く。

「ああ……その声は、ベアトリス?」

「そうです!」

 空気がよどんでいるような気がしたので、カーテンを広げて空気の入れ換えをする。

 声がかすれていたので水を飲むかと聞いたが、首を横に振った。

「口が痛いんだ。何も食べられないよ」

「そう、だったのですね」

 トリスは唇だけでなく、顔全体も腫れているように見えた。

 王宮や屋敷に運び込まれた患者でもここまで酷い症状が出ている人はいなかったように思える。

「げっほ! げっほ!」

 トリスだけでなく、妹さんや弟さんも口辺りが腫れ、激しく咳き込んでいた。

「なんだか家族みんな雨に濡れてしまったから、前に引いた風邪かと思ったんだけれど……それよりも辛くて」

「ええ、ただの風邪ではないようです」

 風邪であれば、顔が腫れるということはあまりないだろう。

 他に何かしらの原因があるのだ。

「少し待っていてくださいね」

 昨日、隠者の隠れ家(エルミタージュ)に帰ったさいに、魔法スープを作って水筒に入れて持ってきていたのだ。患者の療養食として提案し、料理人に試食してもらう予定だったが、トリスと家族に食べてもらおう。

 食器を借りようと思ったが、病気の原因がどこに潜んでいるかもわからない。

 一度食器をお湯で煮沸消毒させたほうがいいだろう。

 カップやスプーンなどをお湯の中で沸騰させている間、ご両親の様子を見に行く。

 父親もトリスと同様、顔の腫れに咳、それから目の痒みなども訴えていた。母親には腫れの症状はなかったものの、苦しそうに咳き込んでかなり辛そうだった。

 そんな状況の中、トリスの父親が症状について教えてくれた。

「この目の痒みは……覚えがあるんです。よく、家畜の世話をしに行くさいに、どうしようもない痒みに襲われて……」

「家畜、ですか」

 全員が全員、目や鼻の痒みを訴えているわけではなかったが、数名確認できた。

 そういえば以前、神父様も春先になると風邪の症状に加え、目が痒くなると話していたような。神父様は農村出身なので、何かしらの家畜がいた可能性がある。

 もしかしたら今回の病気は家畜と何か関連があるのあろうか。

 神父様はここ三年くらいで症状が再び現れるようになった、と話していた気がする。

 三年といえば、謝肉祭の規模が大きくなり、盛り上がるようになった年月である。

 確定的な情報ではないが、今回の騒動に家畜が絡んでいるように思えてならなかった。

 その後、トリスと妹さん、弟さん、ご両親に魔法スープを食べさせると、少しだけ元気になったようだ。

「あの、トリスさん、よかったらイーゼンブルク公爵家の屋敷を診療所として運営しているんです。その、利用は元気になってからの労働と引き換えになりますが、みなさんでいらっしゃいませんか?」

「いいのか?」

「もちろんです」

 ご一家は家族全員が寝込んでいたので、診療所の知らせに気づけなかったという。

 こういうのはトリスの家族だけではないのかもしれない。他の家も確認して回ったほうがよさそうだ。

 そんなわけで、トリス一家はイーゼンブルク公爵家の診療所へ移り、療養している。

 今のところ効果的な魔法薬がなく、元気になるように看病するしかないのだが、そんな環境でも下町の人達は喜んでくれた。

 病人の確認は下町の人達にお願いし、各家庭を回ってもらうようにした。その結果、三十人ほどの患者が集められた。

 やはり、一家で寝込んでいる人達がいたのだ。

 夜になるとエルツ様のもとに言って、調査結果を報告する。

「なるほど、家畜か」

「もしかしたら、何か絡んでいるかもしれません」

 ただ、肉などをエルツ様が徹底的に検査したようだが、病気の原因になるような菌などは発見されなかったらしい。

「家畜を調査しようにも、ココロト商会が協力的ではないからな」

 肉がどういう状態で隣国から輸入されているかも謎だと言う。

「隣国に調べにいったほうが、早いかもしれないですよね」

「そうだな。ただ、隣国との関係は微妙なものだから、厳しい入国審査を通り抜ける可能性がある」

 隣国から買い取った家畜に問題があるようなので、調査してくれと言っても、「わかりました」と言って許可など出ないだろう。

「手っ取り早いのは、新婚旅行などの祝い事だな。なぜか歓迎しているらしい」

 新婚旅行客は各地で土産などを買ってくれることから、隣国側も快く入国を許可するようだ。

「ビー、こういう状況になっては仕方がない」

「はい?」

「結婚しよう」

 まさかの言葉に、口をぽかんと開いてしまった。 

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