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頭ぶつけて異世界とかwおっさんがちびっこ妖精達と冒険してたら最凶ファミリーが出来ました。リミットレスのおっさんと最凶ファミリーが異世界を席巻する。  作者: 駄犬X
パラゴニア編

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裁くのは…。

 俺は油断なく、龍眼で倒れた天使の周囲を観察しているとキルシさんが小さく笑った。


「…ククッ、ホワイト。お前は視えるのか?」


 その言葉に俺はキルシさんの方をチラッと見る。


「…えぇ、『龍眼』というスキルを持っていますので…。エネルギーの残滓と言うかスキルの素粒子?が見えますね…」

「そうか、ここからは速い者勝ちだぞ?」


 そう言うキルシさんも視えているようだ…。薄笑いを浮かべている。

…しかし笑ってる顔が凄く怖いです…。


「…お譲りしましょうか…?」


 俺の言葉に、キルシさんが答える。


「お前がヤツをここまで追い詰めたのだ。最後のトドメに参加する資格はあるぞ?」

「そうですか…。それなら俺…いや私も参加させて頂きますかね…」


 そう答えた俺の眼には、ゆっくりと身体を引き摺るようにして天使の身体に近づいていく透明の人型が見えた。


 俺はヤツを天使の身体から引き剥がす時に、天使のスキルとは別に、ヤツのスキルを確認している。

『インビジブル』だな。何の事はない。透明人間になっているだけだ。


 恐らく、先程の光に紛れて闘気ハンドから逃れた後にインビジブルを使ったのだろう。発想が俺とあんまり変わんねーじゃねーか…。


 キルシさんが俺に視えるか聞いて来たという事は恐らくここにいる四人はヤツがスケスケ透明人間になって隠れているのが見えるのだろう…。


「…では、勝負と行くか?」

「えぇ、どっちがヤツを早く捕まえてトドメを刺すか…勝負ですね…」


 俺達の少し先で、倒れている天使に少しづつ少しづつ、近づいていくアルギスが視える。後、三メートル程の距離だ。


「よしッ!!では行くぞッッ!!」


 その言葉と共に、キルシさんが瞬間、転移の様なスキルで消える。俺も続いて神速最高段を発動した。動くキルシさんが見える。


「ホワイトッ、お前本当に人間かッ?我に付いて来れるとは…」

「正直、自分でも人間を通り越しちゃってる気はしますねw」


 少し遅れて付いていく俺を見て、笑うキルシさん。俺達はアルギスの傍まで接近する。


 ヤツは再び、天使に憑り付こうとしていたのか、倒れている天使の身体まで後二メートルの所で透明の腕を伸ばしていた。


 俺が、そしてキルシさんが、アルギスを捕らえようとした瞬間―。


 突然、背後から恐ろしい程の圧が襲ってくる。

俺は思わず立ち止まってしまった。


「『魔心眼ッ!!』視えとるでなぁッッ!!」


 フィーちゃんが叫んでいる。なんだっ?何が起こってる…?


 振り返えろうとした俺の傍を、激しいオーラを迸らせ目をオレンジ色に光らせたフィーちゃんが一瞬にして通り過ぎた。


「あっ…フィーちゃんッ…!!」

「…フィーアッ!!そいつは我がッ…!!」


 既にアルギスを捕えようとしていたキルシさんの前に、フィーちゃんが一瞬にして現れる。そしてヤツをサッカーボールキックで蹴り上げた。


「…グフッ!!…クソッ、こっ、このチビッッ…!!」


 蹴り上げられインビジブルを強制解除させられたアルギスが悪態を吐く。

何故かアルギスの身体は蹴り上げられたまま宙に浮いていた。


「このタイミングを待っておったでな!!飛び火して来た全ての攻撃を闇魔法『7闇の渦巻』で吸収『魔障気』に変換したで!!」


 叫びつつ、激しいオーラを放ち滞空したまま、「オオオッ」と息を吐くと、フィーちゃんが一気にラッシュを畳み掛けた。


「いくでなーッッ!!ふぅーっ、わちゃっっ!!わちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃーっ、わちゃぁーッッッ!!」


 蹴り上げられ、仰け反って宙に浮いていたアルギスの腹にまず右正拳、前屈みになったヤツの顔を左足で蹴り抜く。

 

