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天使カイロシエルとスキル創成。

 俺は美濃さんの高速タックルを喰らって吹っ飛んだままいじけていた。


 しかし、アルギスに憑りつかれていた天使とキルシさんが向かい合っているのを見て、慌てて起き上がった。

 

 また戦闘になったりしないだろうな…?


「…久しいな、カイ…」

「うむ、お前もなルシフィエル…。いや、今はキルシフェルと名乗っているのだったな…。お前が天界を去って以来か…」

「…あれは神の意志なのだ…」

「あぁ、その事なら知っている。神とその側近である天使は皆知っている事だ。神の使徒に対抗する為に悪魔を巻き込んで第三勢力を創らせたと…」


 どうやら敵対的ではないようだ。二人は穏やかな感じで話している。


「…とりあえず礼を言わせてもらおう、ルシフィエル」

「いや、礼ならそこにいる人間に言うのだな。お前から、能力者を引き剥がしたのはあの人間だからな」


 そう言いつつ俺の方を見るキルシさん。キルシさんは元天使だから、あの天使さんと知り合いの様だ。

 とにかく俺は戦闘にならなくてほっとした。そんな俺の方に天使さんが近づいてくる。


「…ヤツを、アルギスを引き剥がしてくれたのはお前か…。私は天使カイロシエルという。助けてもらった礼を言わせてもらおう。ありがとう、そして手間を掛けさせてしまったな…」

「ぁ、いえいえ…たまたま流れでこうなっただけなんで…結果オーライって事で…」


 天使カイさんに頭を下げられて、俺は恐縮してしまった。カイさんはアルギスが憑りついていて闘っていた時の姿そのまんまなので、俺の心境は何だか複雑だ…。

 ちなみにアルギスの本体は、スラム街に居そうな金髪のチンピラの様なヤツだった…。

 

 そんな中、キルシさんがカイさんに問う。


「…カイ、時空を管轄するお前ほどの者が何故、憑りつかれ操られたのだ?先程の戦いでヤツらが人間を超越した存在である事は解かったが、それでもアレは人間を少し超えたレベルの存在でしかない。それが何故、天使に憑りつき、操るなどという事が出来たのか…?」


 キルシさんの問いに、カイさんが答える。


「…ルシフィエル…私がどうしてヤツらに囚われてしまったか…教えよう」


 二人は俺達の前で話を始めた。



 カイさんの話によると、どうやら『神の使徒』は数カ月前から天使狩りを始めたようだ…。


 理由はその精神体を実体化させて乗っ取る為である。その為に、改造、開発されたのが教皇領では『召喚魔法』に次ぐ、この世界で禁忌とされた『無形を捕縛する魔法』だ。


 その『無形を捕縛する魔法』の原形だった魔法は、元々神の使徒幹部がこの星を掌握する為に、人間(王族などの権力者)の身体を乗っ取る為のモノだった。 


 しかし、この星の人間では精神が持たず、発狂してすぐに死んでしまう。憑りついても本人の精神が死んでしまってはコントロール出来ないようだ。


 そこでヤツらは方法を変えた。この世界の王族などの権力者に憑りつくのではなく、召喚した異世界の能力者を殻として使い、各国の権力の中枢に喰い込んで行く。

 

 王や皇帝を傀儡とする為に…。


 ヤツらが召喚魔法で異世界人を呼び寄せるのは、殻として使うにはこの星の人間では身体の乗っ取りに耐えられないからだ。


 しかし現地人より能力が高い異世界人ですら、精神力は何ヵ月も持たなかった。結局、死んでしまっては別人に乗り換えるしかなく、また一から権力に取り入って行かなければならない。


 そして異世界人にも満足出来なくなったヤツらが目を付けたのが、精神エネルギーの強い天使、悪魔などの存在はするが普通の者には見えない無形の者達だ。


 そして改良開発されたのが『無形を捕縛する魔法』である。


 ヤツらは人間を囮に使い、下級天使を呼び出して捕縛魔法で拘束、その身体を乗っ取り天使に潜り込む事に成功する。


 天使が降臨した瞬間、その波長を捕らえて拘束し、弱らせ無形を有形にさせる事でその身体と能力を乗っ取る。


 ヤツらは人間を少し超えたレベルでしかない為に、憑依して乗っ取ったとしても、天使の能力の全てを使いこなせる訳ではない。

 しかし、人間にとっては天使のスキルや魔法は、奇跡であり脅威でもある。


 ヤツらはその力を使って民衆を奇跡や恐怖でコントロール、従う者は恐怖で抑圧し、従わぬ者は全て抹殺した。 

 能力者も例外ではなく、転生者にしろ召喚者にしろ、逆らう者は全て殺された。

 

