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反撃。

 アルギスは腕をクロスさせ、防御フィールドを展開していたが、かなり不安定になっている。闇の圧力に押され身体が何度もブレていた。

 

 あれは…?どういう事だ…?


「…あのさ、ちょっと聞いても良い?」

「ん?良いでな?」

「キルシさんがアイツの事、憑りつき天使モドキとか言ってたけど…。アルギスは…アイツは一体どういう状態なの…?」


 俺が何気なく聞くと、また美濃さんに摘まみ上げられた。


「オイ人間!!言葉遣いッ!!」

「…あっ、はいっ、すいません…」


 摘まみ上げられたままの俺に、フィーちゃんが説明してくれた。


「アルギスのあの姿は本来の姿ではなくてじゃな、天使の身体に憑りついておるんじゃ」

「…ふむふむ、それでアルギスに憑りつかれた天使は死んでるの…?」

「…お前何度言わせるかッ!!言葉遣いッ!!」

「あ、すいません、つい…」

「死んではおらんでな?倒し切って殺してしまうととアイツは天使の力を使えぬでなぁ。それで、弱った所に、憑りついておる状態じゃな。じゃから、あれの本来の肉体はアストラル化しておるでな。敗けてもすぐにアストラル体で逃げられるという事じゃ」

 

 …そうか…。それって俺と同じような状態って事だよな…?アバターに魂が入っている様な状態だ。


 俺は考えた。アイツの本体がアストラル体なら天使とは完全にはリンク出来ていない可能性が高いな…。だからさっき闇の増幅のエネルギーに当てられた時、身体の中のアストラル体がブレたんだ…。


 これはこれは突破口になるかもしれん…。


 俺はすぐにスキル欄を確認した。

 

 俺はスキル欄を視ながら、アイテムボックスからスト〇ス軽減チョコを取り出した。脳は考えるとき糖分が必要だからな…。


 俺がチョコを食べながら考えていると、フィーちゃんがじーっとこっちを見ていた。


「…それ、わっちにもくれんかのぅ…」


 くれと言うので、俺は二、三個出して上げた。後ろからデカイ手も出て来たので、美濃さんにも二、三個上げた…。


「お嬢様、毒見するまでお待ちくだされ…」


 いやアンタ、俺が食ってる傍から毒見って…まぁ良いか…。



 スキル同時併用が今の所、三つ迄は使える事はこの世界に来た当初に確認済みだ。三つ同時併用出来れば十分いける。


 後はどうやってヤツのアストラル体を揺さぶるかだけど…。俺は天獄に入れていた『反響憎悪』を取り出し自分のスキルウィンドウにセットした。


 キルシさんとの戦闘に集中している今なら行ける!!アイツには、一発喰らわせてやらんと気が済まんからな。

 

 俺が徐に立ち上がると、フィーちゃんが聞いてくる。


「ほわいと、何かするんか?出ると死ぬぞ?」

「ちょっと…考えがあってね、いや、ありましてね…。試してみたいんですよ」

「ふむ、この高圧縮エネルギーの激戦の中に飛び込むんか…。変わった人間じゃのう。さすがティー達が連れてきただけはあるでなぁ」

「ん?ティーちゃんとシーちゃんの事、ご存じで…?」

「うむ、精霊大学で三人とも同級だったでな?」


 …精霊大学…この世界…そんなのあるんだ…。


「ちなみに、ティーが首席、わっちが二番じゃった。シーは五番目じゃ…」


 ふーん、三人ともちびっこなのに凄いんだな…。

まぁ、それは置いといて、俺は状況を打開すべく参戦する手順をもう一度確認した。

 

 フィーちゃんの闇魔法『闇の増幅』によってキルシさんのステータスが上昇し、アルギスを徐々に押し込み始めた。


 押してはいたが未だ決定打には至っていない。どっちにしても決着を付けられてしまう前に、アイツにはもう一発喰らわせてやる…。


 二人がぶつけ合っている魔法やスキルがどれだけ凄いかは見ていれば解かる。山は吹っ飛ぶわ、地面は深く抉れてクレーターになるわで破壊力がハンパないからね…。


 しかし俺は、闇の増幅の衝撃波に当てられたアルギスの本体がブレたのを見て、なんとなくだが、この局面を打開する方法を思い付いた。

 