 そのまま回転して右脚の後ろ廻し蹴りでヤツの顔を蹴り、滞空したまま次は右フックを振り抜いた後、左膝て顎を狙って蹴り上げた。


「ぐふっ、ごはぁっ、ぶほっ、ッかはッッッ…!!」


 こっちから見ているとアルギスは強制的に滞空させられ、身動きが取れない状態で上下左右に殴る蹴るの嵐をお見舞いされサンドバックになっていた…。


 そして最後に、ハンマーパンチを脳天に打ち下ろされたアルギスはそのまま地面に叩き付けられ、大きくへこんだクレーターの真ん中でピクリとも動かなかった。


 …ぇ、えぇぇぇっっ!!…ま、また、先にラッシュされちゃったよ…。


 滞空していたフィーちゃんがスーッと降り立つ。そして振り返るとグッと右手を握りしめて言い放った、


「…『魔障炎迅拳!!』魔界の瘴気で、燃え尽きるでな?」


 直後、アルギスの身体が黒く揺らめく魔瘴気に浸食されていく。全身を蝕む、魔界の瘴気とやらの痛みのせいなのか、気絶していたアルギスが叫び声を上げた。


「…グワアァァァァッ!!おっ、俺のッ、俺の身体がアァァァッッ…!!」


 魔障気に囚われていたアルギスは、必死に藻掻きつつ宙に手を伸ばす。魔界の瘴気がどんどんヤツを浸食している。


 …な、なんか凄いんだけど…魔界の瘴気って怖えーな…。ていうか…最初に持って来たあのミニトライデントは使わないんだ…。

 

 …アレ、普段何に使ってるんだろ…。


 俺がそんな事を考えていると、フィーちゃんが叫ぶ。


「…ほわいとやっ!!あやつが完全に魔障気に呑み込まれる前に早くスキルを抜き取るんじゃっ…!!」


 …あっ、そうだった!!よしッ、最後のラッシュは出来なかったけど気を取り直して行くかッ!!


「神速!!最高段、発ど…」


 神速を発動しようとした俺はいきなり首をガッ、と掴まれた。


「人間!!早く抜き取ってこいッッ!!」


 声の主は美濃さんだった。美濃さんは俺の首を掴むと、消えゆくアルギスに向かって全力投球する。


「…ちょっ、うわっ、うわわわわッッ…ちょっとォォッ!!うおおぉぉッッ!!」


 放り投げられた俺は危うくアルギスを通り抜けそうになる。地面に足を踏ん張ってとどまり、慌てて闘気ハンドでアルギスの首を掴んだ。

 瞬間、俺は闘気ハンドに強い意志を流す。


 このまま素手で掴み直している間にアルギスが完全に消滅しそうだったからだ。既にヤツの胸辺りまで魔障気が呑み込んでいる。


 仕方ない。一か八かだ!!俺はそのまま闘気ハンドを使ってスキルの抽出を試みた。俺は闘気ハンドの掌に掃除機の様な吸引口をイメージする。


≪闘気ハンド、吸い上げろっ!!ヤツのスキルを吸い取ってしまえッッ!!≫


 掃除機がゴミや塵を吸い取る様に、ヤツの身体の中からスキル名がガタガタと揺れ、剥がれそうになっている。

 よっしゃ、なんとか抜けそうだ!!