 更に力を求めたヤツらは捕えた下級天使を餌に罠を張り、上位天使の捕縛を始めた。

 カイさんは下級天使の救出の為に下界に降りた所で、捕縛魔法のエネルギーに干渉され、捕えられてしまったようだ。


 ここで一旦、カイさんが一息吐く。その話に俺達の表情は深刻だ。

キルシさんが、カイさんに注意を促す。


「カイ、とにかく天使共に伝えておけ。みだりに下界に降りてはならぬ。天使が捕えられ、乗っ取られてしまっては、この星の人間では対抗出来ぬ。ヤツらはこの悪魔を統べる地獄の王、キルシフェルが叩き潰す!!」


 無言で頷くカイさん。

そんな中、フィーちゃんがカイさんを見て言う。


「魔族もおるでな?先に『神の使徒』を潰すのはわっちらの方じゃ!!」


 頼もしい言葉だとキルシさんとカイさんが笑う。

そしてカイさんは俺の方を見た。


「人間、お前にも頼みたい。ヤツに、アルギスに憑りつかれていた時、私の意識がお前の言葉を聞いていたのだ。ヤツらをトコトン邪魔してやってくれ!!」


 笑いながらながらそう言われて、俺は恥ずかしくなってしまった。

まさか聞かれていたとは…。


「ほわいと、おんし言う事が小さいのぅ。叩き潰すっていわんといかんでな?」

「…いや、そんな事言われてもですねぇ、俺はただの人間で…」


 その言葉を遮るように、キルシさんが言う。

 

「いや、お前はただの人間ではない。あの膠着した状況を打開したのだ。そして神から依頼を受けているだろう?神に認められた人間などそうそういないぞ?」


 続いてカイさんにも言われた。


「そうだ。私もお前の戦いを見ていたのだ。もっと自信を持って良い。今回の礼だ。これを持って行け…」


 そう言われて渡されたのは、振動派を出すレイピアだ。


「…操られていたとはいえ、これを使って無数の人間を殺してしまったのだ。本来、護らなければならない人間をな…。止める事も出来なかった…。これは神からの授かりもの『神器』だ。お前の助けになるだろう…」


 ええぇぇっ…そんな簡単に『神器』渡されても…。神様に返した方が良い気がするけど…まぁ、いいかw

 もしかしたら何かの時にホントに助けになってくれるかもしれない。そう思って俺はありがとうございますと貰っておいた。

 

 また天上に行くことがあったらその時、神様に返しても良いし。


「それからもう一つ、お前にスキルを創成してやろう。これからお前も確実に『神の使徒』に狙われるだろうからな」

「…えっ、マジでっ!?」


 カイさんの言葉に、驚き戸惑う。そんな俺にフィーちゃんが突っ込む。


「当たり前じゃろ?おんし、幹部を倒したんじゃからのぅ!!」


 いやいやいやいや…何言ってんの!!最後のトドメ刺したの確か君でしょw?

…などと言えるはずもない。美濃さんが怖いからなw


「ホワイト、お前の身を護る為だ。カイの能力は確かだからな。スキルを創って貰っておけ」


 キルシさんにそう言われたので創って貰う事にした。


 

「私は時空を操る事が出来る。そこを基本としたスキルなら創ってやれるぞ?」


 と言われたが…。


 どうしようかな…。考えていて、俺はふと思いついた。

ティーちゃんやシーちゃん、クレアみたいに常に張って置ける防御系のスキルがあれば良いな。


 般若の空間膨縮も良いが、あれは自分で発動しないとダメなヤツだからな。奇襲攻撃を受けても、自分の周りを常に護ってくれるような常時発動型の防御フィールドスキルがあれば良いかもしれないと思った。


