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精霊魔法と海辺の村スラティゴ。

 俺達は交易馬車の方に戻り、皆と合流する。


「…ティーちゃん。アレ、何…w?」


 俺は森の中にいる巨大な木のお化けを指さす。


「ん?アレは木の精霊トレントラじゃ!!」

「…あぁ、アレも精霊なのね…」


 皆が見ている中、森の中でシルフィアに殲滅された盗賊達に木の枝が触手の様に絡み付いてポイポイと森の外へと放り出していた。


 今回の襲撃による被害は殆どなかった。


 戦闘に入った直後に俺達が現れたので、馬車も交易品も無事だったようだ。ルーシュさんが怪我をしたが、ティーちゃんが解毒水とヒールで回復させたので大丈夫だろう。


「俺達は国境防衛任務の休暇中なんだ。久々に、交易商人護衛でスラティゴに来たんだが、まさかあんな大人数の盗賊団がいたとはびっくりだったぜ…」


 そう言うグレンさんに続き、フィルさんが俺に質問する。


「ホワイト、お前達は何してたんだ?スラティゴに向かってたのか?」

「俺達は戦闘訓練ついでにゴミ盗賊を掃除して周ってたんですよ…」

「ふーん。お前変わってるな?あんなゴミ共相手にしても腕は上がらねぇぞ?」


 グレンさんにそう言われたが、俺はまだ戦闘初心者なんだよねwそんなグレンさんにドワーフのボルドさんがダメ出しをする。


「グレンよ、いつも言っておるが相手を軽く見てはいかんぞ?今日とてアレだけの大人数の盗賊団とは思わずに突進しただろう?」

「…ぁ、あぁ。分かってるよ、ボルドさん…」


 皆の所に戻る途中にも、グレンさんは、ボルドさんとフィルさんの二人から、今回の戦闘について

状況を良く見て動くようにかなり説教されていた。


 一人が勝手に動くとPTの連携が崩れるだろうし、護衛に付いているならその護衛対象の事も考えて動かないと交易品だけではなく、護衛対象の命まで危険に晒す事になるからな…。


 説教されていたグレンさんが、タイミングを見計らって話を変える為に、俺の装備について聞いてきた。装備については、西大陸の遠くの島国の出身なので珍しく見えるだけですよと誤魔化しておいた。


 そしてエルンさん、ルーシュさんにも、二人の子供と精霊魔法についてやたらと聞かれた。ルーシュさんは(しき)りに、ティーちゃんに精霊魔法について聞いている。


「生まれ持ったものなんじゃ…だから天からのギフトみたいなモノじゃな」


 そう説明していた。まぁ、他に言いようがないからなぁ。


 魔導師にしてみたら、精霊を操るのがかなり羨ましいようだ。ルーシュさんは落ち着いた感じの女性だけど、精霊魔法の話をやたらとティーちゃんにしつこく聞いていた。



 荷物の整理がつくと、商会主カルダモンさん、レイモンさん、グレンさんのPT(パーティ)は交易と護衛任務に戻っていく。


「世話になったな、王都に来たら挨拶に来てくれよ?」

「王都に来られた際はぜひ、当商会にお寄り下さい」


 グレンさんに続いてカルダモンさんからも、そう言われて握手を交わす。


「王都に行った際はよろしくです」


 そして商会の交易馬車と護衛のPTを見送る。一行は王都に繋がる街、ベルファへと発って行った。ウスバはそのまま、馬車の後ろに繋がれて引き摺られていく。

 

 ウスバはベルファの街で衛兵に引き渡すそうだ。ゴミに相応しい末路だな。気絶した盗賊達、及びティーちゃんが派手にやっつけちゃったヤツらは、村の衛兵が捕らえに来るそうだ。


 商会主が伝書鳩を飛ばしていたので、すぐに回収に来るだろうという事だった。


 俺達は再び、プラプラ歩いて盗賊を探しながら、海辺の村に向かっていく。


 しかし、ウスバとその盗賊団を一気に壊滅させたせいなのか、この後一人として盗賊と出くわす事がなかった…。そしてリーちゃんは何もする事が無くて暇だったのか、ティーちゃんのポケットの中で涎垂らして、ぐぅぐぅ寝てた…。


