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亡命希望。

 フラムが抜き取ったスキルをもしゃもしゃと食べてしまった。


「…ちょっ、ちょっ、ぅおぉいっ!!フラムっ、スキルは食べ物じゃないぞっ!!お腹コワしたらどーすんのっ!!」


 スキルは高ランクになればなるほど凝縮されて小さく圧縮されている。F・リヴァイヴァーもかなりの高等スキルなので、スキルのタマシイはリンゴ程の大きさしかない。


 俺は慌ててフラムの口からスキルのタマシイを引っぱり出そうとしたが、時すでに遅し。全部食べちゃった…。


 どーしよ、コレ…。


 困ってどうしようかと見ていると、フラムの身体がピカーッと光った。これは名前を付けた時と同じだ…。


 フラムのスキル欄を確認してみると『F・リヴァイヴァー』をきちんと獲得していた。…こういう形でもちゃんとスキルを取り込めるんだな…。


 俺は再び、融真のスキル欄を見る。密談スキルも持っていたが、これは特に害を与えるものではないので、そのままにしておいた。

 

 取り敢えず、予定通りスキルを貰う事が出来たので、俺はほっとした。


 そんな俺を、不思議そうに見上げて目をぱちぱちさせるフラム。さっきはフラムの突然の行動に思わず口調がきつくなってしまったが、結果的に無事スキルを取得できたので良しとしよう。


 俺はフラムの頭を撫でながら、よくやったぞ、と褒めて上げた。それが嬉しかったのか、フラムは俺の胸に顔をグリグリ押し付けてたw


 フラムがスキルを獲得したのを確認した後、俺は動けない融真を範囲から出す為に、すっと後ろに下がる。スキルは抜いてあるが、攻撃されるとも限らないので、警戒はしていたが、融真はあっさりと負けを認めた。


「…俺の負けだ。しかしアンタがそんな反則スキル持ってるなんて聞いてないぞ…?」

「あぁ、エミルと闘った後に取得したスキルだからなぁ。知らなくても仕方ないよ」


 融真は、俺が持ってる『ゾーン・エクストリーム』がかなり気になるようだ。


「接近しただけで、相手の動きを止めるスキルなんてどこで手に入れたんだ?まさか自分で発現させたとかじゃないよな?」


 聞いてくるので、俺達は話しながら皆が待っている方へ歩いていく。


「正確には、取得したんじゃなくて、スキルを創成して貰ったんだけどな」

「マジか!?創成!?そんな事出来るヤツ、この世界にいるのか?」


 俺の説明に、驚きを隠せない融真。


「…まぁ、こういう世界だからな。そんなヤツもいるさ…。たぶん、よう知らんけど…」

「…アンタ、今最後に誤魔化したろ…?」

「…そうか?じゃあ正直に話すぞ?『地獄で天使にスキルを創成して貰った』て俺が言ったら、お前は信じるか?」

「…地獄で天使にスキルを創成して貰った?…なんだそれ?」

「な?そうなるだろ?こんな摩訶不思議アドベンチャーな世界でも、そんなことありえへんっ、てなるだろ?」

「…あぁ、解ったよ。これ以上、何も聞かないさ…」


 歩きながら、途中でティーちゃんと合流する。


「しかし情報で聞いてたんだが、アンタ本当に子供連れて歩いてんだな?」

「この子らは俺よりも強いからな。大丈夫なんだよ」

「さっきここら一帯を氷結させたのはこの子か?」


 融真の質問に、ティーちゃんが答えた。


「そうじゃ。アレは範囲氷結魔法の『アイスキングダム』じゃ」

「マジか!!スゲェな…俺のメルトフィーバーを抑え込んでたからかなりの魔法じゃないかと思ってたけど…」

「いや、お主の高温熱波攻撃もかなりのものじゃ。普通の人間なら太刀打ち出来んじゃろうな…」


 俺達は話しながら、皆と合流した。



 皆と合流して開口一番、クレアが融真のスキルと強さを称えた。


「お主を軽く見て済まなかったな。その自信に違わぬスキルと実力だったぞ?」

「…いや、奥さんこそ良く俺のメルトフィーバーの熱波攻撃を耐えたな。普通のハンターとか冒険者だったらとっくに倒れてる。しかも拳圧飛ばしてくるなんて反則技も良いトコだよ…」