 球状で常に自分の周りに張っている事が出来るもので、敵意、攻撃意図などがあるとその範囲に入り次第、範囲内の時空が極度に歪み、対象とその攻撃が極限まで遅くなる様なスキル…。


 よしっ、そんなスキルをお願いしよう!!そう思って言おうとしたら、


「解かった。ではさっそく創成してやろう」


 と言われた…。


「…あれっ?まだ何も伝えてませんけど…?」

「…ほわいと、おんし鈍いのぅ。わっちらはおんしの考えている事なんぞ全部筒抜けじゃ!!」


 そう言われて俺は、キルシさんを見る。うむと頷く。次にカイさんを見ると同じくうむと頷く。


 …なんだよ。みんな俺の心読んでたのかよ…。美濃さんも、もしかして…と、そっちを見ると、ん?という顔をされた。

 大丈夫、美濃さんは俺の心は読めてないみたいだw仲間を見つけたようでちょっと安心した。


 俺の目の前で、カイさんがスキル創成陣を展開させる。魔法陣の様な感じだ。俺は促されて、スキル創成陣に入る。

 カイさんが暫く天使語?みたいな良く解からない言語を話す。


 そして、突然言われた。


「スキル名を付けろ。それでスキルが完成する」


 俺はカイさんのその言葉に慌てた。俺自身が名付けるのか…。俺はネーミングセンスが…。

そう考えると増々焦る。

 えーと、タイムゾーン…いや、なんかおかしいな。タイムレイト…これだとそのまんまだな…。


「…タイムレイト。それでいいか?」


 そう聞かれた俺は、慌てて待って下さいと頼んだ。

時間が…遅延する…で、範囲だから…レンジ…?いや、ゾーンの方がいいか…。


 範囲内が極端に遅くなる…範囲内が極端…ゾーンエクストリーム…これで良いか。なんかもう考えるのがめんどくさくなってきた…。

 そんな事を考えていると、スキル創成陣と俺の身体が光だす。


「これより常時発動型空間防御スキル『ゾーンエクストリーム』を創成する」


 カイさんの言葉と共に、いつものインフォメーションが頭の中に響く。


≪新たにスキルを獲得しました。『ゾーンエクストリーム』発動します≫


 常時発動と指定したので獲得直後にすぐに発動した。そしてスキル創成陣の光が消えて、陣が解かれる。


「ありがとうございます!!これで簡単に死ぬことはないと思います」


 笑いながら言う俺にカイさんが言葉を返す。


「うむ、こちらこそ世話になったな。ホワイト、ヤツらを叩きのめしてやってくれ!!」


 そしてカイさんはキルシさんを振り返る。


「それではルシフィエル、私は天界に帰る。神に報告があるのでな。暫く『神の使徒』の件はお前に預ける」


 カイさんの言葉に、抱っこされたまま傍にいたフィーちゃんが、「わっちらもおるでな!!」と言い募る。


「解っている、魔皇フィーアも頼むぞ!!」


 フィーちゃんを見て笑いながらカイさんは天界に戻る為、一瞬にして消えた。


「…さて、我も帰るとしよう。ではな…」


 そう言うとキルシさんも消えた。


「ほわいと、おんしも達者でな。ティーとシーにもよろしく伝えておいてくれ」


 そしてフィーちゃんも美濃さんに抱っこして貰ったまま共に消えた。

皆、転移で帰ったようだ。


 …いや~、良かった良かった。神の使徒の幹部も一人倒せたし、ホント良かったわ…。

さて、俺も帰るか…………。



 …………。



 みんなが転移でいなくなった後、俺は大変な事に気が付いた。

………ちょっと待て、オイッ。俺はどうやってここから帰ればいいんだよッ…?


 俺は頭を抱えて蹲った。そして心の中で叫んだ。


 しまったアァァァァァッッ…!!時空転移スキル創成して貰えばよかったァァッ!!


 …くそぅっ…どうしよう…。


 今更、さっきいた人達呼ぶのもあれだしなぁ…。…はぁ、マジで転移スキル貰えばよかった…。

どうやって帰りゃいいんだよぉ…?

 

 俺は真っ赤な地獄の空を見上げて泣きそうになっていた…。



     ―『神の使徒』神眼アルギス撃破…?―

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