 ヤツのスキル欄の上から順に、インビジブル、瞬転移、ルーザーコントロールと強制的に抽出していく。


 しかし、魔障気の浸食が思ったよりも早過ぎた。残り四個のスキルを残し、アルギスは完全に魔障気に呑まれて消滅してしまった…。


 くそっ、抽出し切れなかったか…。けどヤツはフィーちゃんの魔障ナントカ拳の魔障気で完全消滅したから大丈夫だろう…。


 …たぶん…。


 しかし俺はここで、肝心な事を見落としていた。ヤツが消滅したのにスキルがタマシイになって抜けていない事に…。


 アルギスが消滅した直後、突然俺の身体が光った。そしていつものインフォが流れる。


≪スキル泥棒がレベルアップしました。新たに遠隔抽出が可能になります≫


 スキル欄を確認すると、『スキル泥棒+2』となっている。複合スキルの分解と共に、闘気を使って遠隔抽出が可能になったようだ。


 俺がスキルを確認していると、キルシさん、フィーちゃん、美濃さんが近づいてくる。


「それで、ちゃんとヤツのスキルは抜き取れたんかのぅ?」


 フィーちゃんの言葉に、三人が一斉に俺を見る。この三人は怖すぎる。まさか全部は抜けませんでしたとも言えず、


「…ぇ、えぇ、大丈夫です…」


 とだけ言っておいた…。背中に嫌な汗が流れてくる。まさか抜き取れませんでした、などとは到底言える訳もなかった。


 だって怖いものw



 アルギスが消滅して一息吐いた後、俺は三人にお礼を言う。


「…助けに来て頂いてありがとうでした。マジで助かりましたよ」

「ほわいと、おんしもよくやったでな?」


 フィーちゃんの言葉に、キルシさんも頷く。


「そう言えば気になっていたんですが…お二人は何故俺を知っていて、助けに来てくれたんですか?」

「…うむ。その事だが先程も言ったようにお前に死なれては困るのだ。我は表向きは神に反逆し地獄に堕とされた、となっているが全ては神の意志なのだ。恐らく、こういう事態を想定し我を地獄に遣わしたのかもしれぬ。お前を助けろと啓示が来たのも、お前がヤツらに対しての神が持つ切り(ジョーカー)だからだろう…」

「そうじゃ。わっちもおんしを助けるように神の啓示を受けたでな?それで来たんじゃ」


 ふーむ。そう言う事だったのね…。神様が手配してくれたのか。今度天上に行ったらお礼言っとこう…。そんな事を考えている俺の前で二人が話を続ける。


「しかしホワイトよ、よくぞ天使の身体からヤツを引き摺り出したな」

「そうじゃの。わっちらは天使ごと消滅させてやろうとしてたからの。おんしあの場であの発想をするとは面白いヤツじゃの~」


 更にフィーちゃんが話を続ける。


「さっきルーシも言うたが、おんしに死なれては困るでな?理由はおんしの固有スキルにあるんじゃ。神の使徒を名乗る輩は、倒しても倒してもまた『同じスキル持った別のヤツ』が来るからのぅ…。結構、めんどくさいんじゃ…」


 フィーちゃんの話に、キルシさんが頷きつつ話を継ぐ。


「…そうだな。だからお前が持つ固有スキル、『スキルを抜き取る事が出来るスキル』が必要なのだ。そしてこの世界ではお前と同じようなスキルを持った者は未だ他には確認されていない。それだけお前は希少な能力(スキル)を持っている、という事だ」

「…はぁ、そうですか…」


 そこまで言われると逆にプレッシャーの方が強くなるんだよな…。俺が少し気の抜けた返事をしたせいか美濃さんがジロッと俺を見る。


「人間よ、神様のみならず、地獄の王と魔皇様のお二人がお前を認めておるのだ。もっと自信を持つがよい!!」


 美濃さんはそう言うと俺の肩を、デカい手で思いっ切りドンッと叩く。


「…うおっ…!!」


 危うく俺は肩が外れるんじゃないかと思った…。


 この人…と言うか牛の人、さっき首掴んで俺を放り投げたのもそうだけど、もうちょっと力の加減を考えてくれないのかね…。



「しかし今日は頑張ったからわっち、疲れたのぅ…」


 と溜息交じりに言うフィーちゃん。いや、キミは最後締めただけでしょwと言いたかったが一応、闇魔法『闇の増幅』もやってたな…。

 何も言わないでおこう。美濃さんが怖いからねw


「美濃さんや、わっち疲れたでな?抱っこじゃ…」


 両手を広げて美濃さんを見上げるフィーちゃん。


「…お嬢様、すぐに抱っこなどすると足腰が弱りますぞ。もっと強く逞しく育ってもらわねば爺も心配で…」


 フィーちゃんは美濃さんの小言を無視したまま、テテテッと走ってくると俺を見上げる。


「ほわいと、わっち疲れたんじゃ。抱っこしてくれんかのぅ…」

「…え?えぇ、まぁ良いですよ?」


 そう言いつつ両手を上げていたフィーちゃんを抱っこしようとした瞬間…。


「させぬわッ!!」


 いきなり美濃さんが、ドカッと俺に高速タックルを噛まして来た。


「…グハッ…!!」


 俺は錐揉みしながら、吹っ飛んだ…。美濃さん、アンタって人は…。


「…お嬢様、人間などに抱っこさせるくらいなら爺めが抱っこして差し上げますものを…」


 …マジでアンタって人は…それならなんで最初から抱っこして上げないのよ…。


 俺は吹っ飛んで倒れたまま、泣きそうになっていた…。望み通り、抱っこして貰ったフィーちゃんが俺を見下ろして、グッと親指を立てて見せる。


 …キミ…最初からこうなるの分かってて俺をダシにしたね…?


 俺がいじけたまま転がっていると、アルギスに憑りつかれていた天使がゆっくりと立ち上がるのが見えた。俺は慌てて起上がる。


 天使がキルシさんの方へと歩いて行く。まさか…また戦闘とかにならないだろうな…?

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