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家を追放された魔法薬師は、薬獣や妖精に囲まれて秘密の薬草園で第二の人生を謳歌する(旧題:再婚したいと乞われましても困ります。どうか愛する人とお幸せに!)  作者: 江本マシメサ
二部・第一章 イーゼンブルク公爵として

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イーゼンブルク公爵家の屋敷の現状

 イーゼンブルク公爵家の屋敷にはエルツ様の転移魔法で向かった。

 久しぶりにやってくる門を前にする。

 離婚する前までは守衛が守りピカピカだった鉄格子は、今では錆びて蔓が巻き付いていた。

 蔓は門の開閉部分と一体化するように巻き付き、天然の鍵となっている。このままでは開けないだろうと思っていたらエルツ様が動く。鉄格子に触れると白い炎が発生し、蔓を焼き落としてくれた。

「ビー、行こうか」

 エルツ様が差し伸べてくれた手に、そっと指先を重ねる。

 以前までは野犬や野ネズミなどの野生動物が走り回っていたようだが、セイブルが加護を復活させたのでいなくなっているようだ。

 庭は草木が元気いっぱい生い茂り、どこにどんな薬草があるのかわからない状態になっている。

「まるで森の中のようだな」

「ええ……。たった数ヶ月で、こんなふうになってしまうのですね」

 ひとまずここは新しい庭師を雇って、きれいに整えてもらわなければならないだろう。

「庭の手入れは最優先だな」

「そうですね。魔法薬師として、庭はとても大事ですので」

 以前まで働いていた庭師を再雇用したいのだが、見つけることはできるだろうか。

 彼らは薬草の取り扱いについて熟知していて、世話を任せられるような専門家だったのだが。

 使用人達はオイゲンが勝手に解雇したり、自主的に退職したりして、私が去ったあとはほとんど残っていなかったようだ。

 彼らは今、どこにいるのだろうか。

「ギルドに依頼したら、見つかるでしょうか?」

「頼むとしたら、求人というよりは人捜しの範疇はんちゅうになるのだろうが」

 見つかったとしても、報酬や雇用費など、新たにお金の問題が発生する。

 イーゼンブルク公爵家の財産は現在すっからかんだ。以前のように大勢の使用人を雇い入れる余裕はない。

「ビー、どうした?」

「いえ、人を雇うとなると、途方もなくなるくらいのお金が必要になるなと思いまして」

「そうだな」

 切ない気持ちで庭を眺める私に、エルツ様がある提案をしてくれる。

「ビーの魔法薬であれば、王宮の予算で購入しよう」

「ありがとうございます」

「そういえば、結婚前に調合した魔法薬も、少しはここにあるのではないのか?」

「そうですね。たしか、金庫の中にあったはずです」

 オイゲンが簡単に手出しできないよう、お祖父様の金庫に入れて置いた魔法薬があるはずだ。それを売ったら、まとまったお金が手に入るかもしれない。

「おそらく、お祖父様が飲んでいなかったエリクシールがあるはずです」

「それは素晴らしいな」

 魔法薬の中でも最高峰ともいえるエリクシールは、一本で金貨五百枚くらいの価値があるとエルツ様が査定してくれた。

「しかし、金庫はオイゲンに荒らされていたのではないか?」

「お祖父様個人の金庫は隠し部屋にありまして、オイゲンは知らないはずなんです」

「そうか。それならばよかった」

 他にも調合の難しい魔法薬はすべてお祖父様の金庫に保管していた。

 それらすべてを販売したら、ちょっとした財産を築けるかもしれない。

「すみません、金庫の魔法薬につきまして、すっかり忘れていました」

「まあ、よくあることだろう」

 そんな話をしながら、屋敷の中へ入る。

 一応施錠はされていたが、中の荒らされ具合に驚いてしまった。

「これは……」

「酷いな」

 絨毯は剥がされ、調度品などは一つも残っておらず、家族の肖像画ですら持ち出されていた。おそらくオイゲンがすべて売り払ってしまったのだろう。

「こういう事態を想定して、お祖父様は貴重な魔法薬は隠し部屋に置いていたのでしょうね」

「ああ、そうだな」

 まるで泥棒が押し入ったような屋敷の中を見ていると、ため息ばかり零れてしまう。

 以前、オイゲンと会うためにやってきたときはここまで酷くなかったのに。

 隠し部屋は図書室にある。

 図書室には貴重な魔法書から歴史書まで揃えられており、お祖父様が大事にしている部屋でもあった。

 それなのに、それなのに……。

「そんな――!」

「オイゲンの奴め」

 本は一冊残らず運び出され、図書室には空っぽの棚だけが残っていた。

 それだけでなく、隠し扉の仕掛けも壊されていた。

 本棚を加工し、魔法仕掛けで開くようになっていたのだが、扉が破壊された状態だったのだ。

「そこまでして、イーゼンブルク公爵家の財産を暴きたかったのですね」

「呆れた話だ」

 幼い頃、何度か招待してもらった隠し部屋は、乱雑に荒らされていた。

 強固なはずの金庫は無理矢理こじ開けられ、中身は空っぽだった。

「酷い」

「ビー」

 金庫の前で崩れ落ちた私の背中を、エルツ様が優しく撫でてくれる。

「もう、隠者の隠れ家エルミタージュに帰るか?」

「いいえ、すべての部屋を、見て回ります」

 イーゼンブルク公爵として、屋敷の現状を確認して回らなければならない。

 その後、エルツ様と共に屋敷のむごたらしいありさまを目にする。

 歴史あるイーゼンブルク公爵家の屋敷は、想像していたよりも酷い状況だった。

「ひとまず、人を雇ってきれいにする必要がありそうです」

 今の状態では、とてもではないが生活なんてできない。

 問題は誰を雇うか、だろう。

 ひとまず、お金の確保が先だろうか。何かいい案があればいいのだが……。 

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