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ーGEKITOTUー。

 俺は急いで神殿の外に出る。長い階段の下の広場で、神の使徒幹部と思われる男と、クレアが対峙しているのが見えた。

 

 …やっぱり、来てやがったか…。


 男は振り返ると、神殿から出てきた俺を見る。


「貴様が…」


 ヤツが何か言おうとしていたが、ファントムランナーで急速接近し、俺は問答無用でタガーの乱撃(ストームラッシュ)を仕掛けた。


 短い金髪、碧眼で体格は俺より少し大きい。男は手に持っていたレイピアで俺のタガー攻撃を難なく捌いていく。このスピードだとコイツはまだまだ余裕そうだ。


 いきなり攻撃を仕掛けた俺に、クレアが叫ぶ。


「主ッ!!今の主の力ではまだそいつには勝てませんぞッ!!」


 俺が無視したまま男に攻撃をしているので、聞こえていないと思ったのかクレアが密談スキルに切り替えた。


≪そいつは普通の人間ではないのです!!主、どうか一旦退いて下されッ!!≫


そんな事は分かってる。エミルを操り、ドウゲンとレイホウという強いヤツらを従えていたんだからな…。俺はクレアの言葉を無視したまま、神速を三段階に上げる。三方向からストームラッシュで圧力を掛けていく。


 しかし、タガーでの攻撃が何かのエネルギーシールドで阻まれているのが龍眼で見えた。恐らくスキルか魔法だろう。全く攻撃が通っていない。一瞬で俺の攻撃をいなし、隙を見て俺の三方向からの攻撃を躱す。


 涼しい顔をして俺の攻撃を防ぎつつ、後退していく。


「…ふむ。こんなモノか。やはり弱小の旧人類の力などたかが知れているな…」

「…あぁ、そうかい。弱小旧人類で悪かったな!!その弱小の本気をちょっとだけ見せてやるよォ!!」


 俺は叫ぶと神速四段階を発動、瞬時に側面に周り込んで、振り切れステータス全力モードで男の顔面を殴り飛ばした。


 全力モードの拳が神速四段目のスピードに乗り、ヤツのシールドエネルギーが展開する前に突き抜けた。


「そんなッ…バカなッッ…!!」


 スローモーションの様に俺の拳に殴られたヤツの頬が歪む。


「…何だとォッ!!グッ…!!」


 瞬間、錐揉みしながら派手に吹っ飛ぶ。しかし男は何とか両脚で踏ん張ると態勢を戻し、数十メートル後退した所で止まった。

 頬を腫れさせ口元から血を滲ませている。


≪主ッ!!この隙に逃げて下されッ!!後はこのクレアがッッ…!!≫

≪…いや、どうせコイツらとは闘わなきゃいけないんだ!!それが早いか遅いかだけだろッ?ここで決着を付けるッ!!≫

≪…ダメですッ!!主ッ…≫


 叫びながら、急速接近で俺と男の間に割って入ろうとしたクレアが絶句する。

俺はヤツを殴り飛ばした後、そのまま神速で接近し、真獄を使って亜空間へ移動した。


◇ 


 俺はあのままパラゴニアで戦うとまずいと思っていた。目の前の男の能力は推し量れないがクレアが危険視するヤツだ。


 あの場所で俺達三人が全力で戦ったらどうなる…?

 

 辺り一帯の不毛の島になるんじゃないか、もしくは島ごとなくなってしまうかもしれないと考えた。

そういうのは避けないとだからな…。


「…なんだ…?エミルに与えた真獄(スキル)か…」


 ヤツの眼がオレンジ色に光った瞬間、眼からレーザーが飛んできた。


「うわっ…」


 俺は神速四段で避け、後ろに回り込みつつ闘気をタガーに纏わせる。全力でタガーの連撃で切り付けていく。


「…ふむ。先程の攻撃と言い、人間にしてはかなり力とスピードがあるな…。どうだ?我々の同胞とならぬか?そうすれば命の保証はするぞ?さっき殴ったのも許してやる…」

「嫌だね!!悪りぃけど、とても偉いお方からお前らみたいな特大のゴミ、片づけるように頼まれてんだわ!!人を操って簡単に殺しをさせるヤツらとは仲間にはなれんね!!」


 叫びつつ、俺は渾身の力でタガーを振り抜いた…つもりだったが、動きを止められていた。

…やべぇッ!!なんだこれは…コイツのスキルか?動きが…。


「…ふむ。戦闘中に熱くなるのは良くないな。判断力が鈍る。そして神の使徒の誘いを断ったと判断する。なら死ね!!」


 冷酷に言い放ったヤツの目から再びレーザーが出る。超至近距離だ。これは避けられない。


 俺は瞬間、『朧』を発動した。


 俺の身体をレーザーが通過する。何とかギリギリで回避することに成功した。俺はすぐに神速で距離を取る。


「…それは砂漠の狂人に与えた(スキル)か…。フッ、そんなモノ俺には通用せんぞ…」


 ヤツがレイピアを構えるとフェンシングの様な動きで一瞬にして。俺の目の前まで現れる。


 速い!!