 せっかくの美人が台無しだ…。


 海辺の村の前まで来たので、せっかくだから寄って行こうと提案すると、みんな賛成したので村に寄る事にした。



 海辺の村、『スラティゴ』。


 漁業が盛んな村で新鮮な魚類を加工して、他の村や街、王都へと運び交易をしているそうだ。


 取り敢えず、村の門で衛兵に挨拶をして入る許可を貰う。村に入る際に、名前、職業、滞在理由と滞在期間などを台帳に記入して、許可証を貰った。その後、持ち物検査をして入る事を許された。ちなみに、職業欄には『調理人』と書いておいた。料理人ではない。


 地球での仕事が調理の仕事だからだ。スーパーで刺身と鮨ネタカットする人だからですw


 村の中を歩いていると、日に焼けた褐色肌の荒くれっぽいワイルドな漁師達が歩いている。女性達も健康的な小麦色の肌で気風の良い感じだ。


 村にしては結構大きい気がする。ワイルド漁師な村人達や交易商人の往来があり、かなり活気があった。村を見物中、突然シーちゃんが走り出す。


 俺とティーちゃんは、慌ててその後を追い掛けた。


 どうやら向かっていた先は、屋台が並んでいる通りだった。シーちゃんが立ち止まっていたのは、イカの照り焼きの屋台の前だった。


「…良い匂いするでしゅ…」


 追いついた俺が二人に聞く。


「そろそろお昼だから、屋台で食べ歩きでもする?」

「おおっ、それはいいのぅ!!」

「食べるでしゅっ、食べるでしゅっ!!」


 俺の提案に、二体とも賛成の様だ。リーちゃんも、匂いで目を覚ました。屋台のおいちゃんに、イカ焼き三本貰ってお金を払う。


 二体に、一本づつ渡すと、美味しそうにかぶりつき始めた。リーちゃんにはデカすぎるので、俺が食べる前に何回か(かじ)らせてあげた。


 三体とも、口の周りをイカ焼きのタレだらけにしてる…。この子らはいつも食べる時に口周りをベチャベチャに汚すのでその都度、俺が拭き拭きして上げている。


 だから世界樹の仕立て屋で、布の端切れを少し多めに貰っていつも常備していた。イカ焼きを食べ終わると、二体はすぐに次の屋台に走って行く。


 次は、タコの足をぶつ切りにして揚げ焼きの様にしたものだ。シンプルな塩味で美味しい。これもすぐに平らげた。


 次は、魚の切り身を焼いたものをパンに挟んで、ビネガーソースの様なタレを付けたバーガーだ。これも美味いw


 後は魚と野菜の炒め物、魚肉ステーキの様な屋台もあり、料理の種類も豊富だ。最後に、三体はフルーツを串にさして、甘いクリームを掛けたものを食べてた…。


 …こんなに小さいのによく食べるな…。


 お腹いっぱいになったので妖精族三体と、宿屋の前のオープンテラスで休んでいく事にした。村の宿屋にしてはしゃれてるよな…。お茶を飲みながらそう思った。


 まったりお茶を飲んでたら、危うく本来の目的を忘れる所だった。俺は、この村に風呂があるかどうかを確認したくてここに寄ったのだ。


 海辺の村だから塩水とかに浸かってべたべたするはず。だから風呂とかシャワーみたいな設備があってもいいんじゃないかなと考えたのだ。


 お腹いっぱいだったので取り敢えず、暫く休んでから商業ギルドに行く事にした。


 この村は、基本的な施設は揃っている。面白いのは、商業ギルドはかなり大きいが、ハンターギルドは凄く小さかった。


 公園前の派出所レベルだw聞くと、海洋からと内陸からの交易商人は多いが、王国の最奥の村でダンジョンもなく、討伐依頼なども殆ど出ないからだそうだ。


 ハンターや冒険者が来るのは護衛任務くらいで、退治とかで来る事はほぼないとの事だ。


 それは良いとして、俺は本来の目的である風呂の事を聞く。商業ギルドの受付のお兄さんは、結構人当たりの良い、優しい親切な人だった。


 この村には一応、大衆浴場があるそうだ。良いね!!ビンゴです!!更に聞くと、宿屋にもお風呂は付いているようで海洋交易の人達が宿屋を利用した時に身体を流すんだそうだ。


