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天使?堕天使?

 ナッ、ナンデスカ、ソレハ…?


 …翼?コイツ…天使か?いや、悪いヤツだから堕天使なのか…?


 眼の色が碧眼から黒色に変わり髪は逆立ち、正に怒髪天といった感じだ…。


 スーパー〇イヤ人みたいだなw


「人間がァァッ!!神の怒りを喰らえ!!」


 ヤツの額にギョロッと大きな目が現れた。


「何が神の怒りだよ!!お前は神様じゃねーだろッ!!」

「黙れッッ!!(ちり)一つ残さず葬ってやるッ!!『神眼熱殺光線ッッ!!』」


 その瞬間、ヤツの両眼と額の大きな眼が赤く充血したように鈍く光ると、三つの光線が合わさり高圧縮のレーザーが放射状に飛んできた。


「そんなもん喰らうか!!絶対、逃げてやるわッ!!」


 しかしそう言ったものの、さっきから神速四段で退避を試みているが、少しづつしか動けない事に俺は焦っていた。ヤツの周辺から何らかのスキルが広範囲で発動しているのか、身体の動きが鈍い。

 

 クソォォッ…動けねぇッッ…!!


「逃がすものかッッ!!いや、逃げられるものかァァァッ!!」


すぐ目の前まで、放射状に飛んでくる高圧の熱光線が迫っている。もしもの時の為に、俺は身体の前面に闘気を張った。

 

 俺はもうコイツに勝とうとか考えていなかった。とにかく逃げる事に全力集中する。絶対逃げてやるッッ!!こんな所で死んでたまるかッッ!!


「ウオォォッッ!!動けえェェェッ…!!」


 俺は全身全霊で神速を発動した。その瞬間、俺の身体が光り、脳内にインフォメーションが流れる。


≪神速、最高段階到達します。周辺のスキル素粒子からの干渉をシャットアウト、離脱。神速最高段、発動!!≫


 逃げる事に、余りに必死になり過ぎた俺は神速を思いっ切り前方に向かって発動してしまった。瞬間、怒り狂って変な必殺技を出していたヤツの額に、思いっ切り頭突きを喰らわせる形となった。


「…グハッッ!!こッ、コイツッッ…!!」


 男は吹っ飛んで真獄の壁にぶつかり電撃を喰らう。


「…グハッッ…」


 俺の方も闘気を張っていたにもかかわらず、思わぬ形で全力頭突きをしてしまったので一瞬、目がチカチカして動きが止まってしまった。


「…イッテェェッッ…」


 何とか闘気で、ヤツの高圧熱光線を防いだが、肩に少し喰らっていた。皮膚が熱で溶けている。

…コワッ!!まともに喰らってたらドロドロスライムになってたな…。


 ヨロヨロと立ち上がる男の顔は怒りに震えていた。額の大きな眼は俺の闘気を張った頭突きで潰れていた…。


「…こっ、こんなッッ…こんな屈辱は初めてだッッ!!旧人類がァッ!!貴様ァ…フザケやがってェェッッ!!」

「窮鼠、たまに猫咬むんだよ!!こっちだって必死だからな!!…なんだよ?弱小旧人類に頭突き喰らって怒りが頭に来たか…?しかし弱小でもスピードだけなら俺の方が上だったな!!」


 ヤツは無言のまま、瞬間に接近、レイピアで刺してくるが、俺の神速最高段には追い付いて来れなかった。


「…コイツッ!!チョロチョロ逃げ回りやがって!!」

「うるせぇッ!!俺は逃げ足だけは速いんだよ!!悔しかったら追い付いてみろよッッ?」

「…こうなったらやむを得んな…。俺自身が剝がれてしまうかもしれんが…」


 ヤツは一人ブツブツと呟いている。自分自身が…剝がれるって…どういう意味だ…?


 俺は考えつつも、何時でもヤツから逃れられるように神速最高段をセットだけしておいた。

目の前で、更に光を増し、ヤツの背中の翼が大きく拡がる。


「…グッ、クッ…ギリギリ…か…。だが、もう逃げられんぞ…」


 そう呟いたヤツの身体が、一瞬ブレて見えた。瞬間、既に目の前に接近されていた。


 やべぇッ!!これはッッ…終わったか…。


 しかし、ヤツのレイピアが俺の心臓に刺さる寸前、リーちゃんが俺の肩に現れる。


「ホント、世話が焼けるね!!」


 そう言うと俺の耳をひっ掴んで、転移でヤツから距離を取ってくれた。


≪ふうぅぅっ…マジでやばかった。リーちゃんナイス!!≫

「…ぉ、おの、れ…ょ、妖精如きが…さ、先に…け、消して…やる…」


 リーちゃんは俺の肩に乗ったまま、説明してくれた。


≪あれは天使の力ね。でもあの男の力じゃないみたい。天使の力を借りている…のかな~?≫

≪…いや、それはないでしょ?アイツ、スゲー悪いヤツだよ?天使が力貸すかな?それより、リーちゃん、早く逃げて!!アイツに消され…あれ?≫


 俺は、リーちゃんに早く逃げるように『密談』で話しつつ、リーちゃんを探す…。既にもう別次元帯へと逃げていたようだ…行動が速いな…。


 さて、俺はどうするか…。接近されてから神速を発動するのはマズイ。それならいっそ先に動き周るか…?