 『朧』で粒子レベルで分解された俺の身体に、レイピアの切っ先を通過させると、レイピアにエネルギー流し込む。

 その瞬間、『朧』の状態から強制的にスキルをキャンセルさせられた。


「ぐぁっ…!!」

 

 俺は右脇腹を貫かれていた。


「そのスキルは元々、俺が持っていたモノだ。対処法が分からんとでも思うか?やはり弱小旧人類、低能だな…」


 くそっ、どうなってる?スキルを強制解除された上に動けないっ…


「これでもう逃げる事は出来まい?ただの刺突ではない。特殊な振動波がお前のカラダを狂わせているのだ」


 これは…ロメリック槍の様な特殊な効果を出しているのか…。俺は、右脇腹の痛みに耐えながら、見えるようになったコイツのスキルの多さに驚いていた。

 

 ぞっとするとはこういう事だろう。


 コイツ、どれだけスキルを持ってるんだ…。凄い勢いでスキル欄がスクロールしていく。三十…四十か?いや、数えられない…。


 クソッ、どうするかな…。なんかコイツ、若そうなのにスゲェ偉そうだから負けんのは(しゃく)なんだよな…。

 しかし、力の差があり過ぎるか…。


 逃げるか…?そう考える俺の前で、


「では、これで最後だ。カスが手間を取らせてくれたな。トドメだ、死ねッ!!」


 ヤツがレイピアを俺の眉間に突き刺す。


「…あぁ、そうかい。カスで悪かったな!!でもまだまだ終わらんよ!!」


 俺は叫ぶと、動く事無く眉間に切っ先が刺さる寸前、ヤツの前から消えてやった。


「…これはッ…サネルに与えた…」


 驚くヤツが見える。

ふぅっ、間一髪だったな…。


 ようやく冷静さを取り戻した俺は亜空間の中からヤツを見ていた。このままだと敗けは確実だな…。どうするか…?


 そんな事を考えているとリーちゃんが突然現れた。


「はい!!ハイポーションッ!!」


 と言って俺に投げ渡すと、すぐに消えてしまった…。


 ちょっと待て、何気に凄いな…。どこでも来るなんて…。

ていうか何で毎回、俺も一緒に転移させてくれないんだよ…。


 まぁ、仕方ない。今はそんな事よりどうするか考えないとな。

俺はハイポーションを一気にあおる。

 振り切れたステータスもあってかダメージが瞬間、すべて消えた。


 …よしっ、早く何か考えないと…。


 しかしヤツは考える時間を許してくれなかった。転移スキルを持っていたのか亜空間に入って来ると、レイピアを地面に刺す。

 

 瞬間、激しい振動によって亜空間全体が不安定になり、強制的に元の空間へと戻っていく。 


 マジかッ!!こいつ、『バニッシュ』を破りやがった!!


 俺は再び真獄の中に戻された。


 とんでもねぇヤツだな…。コイツは強い…神の使徒、さすが幹部クラスってとこか…?冷静に考えて俺、良くこんなヤツに喧嘩売ったよな…。


「…『バニッシュ』まで持っているとはな…。スキルを抜き取る事が出来る人間か。やはり、放ってはおけんな。確実にお前を殺してスキルを回収させてもらう!!」


 どうするか?このままだとマジでマズイな…。


 しかしそんな思考が命取りになった。モーションもなくヤツが目の前に現れた。クソッ、これで終わりか…。

 いやッ、まだだッ!!コイツにだけは負けたくねぇっ!!


 ヤツがレイピアで俺の身体を、貫く寸前、俺は咄嗟にクレアとリーちゃんから貰った『すり抜け』を使う。ヤツのレイピアが俺の身体をすり抜ける。


「『すり抜け』か…それも俺のスキルだ。すぐに破れる」

「…だろうね。俺がこのまま動かなければ、だろッッ?」

 

 俺は同時に神速四段を発動していた。しかし男はすぐに追尾してくる。レイピアの攻撃を闘気タガーで弾きつつ、俺は考えた。


 コイツを倒すには強力な攻撃が必要だ…。俺が持つ最強の武器は弓しかない!!


 龍神弓だ!!何とか龍神弓を使える状況にしないと、ノーモーションで転移の様に現れるヤツから、神速四段を使って何とか逃げ回る。


 その間に、俺はヤツが追ってくる導線上に、籠手の最大範囲スキル『暴風雷塵』を最大出力でセット。

ヤツが通過するタイミングで発動した。


 凄まじい暴風が巻き上がり、轟音の中、稲妻が走り抜ける。

大範囲、最大出力の暴風雷塵がヤツを襲う。


「…チッ、悪あがきをッッ…!!」


 その間に、俺は神速を使ってその導線上から外れた。瞬間、範囲発動中の暴風雷塵の中心からヤツのレーザー攻撃が回る様に襲ってくる。


 俺は軽くジャンプしながらレーザーを避けつつ、龍神弓を構えて弦を引く。腕の周りに無数の闘気の矢をイメージし、纏わせた。

 暴風雷塵が晴れる前に、俺は般若の時に使った闘気版『狂襲乱射』を全力で撃ち込んでいく。


 ドガガガガガガガガガガガッッッ!!


 暴風雷塵が停止する。粉塵と雷撃、弓の連射攻撃で舞上がる土埃が晴れていく。


 ―やったか…?


 粉塵が晴れた場所で男は膝を付き、左肩を抑えていた。その左肩が抉れて、血が流れている。


 よっしゃ!!ダメージ入れてやったぜッ!!


 俺は得意になってすぐさま、ヤツが動きだす前に再び狂襲乱射をセットしようとした。

 

 その時…。


 突然、ヤツの身体から衝撃波が放出される。俺は飛ばされない様に、その場で踏ん張った。

ゆっくりと立ち上がった男の顔が怒りに打ち震えていた。


「…旧人類がァッッ!!もう容赦せんぞッッ!!」


 怒りを露にした男の全身から光りが放たれる。瞬間、俺の『狂襲乱射』で抉られていた肩の傷が治る。


 …ちょっ、ちょっと待てよ!!マジか…。ソレ反則じゃねーか?


 その時、俺はクレアの言葉を思い出す。


 コイツは『普通の人間』ではない。という言葉を…。

 

 呆気にとられた俺の前で、男の身体から後光が差す。その背中から大きな翼が現れた…。


 …ナ、ナンデスカ、ソレ…!?

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