 アイツの本体が天使に憑りついているアストラル体なら、完全にリンクは出来てないだろう…。


 アルギスが何者かは知らないが、天使に憑りつき、操るのはヤツ自身にも相当の負担が掛かっているはずだ。


 ヤツは俺みたいに地球の俺自身を完コピした身体じゃない。だから闘気ハンドを使って掴み、全力で引っこ抜けばいけるんじゃないかと考えた。

 

 俺にも振り切れたステータスと、今まで集めてきたスキルがある。

こっちのスキルが下位だとヤバいかもしれんが、同等級のスキルであれば少なくとも力負けする事はないだろう…。


 俺は、入念にスキルの組み合わせと順番を考えた。現段階でスキル同時併用は三枠までだ。まず移動は神速かファントムランナーで行けるだろう。


 まずは『マジックキャンセル』を発動してみた。

 

 飛び火して来たアルギスの攻撃が、龍眼で視て魔法である事を確認してフィーちゃんの前に手を出してみる。


 掌に当たった瞬間、魔法エネルギーが霧散した。

しかし、勢いが強すぎて魔力は霧散するがかなりの衝撃で手が押し込まれ、びりびり来る。

 

 マジックキャンセルだと下手すると衝撃喰らって動きが止められてしまうかもしれない。

しかもスキルだと霧散せずにもろに喰らってしまうな…。


 二人がぶつけあっているのが、激し過ぎて魔法なのかスキルなのか、その瞬間、瞬間に判別が出来ないと危険だな…。

 『マジックキャンセル』よりさっきクレアとリーちゃんに貰ったあのスキル使うか。


 そこで俺はスキル『すり抜け』を自分のスキル欄に移動させ、発動した。フィーちゃんの前に一歩、足を踏み出す。


 戦闘中の二人は気付いていないが、こっちに飛んでくるキルシさんとアルギス両者の攻撃がすり抜けた。


 行ける!!


 俺は思わず笑みを浮かべた。しかし、スキル『すり抜け』は持続時間が五秒ほどしかない。

取り敢えず急いでやっちまうかw


 一秒経過。


 俺はそのままファントムランナーでヤツに出来るだけ接近し、神速で背後を取る。


 二秒経過。


 俺はいつでも離脱出来るように神速を発動したまま、ファントムランナーを停止。その場でしゃがむとヤツの足下に最大出力でプラズマバインドを放った。バチッと激しい明滅と音と共にプラズマがヤツが憑りついている天使のカラダを少しだけ拘束する。

 

 三秒経過。


「何ッ!!貴様ッ…いつの間にッッ!!」


 四秒経過。


 クククッ、驚いてやがる!!ここでプラズマバインドが停止。しかし最大出力で放った為かプラズマが空間に残っていた。ヤツが再び動き出す前に背後から、『反響憎悪』をこれまた最大出力で籠手から放出した。


「…クッ、貴様ァッ、何をッ…」

 

 この時点で五秒経過。


 スキルすり抜けは停止したが、俺の存在に気付いたキルシさんは攻撃を止めていた。


「ホワイトッッ、我に任せよッ!!手を出すなど無謀だぞッッ!!」


 すぐに動くと思われたアルギスだったが、本体であるアストラル体が最大出力のプラズマに干渉されて囚われたまま、動きが止まっていた。

 