 その事に付いて、俺から融真に話す。


「クレアは人間じゃないんだ。ていうか俺以外、人間じゃないからw」

「そうだったのか…。道理で強さが異常な訳だ…。もしかして亜人種か?」

「まぁ、そんなとこかな…」


 俺達は話しつつ、次に融真の今後について説明した。


「取り敢えず、捕虜扱いになる。それから尋問があると思う。融真は俺達に付いて来てるけどそれで良いのか?」

「…あぁ、俺は元々教皇領に未練なんかないんだ。アルギス様は自由にさせてくれたけど教皇領のヤツらはお堅いからな…。教義がどうとか、修道がどうとか息が詰まるんだよ…」

「…解った。じゃあブレーリンまで付いて来てくれ。尋問の結果次第では罪は軽くなるかもしれん…たぶん…」


 説明する俺に、融真が質問する。


「一つ、聞いても良いか?俺はこの国では…今回の任務が初めてだったんだが…。亡命を希望したら受け入れてくれるかな?」


 融真の問いに、俺は暫く考えてから答える。


「…ふむ、亡命か。この国で工作活動してないなら、確定的な事は言えんけど…大丈夫だと思う…」


 俺の説明に頷く融真。


「俺を送迎してたフードはアンタに倒されたからな…。俺は転移スキルがないからどっちにしろ、もう戻れない。亡命を希望する…」

「あぁ、解った。俺がブレーリンの警備所まで着いて行く。そこで警備隊長に説明して亡命の話を領主さんに上げて貰うよ」

「ありがたい。…しかし、なんかスマンな。さっきまで戦ってたのに…」

「まぁ、そこは気にするな。こっちも融真のスキル全部抜き取って貰ってるからな…」


 俺達は再び、歩きながら話す。


「亡命が上手くいったとして、何か仕事は考えてるのか?」

「…あぁ、俺は転生前は鍛冶やってたんだ」

「…え?、火事?消防署員か…?」

「…そっちの火事じゃねぇ…。鍛冶師の方だよ」


 俺は驚きで目を見開いた。


「その若さで…?」


 俺の言葉に、顔を顰めつつ、話す融真。


「…アンタも俺と歳、そんな変わらないだろ…?」

「…いや、俺はもう四十代後半だけど…」

「…えッ?マジかよ?俺は三十一なんだが…。ちょっと上くらいかと思ってたぜ…」


 そんな事を話しつつ、俺達は融真を連れてブレーリンに向かう。一応、亡命希望なので拘束はせず、ただ普通に付いて来て貰った。


 暫く皆で歩いていると、目の前に突然、アメリカンギャルみたいな女が現れた。



 突然現れた女に、融真が話し掛ける。


「…なんだ、キャサリンも来てたのかよ…」

「うん、まぁねー。融真なら大丈夫だろうけど万一があるかもって、エミルが言うからさー。ところで融真、アンタ敵と一緒に歩いてるって事はまさか…敗けた…?」

「…あぁ、敗けた。この(ホワイト)が、情報にないスキルを持ってたからな…」

「…マジで?融真の能力で敗けたんだったらアタシじゃ勝てないじゃん…」


 どうやらこのアメリカンギャルもエミルの仲間の様だ。ゆるいウェーブの掛かったロングの金髪、身長は百七十くらいか?


 褐色のダイナマイトなボディはクレアに負けず劣らず。装備の下に着ているブラウスのボタンが弾けそうだ。眼はパッチリしていてギャルメイク、頭にテンガロンハットを被り、赤を基調としたガンマン風の革の軽装だ。脚は編み上げロングブーツを装備していた。


「キャサリン、俺はもうスキルを抜き取られてる。教皇領に戻っても、もう役には立てない…」


 そんな融真の言葉の後、二人は向かい合ったまま沈黙する。二人の表情から、どうやら密談スキルで話しているようだ…。

 

 しかし、このアメリカンギャルはリアクションが大きすぎる…。話している内容はなんとなく察しが付いた。


 先程まで俺達が話していた融真の亡命の件だろう。この二人は仲が良さそうだし、その辺りの事情を話しているのかもしれない。


 暫くして融真が振り返って俺を見る。何か言いたげだが…視線だけじゃ解からんw俺はエスパーじゃないぞw?