 そんな事を考えている俺の数メートル先で、天使モドキ?がブツブツと呟いていた。どうやら、あの力を使うのはヤツの身体にも相当の負担を掛けているようだ。すぐに動いてくる様子がない。


「…ぉ、おの、れ…どぃつも…こい、つも…ちょこまか、逃げ…やがって…」


 俺がどうしようかと観察しているとモドキの背後に突如、奇妙なものが現れた。一瞬、俺はギョッとして目を見張る。


 ブツブツと呟いている天使モドキの背後、何もない空間から突然、黒いスーツの袖を付けた腕がヌッと現れて伸びてくるのが見えた。モドキは全く気付いていない…。

 青と灰色が混ざったような肌の色。手は武骨で大きく指には鋭い爪が伸びていた。


 その腕がモドキの頭をガッと掴むと、一気にそのまま地面に叩き付けた。


 ドゴォォォォッ…!!


「…グハッ…!?」


 モドキが叩き付けられた地面にはちょっとしたクレーターが出来ていた。そして、腕だけだった所から、何者かがスーッと空間を割って姿を現す。


 その者は身長二メートル程で骨格と筋肉ががっしりとしていた。黒いタキシードに身を包み、グレイ掛かったった青い肌をしている。


 オールバックにした黒髪を肩まで流し、鬼神のような顔に琥珀色の鋭い眼と凄まじい迫力だ…。


「…お前がホワイトだな?我が手を貸してやろう…お前に死なれては困るのでな…」


 突然現れた、鬼神のような男は俺の事を知っているようだが…はて…。


 ドチラサマデショウカ…?



 真獄の中での戦闘中。天使モドキの背後の何もない空間から突然、腕が現れた。その腕はヤツの頭をガッ、と掴むとそのまま地面に叩き付ける。

 

 そして腕が飛び出していた空間から、その男は姿を現した。口角の端から覗く牙を見せつつ、笑いを浮かべる男。


 …こっ、コワッ…だ、誰…?


「…お前がホワイトだな?人間にしては頑張った方だが、お前に死なれては困るのでな。我が手を貸してやろう…」


 真獄の中には、スキル発動時にいたモドキと俺以外は入れないはず…。

いや、リーちゃんが入って来れるって事はそういう『能力』を持った者ならば可能なのか…?


「お前の使っているこのスキルのお陰で随分と探す事になったが、何とか間に合ったようだな…」


 一方的に話す男。 口の端から牙が見えている。


 …マジでコワい…。


 男は黒のタキシードを着ていた。魔族の執事か?もしくはヴァンパイアかな?


 …敵…ではないよな…?助けてくれるみたいな事言ってたし…大丈夫だよねw?

 

 突然の見知らぬ人物の登場に、どうして良いか分からない俺は取り敢えずいつでも逃げれるように構えておいた。

 

 そのタキシードの男は悠然と俺に近づいてくる。思わず緊張でゴクリと唾を飲み込んだ。


「…あ、あのぅ…一体アナタはどちら様で…?自己紹介して頂けると助かるんですが…」


 俺の言葉にうむ、と男が頷く。


 俺の目の前まで来たその男は、身長百七十ほどの俺…いや、すいません見え張りました、身長百六十七センチの俺からするとかなりデカい。

 しかも逞しい。

 

「我こそは神に反逆し堕天した者…名をキルシフェルと言う」

「…はぁ…、キルシフェルさんですか…。キルシ…ん…?」


 俺はその名前に聞き覚えがあった。リーちゃんに会ったばかりの頃、この世界について聞いた事がある。その時に天使ルシフィエルが神に反逆し堕天した事、そして名を変えて地獄を統べる王、キルシフェルとなったという話だ…。


「…あぁ、アナタがあの地獄の王キルシフェルさんですか…。俺を助けてくれるって…一体、何故…」

「詳しい話は後だ。ここでは闘いにくい。場所を変えるぞ!!」

 

 それだけ言うと、キルシフェルさん…言いにくいのでキルシさんと呼ばせてもらおう…。キルシさんが指パッチンを慣らすと、一瞬にして周りの景色が一変した。


 そこは一面、荒涼とした大地。荒く尖った岩山が(そび)え立ち、空は赤く大地も赤い。

…まさか…こっ、ここはッ!!