 俺は思わず得意になって叫んだ。


「このタイミングだッ!!行くぜェッ!!」


 俺はキルシさんの言葉を無視したまま、最大出力反響憎悪を放ち続ける。


「…グオォッ!!キッ、旧人類がァァッッ…」


 ヤツのアストラル体がブレて肉体から出てくるのが見えた。


「よっしゃァッ!!目にもの見せてくれるわッ!!」


 俺はスタ〇ドの腕をイメージ、闘気で具現化する。具現化した闘気ハンドでヤツの頭を思いっ切り掴んでやった。


「四十後半のおっさん、舐めんなよ!!やる時はやるんだよォッ!!」


 コイツ、キルシさんとの戦闘に集中してて俺が接近してくるなんて思ってもいなかったな。


「…このッ!!人間如きがァァッッ…!!」

「これからお前はその人間如きに、やっつけられちゃうんだよォッ!!さっきまでよくも偉そうにしてくれたな、オイッ!!」

「…クッ…このゴミがァァッッ!!お前などすぐに消して…」


 俺は闘気の手で、ヤツのアストラル体の頭を掴んだまま全力で天使の身体から引っこ抜いていく。


「お前の正体はこっちだろ?天使の威を借る、クズがッ!!今引っこ抜いてやるからよォッッッ!!俺の振り切れステータス全力でなァァァッ!!」

「グオォォォォォォォッッッ!!きッ、貴様アァァァッ…」


 俺はヤツのスキル欄を見ていた。天使の身体から引き抜かれて行くに連れ、ヤツのスキルが高速で目減りしていくのが見える。その中で、


『ルーザー・コントロール』

 

 というスキルが視えた。

 

 これだな!!おそらくマイクロチップとこのスキルを併用して人を操っているんだろう。


「オメーよォ、ネタがバレたらたいしたことねーじぁねぇかよォッ!!」


 俺の中で何かがヒートして口調があの漫画のキャラみたいになってきた。


「ほぼ憑りついている天使のスキルじゃぁねーかァ!!散々、ビビらせてくれやがってよォッ…!!覚悟出来てんだろうなァ、オイッッ!!」

「…クッ、グォォッ…!ぬ、抜けていくッ、俺のッ、俺のアストラル体がァァッ!!貴様ァァァッ…」

「よくやったホワイト!!後は我に任せよッ!!」


 目の前に炎の剣を持ったキルシさんが飛び込んできた。そしてアルギスのアストラル体の腹を貫く。

今度は俺に気を取られ過ぎて、目の前の強敵を忘れていたようだな。


「グオォォォォッッッ!!どいつもこいつもォォッ…この俺を虚仮(こけ)にしやがってぇぇぇっ…!!」

「おッ?怒ってんの?今、怒ってんのかッ?確か、オメー俺に言ったよなァ?戦闘中に怒ってると判断鈍るってなァッ!!」


 キルシさんの炎の剣に貫かれて、気を取られていたアルギスの頭を闘気の手で掴んだまま、俺は叫んだ。

 

「こっちはまだお前を掴んでるんだぜ!!これでも喰らえ!!」


 更に動きを鈍らせる為に、俺はアルギスのアストラル体の脳天に範囲を設定。最大出力でパラライズボルトを発動させた。


「グオォォォッッッッ!!」


 麻痺電撃を喰らい、こっちの攻撃に気を取られたアルギスは、またまたキルシさんの横薙ぎの剣を避け切れずに、アストラル体の脇腹を引き裂かれた。


「…グワアァァァッッ!!…クッ、このッ…!!この、ゴミ共がッッ…」

「ゴミはオメーの方だッつーの!!ついでに俺もまたまた攻撃させて貰うぜェッ!!」


 キルシさんの方に気を取られたヤツの頭を闘気の手で掴んだまま、俺は龍神弓を取り出す。


「オメーらのせいで酒をちょっとしか飲めなかったからな!!その恨みの分も上乗せしてやるッ、喰らえ!!」


 俺は少しだけ飛び退き、至近距離で狂襲乱射を放った。


「…グアァァァッッッ…!!ア、アアァァァ…」

 

 ヤツのカラダに無数のエネルギーショットマシンガンのように刺さる。半透明に見えていたアルギスのアストラル体が、徐々に実体化し濃くなってきた。


「…グッ、グォッ…こっ、このままではッ…済まさぬッッ…!!」


 捨て台詞を残したアルギスは光を放った瞬間、目の前から消えた…。


「…逃げたか…?」

「…いや、まだです」


 俺はすぐに『真獄』を展開させる。

 

 この空間内にまだヤツが隠れて残ってるなら、逃げられないはずだ。逃げようとした瞬間に真獄の境界線で電撃食らうはずだからな…。


「…ふむ。ホワイト、お前はまだヤツが逃げていない、と見たか?」

「ええ、あのダメージですよ?逃げるにせよ隠れるにせよ、恐らくまだ遠くへは行けないでしょう…」


 俺がヤツの立場ならどうする…?このまま隠れてやり過ごすか…?


 もしくは…。俺は、アルギスを引っこ抜いた後、倒れたままになっていた天使を見る。もう一度、憑りつくか…だな…。


 俺はすぐに『龍眼』で周囲を確認した。

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