 その視線の意味を、ティーちゃんが解説してくれた。


≪アンソニーよ、どうやら融真はそこの派手なおなごも亡命させてやりたいらしい…≫


 どうやらこのアメギャルも亡命希望らしい。そう言えばティーちゃんは人の心が読めるんだったな…。


≪そこで、隠れているフードのヤツを倒して欲しいそうじゃ…≫


 あぁ、そう言う事か。それなら簡単だ。俺は(おもむろ)に石を拾うと、フラムに聞いてみる。


「…フラム、かくれんぼしてるおじさん、どこにいるか視えるか?」


 するとフラムはきょろきょろした後、アメギャルの左後方を指差した。その瞬間、俺は電撃石を投げ付ける。


「グワッッ!!」


 呻き声と共に遮蔽が解除され、フードが姿を現した。しかし当たった所が腕だった為、気絶していなかった。

 俺はすぐに神速でフードの後ろに回り込むと、サンダークラップを喰らわせた。


 激しい明滅と共に、声を発する間もなくフードは気絶して倒れた。


「これでゆっくり話せるな…。しかしアンタ、スピードも普通じゃないな…。ていうかさっきの電撃は何だ?アレもアンタのスキルなのか?」

「ん?電撃はさっき見せた籠手の能力だよ。ただ最近、何故かどんどん威力が強くなってきてるけどね…」


 俺達が話していると、さっきの攻撃を見たアメギャルが話に入って来た。


「…融真、このオッサン激ヤバじゃん…。やっぱ、闘わなくて正解だったわ…。アタシより速いんじゃ手に負える相手じゃないねー…」


 アメギャルの言葉に、クレアが突っ掛かる。


「…オイ、小娘!!我が主をオッサン呼ばわりするとは聞き捨てならんな!!」

「うわっ、何、このオバハン!!アンタもオッサンの仲間なの?」

「…オバハン…。…貴様、三途の川を渡りたい様だな…?」


 クレアが顔を引き攣らせて、指をボキボキと鳴らす。その後ろで、妖精族三体が笑い転げていた…。


 このままだと収拾が付かなくなりそうなので、止めに入る。


「…クレア、俺もオッサンだし、お前もオバハンだろ?一々、目くじら立てるなよ?」

「そうそう、オッサンの言う通りよ。小さい事気にしてたらオバハン、皺が増えるって…」


 クレアの額にビキッ!!と、怒りマークが浮き上がる。アメギャルが殺される前にこの無自覚挑発を止めないとな。


「おい、無自覚挑発マシーンギャル子。うちの連れに殺されたくなかったらお前も少し黙ってくれ…。死んでも責任取れないからな…」

「…ちょっ、何その呼び方ッ!!」

「いいから少し黙りんしゃいっ!!」


 俺が一喝すると、溜息を吐いて肩を竦めるギャル子。


「…へいへい、解ったわよ…。でもさー、事実を言ってるだけじゃん?何でアタシが…」


 そこまで言ったギャル子の口を塞ぐ融真。


「キャサリンそこまでだ!!収拾が付かなくなるだろッ!!」

「…解った!!解ったって!!アタシも教皇領からこっちに亡命したいからもう黙っとくって…」


 そんな俺達の後ろで、妖精族三人はまだ笑い転げていた…。


 …やれやれだぜ。そう思いながらも、俺はフラムがある一点をじっ、と見ているのが気になった。


「…これから亡命を頼む相手を怒らせるなよッ!!」

「…もーっ、解ったって言ってるじゃん!!…あ、そうだ!!融真がアタシにキスしてくれたらすぐ黙ると思うけど!!」

「…お前、こんな時に何言ってんだ…」


 そんな二人の後ろから、激しい闘気(バトルオーラ)を全身から立ち昇らせるクレアが近づく。


「…おっ、奥さんッ、マジでゴメン!!コイツには良く言い聞かせとくから…」

「…ひいぃぃっ、オバハン…じゃなかった奥様、チョーシ乗ってマジゴメンなさい…って、アレ…?」


 余りの激しいオーラに、ビビる二人を素通りして俺の隣に立つクレア。

いつの間にかティーちゃん、シーちゃんも来ていた。

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