 …火星じゃないよねw?



 これは…転移かな?使徒のヤツごと、俺も一緒に連れて来られた。真獄が強制解除されている。

…この人どんだけだよ…。俺は力の差をまざまざと見せ付けられた気がした。


「…ここは…」


 戸惑う俺にキルシさんが説明してくれた。


「『地獄』だ。ここならどれだけ暴れても構わんからな…」

「えっ…?じ、地獄ですか…?」


 マジで…?まだ死んでもないのに…閻魔様を飛ばしていきなり地獄に来ちゃったよ…。なんと言って良いのやら…。


 俺達が話していると突然、新たに二人組がフッと音もなく現れた。


「わっちも来たでな?」


 俺の膝丈くらいの背丈、ティーちゃんやシーちゃんと同じくらいのちびっこが俺を見上げて言う。

そしてその後ろには、巨大な牛頭の人がいた。


 独特の一人称で話すそのちびっこは、金髪ぼさぼさショートヘアで三白眼。死人のように青白い肌と碧い目。保育園の青いスモックに白いラインをあしらった様な服を着ていた。


 手には三又で先が尖ったミニトライデント、頭には二つの小さな角がある。そして背中には小さな可愛らしいライオンの顔を模したリュックを背負っていた。


「…ん?フィーアも来たのか…」


 キルシさんがそのちびっこをチラッと見る。フィーア?…その名前も聞き覚えがあったような…。


 俺は、あっと思わず声を上げた。


「魔王フィーアでしょ?」

 

 俺がそう言った瞬間、背後に恐ろしい気配を感じた。いきなり首を掴まれ、俺は摘まみ上げられた。


「…わわわわわっ、何っ…」


 後ろを振り返ると…。デカい凶悪な顔をした牛さんに掴み上げられていた…。体長三メートル越えの、堅固な甲冑に身を包んだその牛頭人が言う。


「…貴様アッ!!人間風情で魔皇様にタメ口は許さんぞッ!?」

「…は、はい解かりました…」

「それから魔王ではなく『魔皇』様だ。間違えるなよ?」

「…は、はい…」


 摘まみ上げられた俺を見上げながら、魔皇フィーアが話す。


「おんしがほわいとじゃな?わっちも手を貸してやるでな?」

「…は、はぁ…それはどうも…」


 俺は摘まみ上げられたまま、牛頭の人に説明を受けた。


「お前は何も解っとらんようだから、儂から説明してやる。人間よ、心して聞くが良い!!」


 そう言うと牛頭の人は傷の入った怖い顔で話し始めた。


「今世代の魔皇様に置かれましては、転生を果たされてから未だ三百年しか経っておらぬ故、今はまた幼生体であらせられ…」


 この(くだり)、どこかで聞いたような気が…w

しかし、地獄の王に魔皇か…魔界大戦でも始める気かな…。いや、この場合、地獄大戦か?

 そんな事を考えていると魔皇フィーアから牛頭人を紹介された。


「うちの執事を紹介するでな?ミノタウロスの美濃さんじゃ。美濃さんは爺なんじゃが厳しいでな?よろしく頼む」

「…ぁ、は、はい…美濃さん、よろしくです…アンソニー・ホワイトです…」

「うむ。以後、お嬢様に無礼な口はきかぬようにな…」

「は、はい…気を付けます…」


 何気にこのミノタウロスも怖い。デカいし顔にヤ〇チャみたいに傷が入ってて迫力あり過ぎるし…。顔が暴力団だよ…。


「…さて、わっちが先にやっても良いかのぅ…?」


 魔皇フィーアの申し出を、キルシさんが断る。


「我が先に着いたのだから我が先にやらせてもらうぞ?」

「ふむ、確かにその通りじゃな。危うくなったら手を出しても構わんじゃろ?」


 その言葉を笑いながら一蹴するキルシさん。


「我一人で十分だ。神の使いを騙る憑りつき天使モドキなど、すぐに捻り潰してくれるわ!!」


 そんな事を話していると、モドキがよろよろと立ち上がる。ヤツの背中にあった天使の翼は消えていた。立ち上がりながら、モドキがブツブツと呟いている。


「…ぉ、俺は…神の使徒、『神眼』…アルギス…こんな所で…敗け…ぬ…」


 ヤツが…ウオオォォッ、と声を上げた。


 同時にアルギスのカラダが光始めた。そしてカラダから放射状に光のレーザーを飛ばしてきた。

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