 増々、良いね!!時々、この村に来るの決定だなw


 風呂の事を聞けたので、商業ギルドを後にする。帰る前に、商店で新鮮な魚を何匹か買っておいた。屋台で食べたような物を作って上げると、皆が喜びそうだからね。


 買い物の後、二人は疲れたのか歩きながらうつらうつらと、眠そうに目を擦っている。


 一応、二人と手を繋いで上げてたけど、かなり眠かったのか危うくコケそうになっていたので、二人を抱っこして移動する事にした。

 

 村を出て、門が見えなくなった辺りで、周りに人がいないのを確認する。そのまま森の中に入ってリーちゃんを呼んでみた。


「…ん?なぁに…?」


 寝ぼけ眼を擦りながら、ティーちゃんのポケットの中から顔を出す。良かった。まだ起きてた。


 あとの二人は完全に寝ている。妖精は鼻風船が出ると、その間は起きないそうだ。二人ともぷぅぷぅ鼻風船が出来ている。

 

 このまま抱っこして森の中を帰るのも大変なので、リーちゃんに頼んで転移で世界樹まで戻る事にした。



 ウスバと闘った日から、それ以降も俺は盗賊退治を続けていた。…が、いい加減コイツらの相手するのも飽きてきた。


 まぁ、俺が飽き性なのもあるが、コイツらスキル持ってないから何の役にも立たない。ついでに臭いし弱いし汚いしで、ダメな三拍子が揃ってる…。

 

 その癖、登場から物凄く偉そうだから、イラついてくる。


 コイツら、ボスだったウスバがいなくなったていうのに、暫くしたらまた湧いて出てくるようになった。一体どこから湧いてんだか…。


 面倒くさくなってきたから、最近はシーちゃんに完全に任せていた。シーちゃんが喜んで、突進していく。


「おりゃーっ…!!」


 声を上げながら、プロテクトをシールドの様に展開して、アメフトの選手の様に高速で突っ込んでいく。ミニタンクだなw


「うわァーッ!!」

「ギャアァァーッ…!!」


 盗賊達が悲鳴を上げながら面白い様に次々と吹っ飛んでいく。


 特撮とかで、悪役のザコ達がドッカーンって、飛んでいくのはよく見てたけど、実際に人間が空中に吹っ飛んでいくとこなんて初めて見たわ…。


 もう盗賊退治ではスキル泥棒の練習にもならないし、戦闘訓練にすらならない。盗賊はもう卒業だな…。そう思いつつも、俺は頭を悩ませていた。

 

 森での訓練も飽きたし、盗賊にも飽きた。次はどうするかな…。



 俺は世界樹に戻った際に、女王の間で皆に相談した。


「このまま盗賊退治しててもなぁ…。いざ召喚者とかに会ったら苦戦必至だよね…。しかも英雄とか勇者とかに会った日にゃ…」

「そうじゃな、善良な人間達にとっては盗賊退治は良い事なんじゃが、アンソニーの経験値にはならんのぅ…」


 すると、シーちゃんが物騒な事を言い出した。


「街へ出るんでしゅ。そこで強い人間探して闘うといいんでしゅよ!!」

「それって街に行って喧嘩売るってこと?それだと俺、悪者になっちゃうし、街に出入り禁止になると思うけど…」

「いや、喧嘩を売るのは良くないが、案外、的外れな意見でもないじゃろ?」


 ティーちゃんが話を続ける。


「街のギルドに行って依頼ボード見ればいいんじゃ。リーが言うには、人間の街には戦闘訓練道場や闘技場のような所もあるそうじゃ。訓練道場で訓練として闘う分には問題ないじゃろ?しかも、闘技場で腕も試せるしのぅ」

「それがいいですね~」


 リーちゃんも賛成の様だ。


 俺もその案に賛成だな。まぁ、街に行ってみたいのもあるんだけどね…。拠点になりそうな街が良い。小奇麗な風呂付の宿屋があれば良いな、と思った。


 世界樹の客間でも良いんだけど、お風呂ないし、ここの客間は簡単に妖精達が入ってくる。


 そして毎朝、必ず俺の顔にラクガキしていくからなぁ…。ここからいちいちスラティゴに風呂入りに行くのも面倒だし…。


 と言う事で全員賛成で街へ向かう事にした。

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